ガソリン価格の高騰が止まりません。
小売価格の全国平均は180円を突破し、さらにじりじりと値を上げています。
また、ガソリンにはもともと多額の税金がかけられています。
これについて2024年12月に自民・公明両党と国民民主党は税金の一部を廃止することで合意しましたが、今後どうなっていくのか、ガソリンにかかっている税金の仕組みとともに解説します。
資源エネルギー庁の調査ではレギュラーガソリンの全国平均小売価格は1リットルあたり184.5円(2025年2月15日時点)で、高止まりが続いています。
ガソリン小売価格の推移
出典)資源エネルギー庁「石油製品価格調査」
政府はガソリン価格を抑えるための補助金を1月16日から縮小しており、これが最近のガソリン高値の大きな要因になっています。*1
なぜ補助金を縮小するのか、と思う人は多いでしょう。
もともとこの補助金は新型コロナウイルス禍からの経済回復を支える目的で2022年1月から石油元売りに支給を始めたものです。
当初は2024年の4月末までの措置としていましたが、円安やウクライナ危機などが原因で物価高騰が続いたため、政府は補助制度の当面の延長を決めました。しかし一方で、2024年12月からは補助金を段階的に減らすことも決めていました。*2
この補助制度には、2022年からの累計で8兆円超という巨額の予算が注ぎ込まれています。*3
補助制度は永遠には続けられませんので、何らかの出口が必要だったと見ることができます。
また、ウクライナ危機後のエネルギー価格の高騰を踏まえた補助政策については、日本以外の主要7カ国(G7)の大半では措置を終了しているという事情も関係していることでしょう。
補助金が減れば当然ガソリンは値上がりします。冒頭にご紹介した通りの値動きです。
そこで気になるのが、ガソリンにかけられている税金です。
もともとガソリンには高い税金がかかっていることを知っている人は多いでしょう。具体的には以下の種類の税金です(1リットルあたり)。*4
この「ガソリン税」について詳しく見てみましょう。
さて、ガソリン税の「上乗せ分」とは何でしょうか。
ガソリン税はもともと道路整備のための財源ですが、1974年に財源不足などに伴って税率の上乗せが始まりました。
当初この上乗せ分はあくまで暫定的なものであるとしていたことから「暫定税率」と呼ばれていましたが、今もそのまま続いています。
なお過去に一度、暫定税率がなかった時期があります。2008年、自民・公明の与党は法改正案に暫定税率の維持を盛り込みましたが、衆参ねじれ国会の状況下で、暫定税率の廃止を求める民主党など野党と折り合わず、そのまま2008年3月31日に暫定税率は期限切れしてしまったのです。*5
翌4月1日から、ガソリン価格は大幅に下がりました。
2007年12月から2010年12月までのガソリン・軽油小売価格の推移
出典)一般財団法人日本エネルギー経済研究所「2009年を展望するポイント「国内の石油製品市況」」
しかしその後、与党は暫定税率を復活させる税制法改正案を採決し、暫定税率の期限切れから1か月後の5月1日から再びガソリンが値上がりしてしまう、ということがあったのです。*6
ガソリン価格の高騰については「トリガー条項」という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。
これは2010年に当時の民主党政権が導入したもので、ガソリン価格が高騰した時にそれを抑えるための仕組みです。*7
具体的には、全国平均のガソリンの小売価格が1リットル当たり160円を3か月連続で超えた場合、翌月から暫定税率分が減税されるというものです。
一方で平均小売価格が3か月連続で130円を下回った場合、暫定税率が復活します。
しかし2011年の東日本大震災後の復興財源を確保するため、トリガー条項は凍結されました。
凍結状態は今でも続いており、ウクライナ危機以降も、トリガー条項の凍結解除ではなく補助金を出すという対応をとっています。
税収が大幅に減ることを避けたい、という政府の思惑もあると考えられます。*8
しかしここにきて、暫定税率に関する議論が再び始まっています。
自民・公明両党と国民民主党は暫定税率を廃止することで合意しました。実施時期については先送りで、2025年も調整が続きます。*9
暫定税率の廃止を避けてきた自民・公明両党ですが、今回の合意に至ったのには、2024年の衆院選の結果が関係しています。自民・公明が少数与党に転落する一方、議席を大きく増やしたのが野党の国民民主党です。
与党は2024年度補正予算を成立させるために、国民民主党の主張をのんだという格好です。
暫定税率が廃止されれば、ガソリンはその分の25.1円安くなります。
しかし単純な廃止では国と地方の税収に年間1兆5,000億円ほどの穴が開いてしまう、という課題もあり、その分の財源をどうやりくりするのかは難しい議論になりそうです。
なお国民民主党はトリガー条項の凍結解除も同時に求めていますが、こちらについては政府は否定的です。
発動すれば税収が大幅に減少するほか、発動直前の買い控えや逆に解除前には駆け込みで購入する人が増え、現場が混乱することなどを理由にしています。*10
また、ガソリンの購入支援のためにトリガー条項凍結の解除に踏み切ることは脱炭素化に逆行する、ともしています。
最後に、2025年の原油価格についての見通しを紹介します。
世界銀行は2024年10月に公表したレポートの中で、世界的には原油の大幅な供給過剰が続き、価格は2026年末まで下落するとの見通しを示しています。*11
大きな要因として中国の変化が挙げられています。工業生産の伸びが鈍化していること、また脱炭素のためにEVや天然ガスを燃料とするトラックの販売が増加しているといったことがあります。
OPEC(石油輸出国機構)に加盟していない複数の国が原油増産の準備を進めている、ともしています。
また一般財団法人日本エネルギー経済研究所の主席研究員・小山堅氏はアメリカを中心としたOPEC非加盟国の石油生産の拡大などで潤沢な石油供給があるとしています。*12
ただ、中国経済の減速が価格を押し下げる要因になる一方で、トランプ政権によるイランへの経済制裁の強化などがあれば価格は上昇する可能性が高いとして今後も要注意だとしています。
しかし国際価格が下がったとしても、日本国内での販売価格は補助金や税制に大きく左右されます。
石破政権が今後どのような調整や判断をしていくのか、引き続きチェックしていきたいものです。
本コラムは執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典
*1 日本経済新聞「ガソリン補助縮小、1リットル185円へ 制度には課題も」
*2 朝日新聞デジタル「ガソリン減税の行方 財務省幹部「トリガーは発動不可な制度にした」」
*3 日本経済新聞「ガソリン価格180円→185円に 政府補助16日から再縮小」
*4 NHK「令和7年度税制改正 ガソリン減税は」
*5 一般社団法人日本新聞協会「2008年4月8日 衆院再可決には賛否」
*6 AFPBBニュース「暫定税率復活でガソリン値上げ、GSは閑散」
*7 NHK政治マガジン「トリガー条項とは」
*8 NHK「村上総務相 “「トリガー条項」発動で地方税 約5000億円減収”」
*9 日本経済新聞「ガソリンは安くなるか 減税は先送り、補助金は減少」
*10 読売新聞オンライン「国民民主のガソリン税「トリガー条項」発動案、加藤財務相は否定的…税収1・5兆円減の見込み」
*11 世界銀行「原油の供給過剰、中東紛争拡大による価格への影響を低減する可能性」
*12 一般財団法人日本エネルギー経済研究所「2025年の内外エネルギー情勢の展望」