back icon
ビジネスパーソンが淡々と稼ぎを上げていく方法
ビジネスパーソンが淡々と稼ぎを上げていく方法

ビジネスパーソンが淡々と稼ぎを上げていく方法

2023/08/01・提供元:安達裕哉

年功序列・終身雇用の崩壊に伴い、一つの会社で勤め上げれば、漫然と働いていても、稼ぎが増えていく時代はすでに終わっています。


実際、データをみても実質の平均給与は、2000年代から低迷し続けています。


ビジネスパーソンが淡々と稼ぎを上げていく方法

出典:厚生労働省「平均給与(実質)の推移(1年を通じて勤務した給与所得者)」


しかも、物価高のこの時代においては、多少昇給をしたとしても、実質的な生活水準は大して変わらないどころか、むしろ下がっていくのが実態です。


にもかかわらず、「ではどうすれば稼ぎを増やして、生活水準を向上させるのか」について、ある程度明確な指針を持っている人は少ないのが現状です。


本稿では複雑性が増した現代で「一攫千金」ではなく、なぜ稼ぎが上がらないのかを知ることで、「どうすれば、淡々と稼ぎを上げていけるのか」について、指針を示します。


稼ぎはどのように決まるか

なぜ稼ぎが上がらないのかを知るためには、「会社員の給料の決まり方」を知る必要があります。

具体的にどのように決まっているのでしょうか。


大まかには、3つのパターンで給料が決まります。


1. 成果に応じて決まる

一つは「成果に応じて決まる」というパターンです。


例えば、もしあなたが、フルコミッション(完全成果給)の営業であれば、純粋な成果に応じて給与が決まります。また、成果を上げることができなければ、給料はゼロになります。

(この場合、会社員ではなく、個人事業主と呼ぶべきでしょう。)


とはいえ、大半の会社員の給料は、そのような決まり方ではありません。

会社員は、成果が出ても出なくても、毎月定額の給与がもらえます。


通常「成果で決まる部分」は、報酬全体の中の数%〜十数%程度の間にあり、賞与という形で給料に反映されます。

また、個人の成果は今一つでも、会社全体の業績が良い場合、給与にいくらか上乗せさせる、というケースもあります。


実際、日本企業における賃金の構成比では、「業績・成果給」が賃金全体に占める割合はわずか4.6%です*1。


いずれにせよ「完全に成果に応じて決まる」という会社員は、実はかなり少ないと言え、「頑張ったら稼ぎが増える」「成果を出せば稼ぎが増える」というのは嘘で、「多少色がつく」という程度でとらえておいた方がよさそうです。


2. 採用市場の相場によって決まる

二つめは「採用市場の相場によって決まる」パターンです。


例えば乱暴な例では、「年収2,000万円」という金額を、採用市場に向けて提示した場合、これはかなり給与が高い方ですから、スペックの高い応募者は集まりやすいでしょう。

逆に「年収200万円」という金額であれば、よほどのことがない限り、スペックの高い応募者は来ないでしょう。

一般的にはもっと細かく「業界」「業種」、そして「職種」「年齢」「求めるスキル」などによって、同業他社の調査などによって得られる大雑把な相場があり、その相場で給与の額が決まってきます。


つまり「転職希望者」に限って言えば、給与の額は転職を希望する労働者全体の中の、「労働市場の中の相対的な位置づけ」によって、ある程度決まります。


自分の給与がどのような水準にあるかを知るために、転職するつもりはなくても転職活動だけはしておくべき、という言説もあるくらいです。


もちろんこれは「新卒」の採用市場にもある程度言えます。

新卒の場合は、転職市場と異なり、「業界」と「学歴」で相場がだいたい決まっていることは、皆様も良くご存じでしょう。


ただしこの数字は「採用市場」に出てこない人材の給与に関しては、ある程度しか反映されません。

一つの会社にとどまっている会社員に関しては、次のルールが適用されます。


3. 社内の相対的地位・独自ルールによって決まる

三つ目は「社内の相対的地位や独自ルールで決まる」パターンです。


例えば年功序列の会社であれば、「勤続年数」が多い社員ほど、相対的な地位が高く、より高い給料をもらえる、という形です。


あるいは「役職」がつくといくら、「危険な作業」に従事するといくらなど、給料の差の付け方のルールは、会社によって千差万別です。


例えば、次のようなものが挙げられます。

  • 職務
  • 能力
  • 年齢
  • 家賃補助
  • 家族の構成人数

など

どうしたら稼ぎを上げることができるか?

以上の3つのパターンがありますが、リスクとリターンの関係でいうと、次のようになります。


一般的には「成果で決まる部分」を増やせば増やすほど、「ハイリスク・ハイリターン」になります。


採用市場の相場で報酬が決まる人は、「転職」というリスクを取らなければなりませんから、ミドルリスク・ミドルリターン、となるでしょう。


逆に、「社内の相対的地位・ルールで決まる部分」を増やせば増やすほど、その会社に在籍していればほぼ無条件で入手可能ですから、「ローリスク・ローリターン」になります。


例えばハイリスク・ハイリターン、成果で決まる部分が多い仕事の一例が「保険の外交員」という仕事です。

外交員は成果報酬型の体系であることも多く、外資系の保険会社であれば、成績が良いエースは、年収で億を超える、というケースもあります。


また究極の成果主義である「事業主」や「起業」という選択をすれば、「数千万」「数億」という莫大な富を手にできる可能性もあるでしょう。

しかしその一方で、「食えない」という究極のダウンサイドに落ちてしまうかもしれません。


では「転職」によって、稼ぎを上げようとするのはどうでしょう。

転職は、「会社を変える」というリスクを取らねばなりません。そのために時間もお金もかかります。

また、転職したとしても、その仕事や職場、あるいは上司が自分にフィットせず、結局転職を繰り返してしまう……という状況もあり得ます。


しかし、そうしたリスクに見合うだけのリターンもあります。


というのも、転職は給与の額を1.5倍、2倍と、大きく伸ばすことができるチャンスでもあるからです。

一つの会社にずっと在籍している場合、給与を倍にするには数年、あるいは10年以上かかるのが普通です。

しかし、転職は数か月の活動でそれができてしまう可能性があるのです。


一方でローリスク・ローリターンコースである、「社内のルール」に則って、給料を上げていこうとすれば、「食えない」という事は決してありません。

また、ある程度自分がどのような待遇になっていくか、「予想」もできます。


その代わり、増える報酬は、わずかな幅にとどまります。年あたり、数万円も伸びれば、良い方でしょう。

これは、成果主義や転職のリスクをとる場合に比べて、かなり小さな振れ幅です。


また、市場全体ではなく、その会社に自分を最適化していく必要があるため、そのような知恵は、あまり汎用的ではないケースもありますし、また、そもそも会社全体の業績がよくなかったり、利幅の小さな業態の場合、何をどう頑張っても給料は上がらない、という事があります。

稼ぎを上げる「3種の神器」交渉・転職・副業

では、本題の「淡々と稼ぎを上げていく方法」についてです。

上で見て分かる通り、「リスク」と「リターン」は表裏一体であり、稼ぎを大きく上げようとすれば、より大きなリスクを取る必要があります。


ですから、肝心なのは「リスクの取り方」です。


「上手くリスクを取る」にはどうしたらよいか、を考えることが、稼ぎを上げることについて考えることの本質なのです。


では「上手くリスクを取る」方法はあるのでしょうか。

それが、稼ぎを上げる「3種の神器」である、交渉・転職・副業です。


1. 交渉

単純に言えば、給与に関しては評価者に「もっと欲しい」と交渉をするところから始めましょう、という事です。


評価者の側からすれば、給与に関して不満を持っているにもかかわらず、それを何も言わない社員が突然辞めてしまう、という事はできれば避けたいことです。


なぜならば、採用のコストは大きく、誰かが抜けた穴を補充するのは非常に面倒な業務だからです。


したがってある意味では「給与交渉してくる部下」は、お金の問題さえ何とかなれば、ちゃんと働いてもらえる、という分かりやすいマネジメントができるため、人によってはありがたいとすら感じるのです。


日本人は7割以上の人が、「賃上げを求めたことはない」と調査で回答しています*2。

これは、交渉そのものが「上司に嫌われてしまうのではないか」と、リスクだと感じる人がいるからでしょう。


しかし、その程度のリスクで、稼ぎが上がる可能性があるのであれば、やったほうがお得だと、私は考えています。


2. 転職

転職は、交渉と比べて格段にリスクは高くなります。

古巣を捨てて、新しい職場と仕事に適応するのは、「給与交渉」よりもはるかに難しいことです。

しかし、得られるリターンは前述したように、「一つの会社で勤めあげる」ことに比べて、はるかに大きくなる可能性があります。


そもそも給与に対するインパクトは、「努力」や「スキル」ではなく、「どの業界で働くか」あるいは「どの地域で働くか」*3のほうが、大きいのです。


給料が安いと思うなら、まずは転職活動をしてみましょう。

給料の高い業界と、給料の高い地域で職を求めてみましょう。


今の自分が有する知識とスキルで、もっと大きな機会を得られる会社があるかもしれません。


今すぐ転職する気はなくとも、すくなくとも「労働市場」で自分がどの程度の給料が得られる可能性があるのかは、知っておいて損はないでしょう。


3. 副業

さらに稼ぎたいと思ったら、「独立」や「起業」が視野に入ってきます。

労働者である会社員と、資本家であるオーナー経営者では、そもそも「稼ぎの限度」が全く異なるのです。


会社員で稼げる金額は、どんなに成功してもせいぜい年収1億円、しかもその半分以上を税金で取られますが、オーナー経営者は「経費」を自由に使えるうえに、稼ぎの桁も一つ二つ、違ってきます。


しかしもちろん、独立、起業はリスクの極めて高い行為であり、いつ何時食えなくなってしまうかわかりません。


そのため、「交渉」「転職」の次は「起業」ではなく、「副業」をセットし、試しに自分がビジネスオーナーとして働いた場合、どのようなトラブルや課題が生じるかを知っておくと良いでしょう。


以上のように、「淡々と稼ぎを上げていく」には、段階を踏んで、自分の取れるリスクを徐々に大きくしていくことをお勧めします。


年功制も終身雇用も終わった今、会社員に求められる最低限の素養は、「リスクの取り方」をきちんと学ぶことです。


関連コラム:

今から考えたい!未来へのお金の増やし方

本稿執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。


出典
*1株式会社アスコム「自分の給料を今より上げる方法 木暮太一」
*2東洋経済新報社「給料の上げ方 デービッド・アトキンソン」
*3プレジデント社「年収は「住むところ」で決まる エンリコ・モレッティ」


安達 裕哉
あだち ゆうや

1975年生まれ。デロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社後、品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事。その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。
大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。


安達裕哉氏のコラムを読んでみよう

関連コラム
もっとみる >
Loading...
scroll-back-btn