
最近では、芸能人やスポーツ選手などがオンラインカジノを利用し、警察に摘発された旨の報道が相次いでいます。
日本にいる人がオンラインカジノで賭けをすると、賭博罪の責任を問われるおそれがあります。オンラインカジノの広告などを見かけても、手を出さないようにしてください。
本記事ではオンラインカジノについて、日本で違法とされている理由、発覚するきっかけ、摘発された場合の手続きの流れなどを解説します。
「オンラインカジノ」とは、インターネット上でカジノゲームを遊ぶことのできるサービスです。
たとえば、本物のカジノにあるような「スロット」「ブラックジャック」「ポーカー」「ルーレット」「バカラ」などのゲームが設けられています。ユーザーは登録をすれば、これらのゲームで遊ぶことができます。
オンラインカジノの遊び方は、サイト内でのみ使えるポイントなどを賭ける場合(=無料版)と、金品に交換できるポイントなどを賭ける場合(=リアルマネー)の2つに大別されます。
無料版で遊ぶだけなら、日本の法律上大きな問題にはなりません。これに対して、リアルマネーで遊ぶと賭博罪の責任を問われる可能性があります。
実際にはほとんどのオンラインカジノが、リアルマネーで遊ぶことができるシステムを導入しています。
最初は「無料版だけ」というつもりでも、そのうちリアルマネーで遊びたくなったり、無自覚にリアルマネーへ誘導されたりするケースがあるので要注意です。
オンラインカジノで賭けをした場合は、日本の刑法に基づいて賭博罪の責任を問われる可能性があります。賭博罪が成立するかどうかは、賭けをしていた地域によって決まります。
日本の刑法は原則として、日本国内で罰則規定に抵触する行為をした場合に適用されます(=国内犯。刑法1条1項)。
オンラインカジノでの賭けを含めて、偶然の勝敗に金品を賭ける行為は「賭博罪」にあたります。
これを日本国内で行った場合は賭博罪が成立し、「50万円以下の罰金または科料」に処されます(刑法185条)。
また、常習として賭博をした者には「常習賭博罪」が成立し、「3年以下の拘禁刑」に処されます(刑法186条)。
外国人であっても、日本国内にいる時にオンラインカジノで賭けをした場合は、賭博罪によって処罰されます。
なお、海外の業者によって運営されているオンラインカジノについても、日本国内から利用して賭けをした場合は、賭博罪が成立するのでご注意ください。
刑法の一部の規定は日本国外での行為(=国外犯)にも適用されますが、賭博罪に国外犯の処罰規定はありません。
したがって、日本人か外国人かにかかわらず、日本国外で賭けをした場合には、日本の刑法の賭博罪は成立しません。
たとえば、日本人でも海外のカジノで賭けをすることは(現地法の規制に抵触しない限り)できます。それと同様に、海外にいる時にオンラインカジノで賭けをしても、賭博罪に問われることはありません。
ただし、日本国外にいるときは現地法の規制が適用されます。日本と同様に、賭博が違法とされている地域においてオンラインカジノで賭けをすると、処罰されるおそれがあるので注意が必要です。滞在地の法規制がよく分からない状態で、オンラインカジノに手を出すことは控えるべきでしょう。
日本において、オンラインカジノでの賭けを含む賭博が犯罪とされている理由について、最高裁判例では以下のように述べられています。
「……他面勤労その他正当な原因に因るのでなく、単なる偶然の事情に因り財物の獲得を僥倖せんと相争うがごときは、国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風(憲法二七条一項参照)を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらあるのである。」*1
ごく簡単に言えば、ギャンブルに明け暮れる人だらけになると、社会的秩序が乱れるので良くないということです。
賭博をしても被害者が出るわけではありませんが、社会的秩序を維持する目的で賭博罪が設けられています。
自宅のPCやスマートフォンでオンラインカジノに出入りしても発覚しないと思うかもしれません。
しかし実際には、様々な経緯で発覚する可能性があります。警察の捜査や告発、SNSでの暴露など、どんなに隠そうとしてもリスクは避けられません。
たとえば、以下のようなきっかけで発覚することがあります。
日本国内でオンラインカジノを設ける行為は「賭博場開帳等図利罪」、決済代行などでそれをサポートする行為は同罪の共同正犯や幇助犯に該当します。
これらの行為をしたオンラインカジノの運営者や決済代行業者は、日本の警察によって摘発されるケースがあります。
運営者や決済代行業者が摘発されると、その業者が保有していた顧客リストも警察へ渡ることになります。
そのリストに載っていると、警察によって一斉に摘発されるおそれがあります。
自分と同じくオンラインカジノで遊んでいた知人が摘発されると、その知人は警察の取調べを受けます。
取調べの中で、知人は一緒にオンラインカジノで遊んでいた人が誰かを話すかもしれません。その場合、カジノ仲間が全員芋づる式に摘発されてしまいます。
オンラインカジノで遊んでいることを知人に話したことがある場合は、その知人や又聞きした人が警察に賭博罪で告発をするかもしれません。
告発をきっかけに警察の捜査が及び、摘発されてしまう可能性があります。
オンラインカジノで遊んでいる事実を、知人などがSNS上で暴露してしまうケースも想定されます。
最近のSNSの傾向では、このような投稿が行われると「炎上」状態になる可能性がきわめて高いです。大ごとになると警察も見過ごせなくなり、摘発に繋がってしまいます。
オンラインカジノでの賭博については、悪質性の高いものを除いて逮捕されず、被疑者在宅のまま捜査が行われる可能性が高いと思われます(=在宅事件)。
在宅事件の場合、警察は自宅にいる被疑者を呼び出して取調べを行います。また、検察官による取調べも行われます。
取調べでは、オンラインカジノを利用した経緯や賭けた金額、誰に誘われたのかなどを聞かれます。被疑者には黙秘権があるので、答えるかどうかは自由です。
検察官は、被疑者が賭博をしたことが確実であり、かつ刑罰を科すことが相当であると判断した場合に限り、被疑者を起訴します。嫌疑が確実であっても、罪状が軽い場合は不起訴(起訴猶予)となることがあります。
起訴には「正式起訴」と「略式起訴」の2種類があります。
正式起訴の場合は、裁判所で行われる公開の審理(=公判手続き)にかけられます。略式起訴の場合は、非公開の略式手続によって罰金または科料が科されます。
賭博罪の被疑者が起訴される場合、検察官から事前に、略式手続によることについて異議がないかどうかを確認されるケースが多いです。異議がない旨の書面を提出すれば略式起訴、異議を述べれば正式起訴となります。
賭博を否認して争う場合は正式起訴を選択すべきですが、争わない場合は手続きが簡単な略式起訴を選択した方がよいと思われます。
日本国内にいる人がオンラインカジノで賭けをすると、賭博罪によって処罰されることがあります。
特に最近では、オンライン上での賭博が摘発される事例が増えています(令和4年:59人、令和5年:107人、令和6年:279人)。*2
オンラインカジノの利用は法律で禁止されており、絶対に手を出してはいけません。ネット上の違法サイトは気づきにくく、軽い気持ちで始めてしまうと取り返しのつかない事態になる可能性があります。法律を守り、健全な生活を送りましょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
引用
*1 最高裁昭和25年11月22日判決
出典
*2 警察庁「オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!」
