AIや5G技術の普及、そして自動運転に向けた技術開発などで、世界的に半導体の需要が高まっています。
同時に 半導体銘柄は値上がりを続け、株式市場の中でも株価指数全体を動かす大きな存在になっています。
半導体銘柄は最近はどのような値動きをたどっているか、国内の株式市場にどのようなインパクトを与えているかなどについてご紹介します。
身近な家電のほか、スマートフォン、タブレット、パソコンから自動車まで、私たちが毎日のように接する製品に使われている半導体は、まさに多くの工業品がそれなしでは成り立たない 「産業のコメ」です。
さらにここにきて、AIの普及や自動運転に向けた技術開発がさらに半導体市場を盛り上げています。
グローバルコンサルティング会社であるマッキンゼー・アンド・カンパニーは、 2030年までに半導体市場は2021年の倍近く、1兆円規模になると予測しています。
半導体の世界市場予測
出典)McKinsey & Company「The semiconductor decade: A trillion-dollar industry」
そして株式市場の中でも、半導体銘柄は大きな存在を示すようになっています。
では、半導体産業は国内外の株価にどのような影響を与えているか見ていきましょう。
アメリカでは、半導体株の動向を示す株価指数のなかに 「SOX(ソックス)指数」と呼ばれるものがあります。アメリカのナスダックが算出する主要な半導体銘柄で構成される株価指数で、正式名称は「フィラデルフィア半導体株指数」です。*1
SOX指数は半導体の設計や製造、流通、販売をする主要な企業30社で構成されています。
SOX指数は半導体の需要の増加とともに、上昇基調を続けています。
SOX指数の推移(2024年12月22日取得)
出典)Nasdaq「PHLX Semiconductor Sector (SOX)」
2022年に入って一時的に指数が下落しているのは、コロナウイルスのパンデミックによる影響が考えられます。
そして、同じ期間のアメリカの株価指数の推移を見てみましょう。
「NYSE総合指数」と呼ばれる株価指数は、ニューヨーク証券取引所に上場する全ての普通株を対象にした指数です。
その「NYSE総合指数」は下のように推移しています。
NYSE総合指数の推移
出典)Nasdaq「PHLX Semiconductor Sector (SOX)」
2つの図を見比べて、チェックしてほしいポイントは2つです。
まず1つめは、 SOX指数とNYSE(ニューヨーク証券取引所)総合指数は似たような動きをしていることです。もう1つは、2023年以降の、コロナ後の復活度合いです。
ニューヨーク証券取引所全体での株価指数よりも、SOX指数のほうが先行して上昇を続けていることがわかります。
半導体銘柄が、株式市場をけん引しているとみることもできるでしょう。
日本でも、半導体銘柄の動向が、株式市場に大きな影響を与えるようになっています。
2024年に入って、 東証プライム市場に上場する企業の全時価総額に占める半導体の主要10銘柄の時価総額の比率は過去20年で最大になり、9.4%にのぼっています。*2
半導体銘柄が、日経平均やTOPIXといった指標に大きな影響を与える存在になってきたと言えるでしょう。
日本では半導体関連29銘柄で構成される「日経平均半導体株指数」があり、こちらもSOX指数同様に年々上昇傾向にあります。*3
ひとくちに「半導体」といっても、そこには色々な立場のメーカーが携わっています。
主には、以下のようなものです。
半導体業界の企業種別
出典)中部経済産業局「半導体業界の魅力と可能性」
半導体を製造・販売する企業はもちろんのこと、 半導体の製造工程を任される企業だけでなく、 半導体を製造する機器のメーカーや材料を販売する企業もあります。半導体大手の株価が値上がりすれば、これらの企業の株価もつられて高くなる可能性は大いにあるでしょう。
注目度の高い半導体銘柄ですが、 個人で投資するには少しハードルが高いものと言えます。
というのも、 代表的な半導体銘柄は1株の値段が高く購入が100株単位だとすると、少なくとも数百万円の資金が必要になります。
そのため投資を考えるなら、分散投資を意識する上でも、 半導体銘柄を組み込んだ投資信託の形で購入するという方法も一つの選択肢でしょう。
また、日経半導体指数の動きに連動する投資信託商品もありますので、半導体銘柄に興味があるという場合、これらに注目してみましょう。
半導体銘柄を取り巻く環境として、注目しておきたいのが米大統領の交代です。
2025年1月20日にトランプ氏が大統領に就任しますが、 トランプ氏は国外からの輸入品に高い関税をかけることをすでに示唆しています。
特に中国からの輸入品には60%、その他の国からの輸入品には10~20%としています。*4
仮に現在よりも 高い関税がかけられることになれば、世界の半導体の需給バランスに変化が起こることでしょう。
今後は、トランプ政権の動向にも注意していく必要があるといえるでしょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。
出典
*1 日本経済新聞「日経半導体株指数、成長期待を反映 連動ETFも次々登場」
*2 日本経済新聞「株高、半導体依存深まる プライム時価総額の9.4%に」
*3 日経平均プロフィル「日経半導体株指数」
*4 ブルームバーグ「「トランプ関税」の足音におびえるアジア株市場、日本例外の可能性も」