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医療保険や就業不能保険などさまざまな種類の民間保険がありますが、そもそも入院にかかる平均的な費用や日数を知っていますか?日本は国民皆保険制度をとっているために、誰しもいずれかの公的医療保険に加入している状態です。
そこで今回は、入院にかかる平均費用や日数を知って、どういった公的制度を利用できるのか把握しておきましょう。それを踏まえたうえで、もしもの際に、不足する費用に備える方法を紹介します。
まずは、もしも入院したときにあわてないために、生命保険文化センターが2019年5~6月に全国の18~69歳の男女4,014人を対象に実施した「生活保障に関する調査」の結果を参考に、入院の平均費用や日数について見ていきましょう。
過去5年間に入院した経験のある人は全体の13.7%で、そのうち直近の入院で自己負担費用を払った人の平均金額は、20万8,000円でした。
個別に見ていくと、最も多い金額が10~20万円未満の30.6%、次に多いのが5~10万円未満の25.7%です。入院日数が長くなると自己負担費用も高くなる傾向にあり、61日以上の入院の自己負担費用平均額は60万9,000円でした。
これらのデータを1日あたりの自己負担費用におきかえると、平均金額は2万3,300円となります。最も多いのは、1万~1万5,000円未満で24.2%、その次が4万円以上で16.0%、2万~3万円未満は12.8%と続きます。
同じ調査の結果から、ここでは平均入院日数を確認していきましょう。ケガや病気による入院期間の平均日数は15.7日で、最も多いのは5~7日の27.3%、次いで8~14日の27.1%、5日未満の20.9%の順となります。
平均入院日数 | |
---|---|
20代 | 14.4日 |
30代 | 13.5日 |
40代 | 12.3日 |
50代 | 15.2日 |
60代 | 19.0日 |
年齢別で確認すると、40代以降は、おおむね高齢になるほど入院日数が長くなる傾向です。また、どの年代でも入院日数の割合がだいたい同じくらいですが、入院日数15日~30日で60代だけ20.7%と長くなっています。
平均的な入院費用や日数を把握したうえで、入院費用の支払いで利用できる公的制度について確認しておきましょう。事前にどんな制度があるのかを知っておけば、いざというときに詳しく調べられるので、とても効率的です。
医療費の自己負担額を軽減するために設けられた公的医療保険の制度で、1ヵ月間に自己負担限度額を超えた部分が払い戻される制度をいいます。1回の窓口負担で上限未満でも、1ヵ月間に複数受診や同世帯の人の受診などを合算することも可能です。ただ、保険外併用療養費の差額部分や食事代、差額ベッド代などは含まれません。
自己負担限度額は、年齢や所得を基準に計算され、同一世帯で1年間に3回以上高額療養費を受けると、4回目から自己負担限度額が下がるので、注意してください。
高額療養費支給の一般的な申請方法は、加入している公的医療保険に支給申請書を提出します。支給までに少なくとも3ヵ月ほどかかり、申請方法は公的医療保険によって異なるため、詳細は各自で確認しましょう。
高額療養費制度は、自分で費用を負担したあとに戻ってくるお金なので、一時的とはいえ費用負担が大きくなります。そうした事態を避けるために使えるのが限度額適用認定証です。限度額適用認定証を病院の窓口に保険証と併せて提示すれば、1ヵ月分の医療費負担が自己負担限度額までになります。
医療費の支払いが高額になりそうなときに、加入している公的医療保険に事前申請して、限度額適用認定証を発行してもらう仕組みです。
自己負担分の医療費を支払うのが厳しいときに利用できる制度で、後日支給予定の高額療養費の一定割合を無利子で借りられます。貸付額は、公的医療保険によって異なります。加入している公的医療保険に申請し、貸付を受けられるかの審査を受けなければなりません。
また貸付を受けた場合は、支給された高額療養費を貸付金の返済に充当し、残額があれば本人に支給するという仕組みになっています。
1日当たりの金額=
支給開始日前の継続した12ヵ月間の隔月標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3
国民健康保険以外の公的医療保険に加入している人が対象で、病気やケガのために仕事ができなかった際に受け取れる手当金です。1日に支給される金額の計算方法は、上記の通りです。ただし、被保険者のみが対象で、給与が支給されているあいだは支給されません。支給期間は最長1年6ヵ月です。
労災保険給付対象の休業や美容整形のための休業は支給対象となりません。また連続する3日間を含んで4日目以降の日に対して支給されるなどさまざまな要件があるため、申請する際は加入している公的医療保険に問い合わせしてください。
最低限度の生活を保障し、自立を助けるために確立した制度で、生活保護制度の申請は国民の権利といわれています。就労できない、不動産や預金などすぐに活用できる資産がない、社会保障給付を受けても必要な生活費を得られないなどの理由で困っている人などが対象です。
そのため、病気やケガで働けず困窮した場合は、居住している自治体の福祉事務所に相談してみてください。訪問調査や資産調査などを経て、生活保護を受けられる可能性があります。
ここまでで紹介したように、公的保険制度などを活用すれば、入院費用の負担を軽減できるでしょう。しかし、通院にかかる交通費や差額ベッド代、保険適用外の治療費などは自己負担になります。また、各制度を利用するにはさまざまな要件が決められているため、その要件に該当しなければ受けられません。
さらに、体調不良による休業などで給与が減少する可能性も考えられます。そういった公的保険制度を利用しても不足する部分を補うのが、貯蓄や民間保険です。ここでは、突然の入院費負担に備える民間保険について解説していきましょう。
民間保険には、生命保険や損害保険、医療保険、がん保険などさまざまな種類があり、目的や保障内容に応じて選択できます。民間保険の加入は任意なので、自分に合ったものを選び、保険会社と契約する仕組みです。
医療保険は商品によって保障内容が違いますが、入院や手術に伴い給付金が支払われるものや、入院後の通院で通院給付金が受け取れるものなどがあります。
最近は、日帰り入院でも保障される保険や手術給付金の対象手術の要件見直しも進んでいるようです。加入している医療保険があれば、どういった内容の商品に加入しているのか、1度確認しておくと良いでしょう。不足していると感じれば追加や見直しもできるので、保険会社に相談してみてください。
就業不能保険は病気やケガで働けない場合に備えた保険です。公的保険制度で負担軽減できるとはいえ、療養期間が長引けば生活費などの費用負担に困ることもあるでしょう。
治療費以外に考えられる出費は、生活費や住宅ローン、クレジットカード利用料、車のローン、教育費などさまざまです。そういった部分を少しでもカバーしようとするのが就業不能保険で、保険内容によりますが、給付要件に該当すれば、毎月10万円や20万円などまとまった給付金を受けられます。
平均的な入院費用や日数、公的保険制度で受けられる内容などを把握すれば、自分の生活水準と照らし合わせて不足する保障内容や金額がわかるでしょう。そうすれば、不足をカバーするために、貯蓄を始めたり民間保険を活用したりできます。
貯蓄することは問題ないかもしれませんが、何も把握せずむやみに複数の民間保険に加入すると、毎月の保険料が高額になっている場合もあるので注意してください。不要な保険があれば、この機会に見直しておくとよいでしょう。
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