2025年度の政府予算案が国会に提出されました。
一般会計の総額は115兆円で、前の年度をさらに上回る過去最大の規模です。
国の予算は私たちが支払う税金などが原資ですが、どのようなところに使われているのでしょうか。
また、国の予算がどのように決まっていくかについても解説します。
国の予算について知るために、まず押さえておきたい関係用語をご紹介します。
「歳入」と「歳出」はそれぞれ国の年間収入と支出を指します。収入はおもに税収と、国民や海外の投資家が出資している国債です。ただ国債は収入になる一方で、満期に達したものには利息をつけて順次償還していかなければなりません。償還金や利息は歳出となります。
また、国の予算には「一般会計」と「特別会計」があります。
一般会計は国の通常事業を行うのに必要な歳入・歳出の会計です。これに対して特別会計は、事業としては単体であっても煩雑で莫大な特定の事業についてお金の流れを把握するために、一般会計から切り離されたもののことです。特別会計は一定の要件を満たす場合に設置され、補助金などの形で使われます。*1*2
例えば2023年度には経過的なものを含め、13の特別会計が設置されています。
2023年度の特別会計
出典)財務省「令和5年版 特別会計ガイドブック」
2025年度の特別会計の歳出総額は429.5兆円となっています。*3
概算要求とは、各省庁が財務省に提出する予算の見積もりのことです。財務省が決めたルールである「概算要求基準」に基づいて作成されます。予算にメリハリをつけるための基準で「シーリング」(天井)と呼ばれることもありますが、2014年度予算以降は上限は設定されていません。*4
また、概算要求の中には「事項要求」という項目があります。概算要求のような厳しいルールはなく、各省庁が「重要な政策」として必要な金額を示さずに事業項目だけを記して要望することができるというものです。
2025年度予算でも事項要求は認められています。ただ金額を示さずに要求できるため青天井になりかねない、との指摘もあります。*5
では、予算が決まるまでの具体的なスケジュールを見ていきましょう。
予算が成立するまで
出典)国税庁「税の学習コーナー 国の財政 国の予算」
各省庁からの概算要求が8月までに財務省に提出されます。その後、財務省で審議され、内閣での閣議決定を経て政府案が完成します。
そこから政府案が国会に提出され、衆議院、その後参議院の予算委員会で審議されて予算は最終決定となります。
2025年度の政府予算案は2025年1月24日に国会へ提出されました。*6
加藤財務大臣が2025年度予算で重点的に配分したと述べたのは、
なお、新しい年度が始まるまでに予算が決まらない時は「暫定予算」という一時的な仮の予算を作ります。
また、大きな災害が起きたり、社会経済の状況が変わり、用意していた予算で足りなくなったりした場合には「補正予算」を作って対応します。*8
では2025年度一般会計の政府案における歳入・歳出の内訳を見てみましょう。
2025年度予算の政府案
出典)財務省「令和7年度予算のポイント」
歳出・歳入それぞれについて紹介していきます。
まず政府案段階での一般会計の歳出です。
主な項目の金額と内訳を、2024年度の当初予算と比較してみましょう(100億円単位切り捨て)。*9
防衛関連費、地方交付税交付金等、国債費の割合が2024年度より増えています。
なお先ほども述べましたが「国債費」は、購入した国債が満期を迎えた国民などに償還する元本と利息にかかる費用です。
ついで、歳入についてです。
こちらも主な項目の金額と内訳を、2024年度の当初予算と比較してみましょう(100億円単位切り捨て)。
国の年間の収入源を見てみると、公債金が約4分の1を占めています。いわゆる「国の借金」です。
また物価高騰を受けて消費税が増えており、公債金をのぞいた税収入の3分の1を占めています。
歳入・歳出ともに注目したいポイントがもうひとつあります。
2025年度の政府案を見てもわかる通り、歳入の約4分の1を公債金に頼っているということです。
国債は歳出が歳入を上回る時に発行されるものですが、年々その残高が積み上がっているのです。
普通国債残高、利払、金利の推移
出典)財務省「財政に関する資料」
国債という形では、国民も国にお金を貸しているという形です。
また、国債などの形で日本が抱えている債務残高はGDPの2.5倍に達しています。
債務残高の国債比較(対GDP比)
出典)財務省「財政に関する資料」
世界的にも突出した水準といえるでしょう。
なお賃上げや暮らしに関わる予算としては、以下のようなものが盛り込まれています。*10
予算の重点は時代に応じて変わります。
わたしたちが納めた税金や購入した国債がどのように割り振られて使われていくのか、それは時代にマッチしたものなのかに注目していきましょう。
本コラムは執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典)
*1 財務省「令和5年版 特別会計ガイドブック」
*2 環境省「エネルギー対策特別会計補助事業 活用事例集」
*3 財務省「特別会計について(令和7年度予算)」
*4 日本経済新聞「概算要求基準」
*5 日本経済新聞「2025年度概算要求基準を決定 重要政策は「青天井」も」
*6 財務省「令和7年度予算」
*7 財務省「第217回国会における加藤財務大臣の財政演説(令和7年1月24日)」
*8 国税庁「税の学習コーナー 国の財政 国の予算」
*9 国税庁「税の学習コーナー 国の財政 財政のしくみと役割」
*10 NHKニュース「来年度予算案 閣議決定 一般会計の総額115兆円余で過去最大に」