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高市政権が進める「積極財政」の実態|国債発行がもたらす日本経済への影響と今後
高市政権が進める「積極財政」の実態|国債発行がもたらす日本経済への影響と今後

高市政権が進める「積極財政」の実態|国債発行がもたらす日本経済への影響と今後

2026/01/20に公開
提供元:Money Canvas

2025年10月、高市早苗氏が内閣総理大臣に就任し、高市政権が誕生しました。
高市政権は「経済安全保障」と「成長重視の積極財政」を掲げ、国内産業の強化や技術投資、防衛力の向上などを通じて日本の自立性を高める方針を示しています。

この政策に国民の期待は大きく、2025年12月時点で内閣支持率は76%前後と非常に高水準にあります。*1

こうした高い支持を背景に進められる積極財政政策とは何か、そしてそれにともなう大量の国債発行が日本経済にどのような影響を及ぼし、今後どのような課題があるのかを本記事で詳しく見ていきましょう。


高市政権の政策とは?

高市政権は、前例のない規模の経済対策を打ち出し、経済面と安全保障面の強化を同時に図ることを特色としています。

具体的には、以下の3点を柱とした戦略的な投資を進めています。*2


経済安全保障の拡張

エネルギーや半導体、重要鉱物といった戦略物資のサプライチェーン確保へ巨額の投資を行い、他国に依存しない体制を構築しています。


防衛力の抜本的強化

従来2027年度を目処としていた「防衛費GDP比2%」の達成目標を、2025年度中に前倒しで実現する方針を決定しました。


次世代技術への投資

AI(人工知能)や量子コンピューティングなど、次世代の覇権を握る先端技術産業へ積極的に投資し、日本経済の「稼ぐ力」を底上げする戦略です。


その一方で、国民生活を直撃している物価高や少子化といった喫緊の課題に対しても、手厚い支援策を用意しました。
ガソリン税・軽油引取税のトリガー条項凍結解除を含む燃料価格負担の軽減策や、教育無償化の所得制限撤廃など、家計への直接的な恩恵を感じやすい政策も実行に移されています。

高市首相自身、「縮小均衡を招く行き過ぎた緊縮財政ではなく、未来への投資としての積極財政で国力を強くする」と度々公言しており、その言葉どおり、戦略的な財政出動によって日本経済をデフレマインドから完全に脱却させることに強い意欲を燃やしています。*3

こうした「経済を優先する」姿勢のもと、高市政権は景気刺激と将来の財政健全化の両立を図る「責任ある積極財政」を掲げているのです。


【2025年12月現在】高市政権の支持率は76.0%

高市政権発足から約2ヵ月が経過した現在も、高い支持率を維持し続けています。
2025年12月第3週(12月15日〜21日)の世論調査では、内閣支持率は「76.0%」を記録しました。*1

特に若い世代からの支持が厚く、物価高対策や防衛・外交など「強い経済・安全保障」の実現に向けた取り組みが評価されていると報じられています。

新内閣の高い支持率を背景に、政府は大型の経済政策を次々と打ち出しており、こうした政治的基盤が積極財政路線を後押ししている状況です。


高市政権がめざす積極財政

高市政権のキーワードである「積極財政」は、景気や国民生活を下支えするために政府が従来以上に資金を投入する政策姿勢を指します。

その狙いや具体像を以下で詳しく見ていきましょう。


積極財政とは?

高市政権の積極財政とは、経済成長が鈍化している局面において、政府が公共事業の拡大や減税、補助金の給付などを通じて意図的に支出を増やし、有効需要を創出する政策手法のことです。

基本的にはケインズ経済学に基づくアプローチであり、不況期に民間企業の投資意欲が冷え込んでいる際、政府が代わって資金を投じることで経済の呼び水とする狙いがあります。
歴史的に見れば、1930年代のアメリカで行われたニューディール政策がその代表例でしょう。*4

高市政権が目指しているのも、インフラや先端技術への投資によって国が直接的にお金を循環させ、それによって企業の収益改善と家計の所得向上を促し、経済全体を好循環の軌道に乗せることです。
短期的には国の借金(財政赤字)が拡大しますが、「経済成長すれば税収が自然増となり、結果として財政は再建される」という考え方が根底にあります。

「増税で借金を返す」という発想ではなく、「成長による果実で借金を相対的に小さくする」というドーマー条件的なアプローチを採用しています。


国費の内訳

高市政権はその積極財政方針のもと、国家予算の配分を「将来への投資」に重点化しています。
具体的な国費の内訳は、以下の分野に厚く割り振られています。


防衛費

GDP比2%目標の前倒しにともない、歳出が飛躍的に拡大。*2


戦略産業支援

AI、次世代電池、核融合などの先端技術や半導体の国内生産基盤強化へ投資。2025年度補正予算では「危機管理投資・成長投資」として約6.4兆円を計上。*5


物価高・賃上げ対策

ガソリン・電気料金の負担軽減や、中小企業の賃上げ環境整備に向けた約1兆円の大胆な支援策。*3


少子化対策

子育て世帯への給付金や教育費負担の軽減。


これらの巨額投資は、単に一部の大企業を潤すだけではありません。
地方への工場誘致やインフラ整備が進むことで、地域雇用が創出され、地方経済の活性化にもつながることが期待されています。
東京一極集中ではなく、日本全体で成長の果実を享受できる体制を作れるかが、この予算配分の隠れた狙いともいえます。

このように、高市政権下の財政運営は防衛や産業競争力強化といった「将来への投資」と、足下の暮らしを支える「生活支援」の双方に力点を置いている点に特色があります。


補正予算の64%を国債で補う

積極財政を支えるためには大規模な財源が必要ですが、高市政権はその大部分を国債の発行で賄っています。
実際、2025年度に編成された補正予算では、総額18.3兆円の追加歳出に対し、税収上振れ分や剰余金の活用などを差し引いても資金が足りず、約64%にあたる11.7兆円を新規国債の発行で補う形となりました。*5

国債は将来的に償還や利払いが必要となる「国の借金」であり、この巨額の追加国債発行によって政府の債務残高は一段と膨らみます。
日本の政府債務はすでに約1,100兆円規模とGDPの2倍超に達しているため、積極財政の推進によるさらなる国債増発については将来世代へのツケとなることを懸念する声も少なくありません。

今回の大規模補正により、政府がかねて掲げてきた基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化の目標達成は一段と遠のく状況となりました。

高市政権は単年度の黒字化目標を撤回し、複数年での達成に目標を緩和することも検討していますが、この目標の先送りは「財政再建努力の後退」と市場で受け止められかねません。
長期国債の利回り上昇や通貨の信認低下(いわゆる「日本売り」)につながるリスクも指摘されています。*5

積極財政で景気刺激を優先する一方、国債残高の増加による財政の持続可能性にも目を配る必要がある局面といえるでしょう。
特に金利が上向く局面では、新規に発行する国債の利率が高くなり、数年遅れて利払い負担がじわじわ効いてくる点に注意が必要です。


高市政権のこれから

高市政権の積極財政路線が日本経済にどのような結果をもたらすかは、今後の大きな焦点です。

政府が描く理想のシナリオは、大胆な財政出動が呼び水となり、企業が国内投資を加速させ、それが賃上げにつながり、消費がふえることでデフレ脱却と税収増が達成されるという「好循環」です。
高市首相は「増税に頼らずとも、経済パイを拡大することで財政健全化は可能だ」と強調しており、これを実現できれば、国民生活は豊かになり、財政問題も解決に向かうでしょう。*3

しかし、リスクシナリオにも目を向ける必要があります。
もし積極財政による需要喚起が供給能力を超えてしまえば、悪性のインフレ(コストプッシュ型インフレに需要過多が重なる複合インフレ)を招く恐れがあります。

また、日本の財政規律に対する信認が揺らげば、国債が売り浴びせられ、急激な金利上昇やコントロール不能な円安を引き起こす可能性も否定できません。
事実、一部の機関投資家からは「財政規律のタガが外れた」との警戒感も示されており、為替市場では円安圧力がくすぶり続けています。*6

今後は、単にお金を配るだけでなく、その支出が本当に将来の成長を生み出すのかという「ワイズ・スペンディング(賢い支出)」の徹底が不可欠です。
AIや半導体への投資が数年後に実を結び、世界市場で戦える産業として育つかどうかが、借金返済の原資を生む鍵となります。

また、日銀との連携も重要な焦点となるでしょう。
政府がアクセルを踏み込む一方で、日銀が金融正常化に向けてブレーキ(利上げ)をどのタイミングで踏むのか。この政策ミックスの整合性が取れなければ、経済は大混乱に陥りかねません。

高市政権には、高い支持率を背景にした突破力だけでなく、市場との対話を重視した慎重な政策運営も同時に求められます。


未知の領域へ挑む日本経済

高市政権による「積極財政」への大転換は、長年続いた「失われた30年」からの脱却をめざす壮大な実験ともいえます。
「76.0%」という高い支持率は、現状維持ではなく変化を望む国民の強い意志の表れといえるでしょう。

しかし、その背後には巨額の国債発行というリスクが横たわっており、我々国民も「一時的な給付金や補助金」に喜ぶだけでなく、その財源が将来の負担であることを理解した上で、政府の支出が真に国益に資するものか厳しく監視する必要があります。

「成長か、財政破綻か」。

高市政権が踏み出したこの道が、日本の再興につながる輝かしい未来への入り口となることを期待しつつ、今後の動向を注視していきましょう。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。

出典
*1 ジャッグジャパン株式会社「日次世論調査「世論レーダー」週次集計(12月第3週)を公開|高市内閣支持率76.0%(前週比+0.2pt)、自民党支持率は29.1%で微増」
*2 時事通信「高市首相「責任ある積極財政」訴え 税・社会保障で国民会議―来年末に安保3文書改定・所信表明原案」
*3 首相官邸「高市内閣総理大臣記者会見」
*4 税理士ドットコム「積極財政と緊縮財政とは。日本はどちらへ舵を取るべきか」
*5 野村総合研究所 木内登英「巨額の補正予算編成:高市政権は市場の警鐘に耳を傾け『日本売り』を回避できるか」
*6 ロイター「政府、経済対策を閣議決定 高市首相「財政の持続可能性に十分配慮」」

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