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お金は限界まで借りて、「労働者」から「資本家」へ転身するのが正しい。
お金は限界まで借りて、「労働者」から「資本家」へ転身するのが正しい。

お金は限界まで借りて、「労働者」から「資本家」へ転身するのが正しい。

2024/08/04に公開
提供元:安達裕哉

借金は悪いもの。会社員のとき、私はそう考えていました。
というのも「利息を払うのは損だ」と思っていたからです。

例えば、欲しいものがある。
そのために、5万円を借ります。
借りた金は利息をつけて、返さねばなりませんから、トータルでは利息の分だけ損をする、ということになります。考え方として別に間違ってはいません。

では「住宅ローン」などの、大きな買い物の場合はどうでしょうか。
例えば3000万円を35年ローンで借りて、家を買う。金利が1%程度のときには、総返済額は約3600万円になりますから、600万円は「損」ということになります。

もちろん「家」を手にいれるという満足感は得られますから、それが損であるかどうかは、それぞれの人の価値観でしょうが、私にはそれが不合理に思えました。

そもそも私の収入は仕事上、毎年大きく変動するものであったため、
「そもそもローンを定期的に返済できるのか?」
「身の丈に合った賃貸にその都度済めばいいのでは?」
「なんか借金するのがイヤ」
という様々な理由から、借金について深く考えることを避けていました。

しかし現在、私の考え方は、すっかり変わりました。
実際、銀行などから数千万円にのぼる借金をしています。加えて、自分から借金をさらに増やすような動きまでしており、現在では「お金は限界まで借りるのが正しい」を実践しています。
つまり、「借金反対派」から、180度方針を転換したという事になります。

いったいなぜ、「借りられるときに借りておいた方がいい」と判断するようになったのか。
それは一言で言ってしまえば
「良い借金」と
「悪い借金」
の区別がつくようになったからだと言えます。


良い借金と悪い借金

この「良い借金」と「悪い借金」の区別がつくようになることこそ「マネーリテラシー」の最初の一歩なのかもしれません。

結論から言うと、いくつかの条件を満たせばその借金は、良い借金であり、「お金は限界まで借りることが正しい」となります。

その条件とは、

  • 定期的な収入があること
  • 低金利で借りられること
  • 消費ではなく投資のための借金であること

では、順に説明しましょう。

まず、1.の条件は当たり前と感じるでしょう。
借金を返済するための原資となるものです。

定期的な収入がない状態での借金は自転車操業状態となりやすく、お勧めできません。
借りる時の条件もどんどん悪くなってしまいますから、まずは定期収入を確保していることが、「借金」を活用することの大前提です。

つぎに、2.の低金利と言う条件です。
住宅ローンの金利は現在、変動金利で年0.3~0.4%程度、固定金利でも年2%程度です。
また、日本政策金融公庫では、事業用の融資金利は年1~3%です。

かつて日本がバブル経済であった頃の住宅ローン金利は7%~8%であったということですから、現在の金利は非常に低い水準にあると言えます。
このような低金利であれば「限界まで借りるほうが良い」と判断してもよいでしょう。

逆に言えば、高い金利のときには、借金は(当たり前ですが)避けるべきであり、現在においても消費者金融やカードローンなどは7~8%の金利は当たり前ですから、「良くない借金である」と言えます。

最後に3.です。

3こそが最も重要な「良い借金」の条件ですが、「消費」を目的とする借金ではなく、「投資」を目的とした借金であれば、「借りられるまで借りる」のが最も合理的な選択です。

ここで重要なのが「消費」と「投資」の違いです。

消費とは、文字通り、物やサービスを自分の欲求に従って買ったり、使ったりすることで、使ってしまえば手元に何も残りません。
ですから、これでは借金をすればするほど、貧乏になってしまいます。
消費は自分の定期的な収入の中でやりくりせねばなりません。

逆に投資とは、手元にあるお金を運用して、更に多くのお金を得る行為です。

一般的には株や投資信託、貴金属や先物などの金融商品などに資金を投じて、リターンを得ようとする行為です。
NISAやIDeCoなどの税金が有利な制度を国が整えたこともあり、近年急に、人口に膾炙してきました。

しかし、投資とよべるものはこれだけではありません。

例えば事業です。手元にあるお金を使って、サービスや商品を作り、それを販売して元金よりも多くのお金を生み出すことも投資の一種です。
(むしろ、事業を行うほうが、本来の意味での投資といえるのですが)

また、自宅を買うことも一種の「不動産投資」です。値上がりするような不動産を狙って購入し、適度なところで売却と購入を繰り返すことで、資産を増やしている人も、実際に存在します。逆に賃貸は、単なる消費といえます。

つまり「良い借金」とは、投資の元手、種銭とするための借金です。
この場合、元手が大きければ大きいほど有利です。

投資も事業も、手元に資金がなくなってしまった時点で、「ゲームオーバー」ですから、多少負けても後で取り返せるよう元手は大きければ大きいほどよい。
だから特に現在のような低金利では、「借りられるだけ借りる」ほうが良いのです。

実際、S&P500からの、過去10年の平均的な年リターンは10%にものぼります。
日本企業のROEの平均は約10%という統計もありますから、これより低い金利で借りることができれば、借りれば借りるほど再投資によって得をすることになります。

また、後述しますが住宅ローンについても、繰り上げ返済を急ぐのではなく、手元に資金があるのであればそれを返済に当てず、金融商品や事業への投資に回すことでリターンを得ることができます。

このように手元資金の再投資を、自分の手札の中に加えることで、「単なる損得」つまり家計簿の思考であるP/L脳から、「利息を支払ったとしても、総資産から生み出されるリターンが大きればOK」を考慮した、B/S脳に変えると、大きなチャンスをつかむことができるのです。


労働者から資本家へ

そしてこれは、「労働者」から「資本家」への発想の転換でもあります。

労働者は一般的に、運用できる資本が自分の身体だけ。
つまり、「資産に働かせる」という発想がありません。
だから「借金」=「利息が取られる」=「損」という図式ができあがってしまうのです。

でも資本家は発想が異なります。

「借金」= 「総資産を大きくできる」=「低い金利で調達できる借金は大きなチャンス」という意識で世の中を見ています。

したがって借金=損ではない。
むしろ、できるだけ返済を遅らせるほうが、合理的な選択なのです。

「住宅ローンは「変動」で借りなさい(ダイヤモンド社)」の著者、住宅ローンアナリストの塩沢祟氏は、「住宅ローンはじつは借りると儲かる」と述べており、変動金利かつ最長の35年で借りることを勧めています。これは要するに「できるだけ資金を手元にとどめておける」からです。

塩沢氏は「35年ローンを、20年ローンにすると、月6万円を毎月多く支払って、140万円の金利負担を軽く出来るが、毎月6万円を捻出できるなら、それを資産運用に回したほうがいい」といいます。

なお、毎月6万円をつみたてて、2%という保守的な利回りで20年運用した場合、運用益は330万円ですから、圧倒的に「35年ローン」のほうが有利です。

つまり、資本家というのは「金持ち」のことではありません。
資本を働かせることを実践する人、つまり「借金」を恐れずに、リスクを取って資産運用をする人のことを言うのです。


安達 裕哉
あだち ゆうや

1975年生まれ。デロイト トーマツ コンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社後、品質マネジメント、人事などの分野でコンサルティングに従事。その後、監査法人トーマツの中小企業向けコンサルティング部門の立ち上げに参画。
大阪支社長、東京支社長を歴任したのちに独立。
現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」の経営者として、コンサルティング、webメディアの運営支援、記事執筆などを行う。


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