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銀行口座の凍結 理由と解除に必要な手続きを弁護士が解説
銀行口座の凍結 理由と解除に必要な手続きを弁護士が解説

銀行口座の凍結 理由と解除に必要な手続きを弁護士が解説

2025/04/13に公開
提供元:阿部由羅

銀行口座は、名義人が亡くなった場合や、不正利用が疑われる場合などには凍結されてしまいます。
凍結を解除するためには、銀行が定める手続きを行わなければなりません。

本記事では、銀行口座が凍結されるケースや、凍結解除に必要な手続きなどを解説します。


銀行口座が凍結される主なケース

銀行口座は、以下のようなケースにおいて銀行側の判断で凍結されます。


  • 名義人が死亡した場合
  • 名義人の判断能力が著しく低下した場合
  • 銀行が債務整理の受任通知を受け取った場合
  • 振り込め詐欺救済法に基づく被害の届出があった場合

など

口座の凍結を解除するためには、銀行が定める手続きを行わなければなりません。
次の項目から、各ケースにおいてなぜ口座が凍結されるのか、凍結解除にはどのような手続きが必要になるのかを解説します。


口座凍結のパターン1|名義人が死亡した場合

口座名義人が亡くなったことを銀行側が知った場合、その口座は凍結されます。
預貯金の使い込みなどを防ぎ、相続人に対して適切に残高を引き継ぐための準備をするためです。

名義人が亡くなった口座の凍結を解除するためには、銀行が定める相続手続きを行う必要があります。
相続の内容に応じた書類を銀行に提出すると、おおむね2週間程度で相続人の口座へ残高が払い出されます。*1

なお、口座凍結が解除される前でも、以下のいずれか低い金額までは、各相続人が単独で払い戻しを受けることができます。


  • 相続開始時の預金額×1/3×払い戻しを受ける相続人の法定相続分
  • 150万円

口座凍結のパターン2|名義人の判断能力が著しく低下した場合

認知症などによって、口座名義人の判断能力が著しく低下したと銀行側が判断した場合、その口座は凍結されます。
親族からの申告のほか、窓口担当者が本人とやり取りした際、受け答えに違和感を覚えて判断能力の低下に気づくケースもあります。

自分の行為の結果を判断できないほどに判断能力が低下した人は、自分だけで契約の締結などを行うことができません(民法3条の2)。
理解できないのに取引を行って、財産を失ってしまうことがないようにするためです。銀行においても、判断能力が低下した本人の財産を保護するため、一時的に口座を凍結する運用を行っています。

判断能力の低下を理由とする口座凍結を解除するには、原則として成年後見人の選任が必要です。*2

成年後見人は家庭裁判所によって選任され、判断能力の低下した本人に代わって、契約の締結や財産の管理などを行います。
選任された成年後見人が銀行に所定の書類を提出すると、審査の末に口座凍結が解除されます。それ以降は、成年後見人が口座を管理することになります。

そのほか、判断能力に問題がない旨を記載した医師の診断書などを提出すれば、口座凍結を解除してもらえるケースもあります。しかし、銀行によって運用が異なるのでご注意ください。

なお三菱UFJ銀行では、本人の判断能力の低下するケースに備えて、あらかじめ代理人を指定できる「予約型代理人」サービスを提供しています。*3


口座凍結のパターン3|銀行が債務整理の受任通知を受け取った場合

「債務整理」とは、借金などの債務負担を軽減または免除する手続きです。債務の支払いが困難になった人を救済するため、法的に債務整理が認められています。

個人の債務整理には、主に以下の3つの手続きがあります。


  • 任意整理
    銀行などの債権者と交渉して、利息のカットや支払いスケジュールの変更などを合意します。裁判所を通さずに行うため、手続きが比較的簡単です。

  • 個人再生
    裁判所を通じて、借金などの債務を大幅に減額します。住宅ローンが残った自宅の処分を回避し得るなどのメリットがあります。

  • 自己破産
    裁判所を通じて、財産を処分して銀行などの債権者に配当した後、残った債務が免除されます。借金の完済が全く見通せない状況にある場合は、自己破産が最も有力な選択肢です。

債務整理を行う際には、弁護士に依頼するのが一般的です。依頼を受けた弁護士は、債権者に対して債務整理の受任通知を発送します。

依頼者が銀行からお金を借りている場合は、弁護士が銀行に対しても受任通知を発送します。
銀行側が受任通知を受け取った時点で、その銀行にある口座は凍結されます。
銀行には、受任通知を受け取った時点における口座残高と貸付金を相殺する権利があり、相殺のために出金を防ぐ必要があるからです。

債務整理による口座の凍結が解除されるのは、銀行側において相殺処理や保証会社による代位弁済などが完了した時です。
おおむね凍結後1~3か月程度かかりますが、具体的な期間は状況によって異なります。

なお、銀行が債務整理の受任通知を受領した時点以降に、凍結された口座に入金された残高については、原則として凍結解除を待たずに出金することができます(銀行による相殺が禁止されているため)。
出金を希望する場合は、銀行の窓口でご相談ください。


口座凍結のパターン4|振り込め詐欺救済法に基づく被害の届出があった場合

振り込め詐欺救済法では、振り込め詐欺などの犯罪に利用された口座を凍結し、その残高を被害者に支払う「被害回復分配金」の制度を設けています。

銀行は、口座が詐欺などの犯罪行為に利用された疑いがあると判断したときは、速やかにその口座を凍結します。犯罪グループによる出金ができないようにするためです。
銀行が犯罪行為の疑いを抱くきっかけとしては、捜査機関や被害者からの情報提供(通報)などが挙げられます。

銀行が口座を凍結した後、預金保険機構が預貯金債権の消滅手続きの開始に関する公告を行います。公告では、名義人が払い戻しを求めることのできる期間(60日以上)が定められます。
期間内に名義人から届出がなく、かつ口座が犯罪に利用されていないことが明らかにならなかったときは、預貯金債権が消滅して出金できなくなります。この場合、口座残高は被害者に対して被害回復分配金として支払われます。

万が一振り込め詐欺などの被害に遭ったときは、犯罪グループによる出金を防ぐために、一刻も早く警察と銀行に連絡しましょう。


まとめ

銀行口座は、名義人の死亡や判断能力の低下、債務整理などをきっかけに凍結されることがあります。

特に口座名義人が高齢である場合は、突然の健康状態の悪化に伴い、口座が凍結されてしまうこともあり得るので注意が必要です。
口座が凍結されても大丈夫なように、別の形でお金を準備する、凍結解除の手続きを確認するなどの備えをしておきましょう。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。

出典
*1 三菱UFJ銀行「三菱UFJ銀行での相続手続のご案内」
*2 裁判所「後見開始」
*3 三菱UFJ銀行「「予約型代理人」サービスのご案内」


阿部 由羅
あべ ゆら

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

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