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どんなスキルが最も役に立つ?
どんなスキルが最も役に立つ?

どんなスキルが最も役に立つ?

2024/02/22・提供元:安達裕哉

数々の企業を見てきましたが、「スキルアップ」を唱えない企業は皆無といってよいほどです。もはや会社員の必須の活動となっているといっても良いくらいです。


しかし、どのようなスキルアップが必要なのかを明確にしているケースはあまり多くはありません。


あるいは定義していたとしても、たとえば「リーダーシップ」「傾聴力」「論理的思考力」といった大雑把な項目をよく見かけますが、これらが具体的に何を示しているのか、どうすれば身につくのか、具体的なことが示されるケースは少ないでしょう。


要は「何となくこういう力が必要だよね、がんばろうね」というレベルにとどまっていることがほとんどです。


そうではなく、我々が必要とするのは「明確にこれをせよ」という指針ではないかと思います。




では具体的にどのようなスキルが役に立つのでしょう?


まず安易に思いつくのが スキル=「食える資格」という考え方です。


しかし、少し待ってください。

数多ある資格でも、今の日本で本当に「それだけで」食える資格は、医師や弁護士、会計士など、数えるほどしかありません。

しかも最近では、会計士や弁護士ですら、「ややコスパの悪い資格」となっており、「取れば一生安泰」という性質のものではなくなってきました。


現実的には、弁護士の平均年収は1千万円弱、会計士は750万円(令和4年賃金構造基本統計調査)。営業が不要で、ほぼ職が保証されているのは平均年収1,500万円(第23回医療経済実態調査 報告(令和3年実施))の医師だけ。


本質的にはこれくらいの給与であれば、そこそこの会社員であれば十分目指せますし、給与の額だけを考えれば、商社マンやコンサルタントを目指したほうが良いわけです。

資格取得の難易度と費やす時間を考えると、それほどおすすめではありません。


つまり本当に役立つスキルは資格ではない。


とすると、何が重要なのでしょうか。

それを考えるには、基本に立ち返る必要があります。


つまり、我々は企業に勤めて働いている以上、全員が「事業」を通じてお金を得ているという事実をもう一度よく考えねばなりません。


そして、事業に最も必要な力は「マーケティング」と「営業」です。


わたしは大手会計事務所の内部でコンサルタントをやっていたので断言できますが、会計士の資格を取っていても、「マーケティング力」と「営業力」のない人物は、出世できませんでした。

稼げないと、部下たちを養えないからです。


また「与えられた仕事をこなせる人」はそこそこいますが、「顧客をふやす」「仕事を作り出せる」人はそう多くありません。

したがって、仕事を作り出す力、マーケティングと営業は、公務員や医師でなければ、例え弁護士や技術職であったとしても、他のスキルに比べて重要です。



しかし、このように述べると、「マーケティングと営業」のスキルなら、すでに取り組んでいるよ、と言う方がいるかもしれません。


全くその通りです。

ほとんどの会社で、それに取り組んでいるならば「売り上げ不振で困る」ということはないはずですから、万事OK、ハッピーエンドです。



でも、実際には日本企業の営業利益率はせいぜい、1%〜5%程度*1。

とてもうまくいっているとは思えません。

ではいったいなぜ、取り組んでいるはずのことがうまくいかないのか。


簡単です。「スキル」と「知識」を取り違えているからです。




スキルアップというのは、4つの段階があります。


「わかる」段階。

「やれる」段階。

「やり続ける」段階。

「成果が出る」段階です。


ほとんどの人は、マーケティングと営業を「わかる」という段階でしかとらえていません。

たとえばマーケティングのフレームワークに4Cや3Pという知識があります。


でも、知識があっても、売上を作れるかといえば、そうではないと思います。



ですから本当に重要なのは「知識」でもありません。

スキルとは、もっと根源的なもので、いうなれば 「知識を現場に適用して、改善を繰り返す能力」なのです。



たとえば、経営コンサルタントを名乗る人は多いですが、実際に経営ができる人はそう多くありません。

なぜかといえば、彼らは「知って」はいますが、現場で実際にそれを使ったことがないからです。


コンサルタントと経営者の大きな差は、ここにあります。

コンサルタントの持っているものは単なる知識ですが、経営者が持っているのは経営スキルです。


いずれにせよ、これが「学校の成績が良いこと」と、「仕事ができること」が必ずしも同一でない事の理由です。




スキルは、本質的には広義の「学習能力」ともいえます。


学習能力とは、上で説明したとおり、


「わかる」

「やる」

「やり続ける」

「成果が出る」


のサイクルを実行に移すことのできるスキルであり、知識を吸収することは、仕事の現場では「学習」とは呼びません。



ですからマーケティングと営業のスキルを身につけたいと思ったら、自分で顧客のニーズを把握して商品を作り、販売し、改善を繰り返すというステップを、実際にやってみる必要があります。



そして一度これができるようになると、一生の宝になります。

なぜなら、「どこへ行っても、売上を作ることができる」ようになるからです。


大手企業で新規事業を立ち上げることはもちろん、スタートアップのメンバーになることも、副業で成功することも、もちろん起業することもできます。



会社が不幸にも倒産してしまっても、リストラされても、腕一本で、世の中を渡っていけるという自信がつきます。

資本主義の世の中で、これ以上価値のあるスキルがあるでしょうか。



「そんなことを言っても、どこから始めればいいかわからない」と言う方もいるかもしれません。


そういう方は、ぜひ今勤めている会社の営業をやってみてください。

営業をやったら、マーケティング、もしくは新規事業開発の仕事を全力でやってみてください。


そうすると、会社が売り上げを作る仕組みが良く見えると思います。

そして、どこかで成功したら、今度は異業種で同じことに挑戦してみてください。


そうすればもう、「マーケティング」と「営業」のスキルがついたとして良いと思います。

あとは好きにするのがいいでしょう。



わたしは一生に一度は、「自分のビジネス」を持つべきだと思っていますので、まずは副業でビジネスを起こしてみてみてはどうでしょうか。

おそらくうまくいかないでしょうが、そこでもまた「学習」はできます。


そうして何回かチャレンジをしているうちに、「思いがけない成功」がやってくるかもしれません。

そうしたらあなたも「資本家」の仲間入りです。

莫大な富を獲得できるための切符を手に入れた、といってよいでしょう。



本当に役立つスキル、それは「商売を作るスキル」、すなわちマーケティングと営業なのです。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。



出典
*1、経産省HP 3.売上高営業利益率



安達裕哉
あだちゆうや

1975年生まれ。デロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社後、品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事。その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。
大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。


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