logo
Money Canvas(マネーキャンバス)
back icon
clear
back icon
収入増につながることも! 国が進める「リスキリング」を詳しく解説
収入増につながることも! 国が進める「リスキリング」を詳しく解説

収入増につながることも! 国が進める「リスキリング」を詳しく解説

2026/02/17に公開
提供元:Money Canvas

DX(デジタルトランスフォーメーション)等の進展により、近年、これまで人々が担ってきた業務の自動化が急速に進んでいます。*1

三菱総合研究所の試算によると、デジタル化にともなう人材需要の変化によって事務職などが余剰となる一方で、デジタル人材が不足するとされています。

そこで近年、デジタルスキルなど、今後仕事上で必要となるスキルや技術を従業員に身につけさせる「リスキリング」を推進する企業が増えています。また、リスキリングの促進に向け、政府もさまざまな支援策を拡充しています。

そこで本コラムでは、リスキリングが注目される背景や、政府による支援制度を紹介するとともに、リスキリングに取り組むことで収入増などにどのようにつながるのか解説します。


リスキリングとは

リスキリングとは、企業が今後必要になる仕事上の新たなスキルや技術を、再教育で従業員に身につけさせることです。*1

近年では特に、デジタル化によって創出される新たな職業や、仕事の進め方が大幅に変わる可能性の高い職業につくためのスキル習得を指すことが増えています。*2


リカレント教育など従来の学び直しとの違い

リスキリングと並んで、「リカレント教育」と呼ばれる学び直しの手段もあります。リカレント教育とは、一時的に職を離れて大学などの教育機関で学び直すことを指し、職を離れることが前提ではないリスキリングとは異なります。*1, *2

リカレント教育は、1970年にOECD(経済協力開発機構)が公式に採用し、1973年にリカレント教育に関する報告書が公表されたことで広く認知されるようになりました。*3

また、社会人の学び直しに関して、「アップスキリング」という用語もあります。こちらは、現在の職務を遂行するうえで求められるスキル等を追加的に身につけることで、時代のニーズに即して新たなスキルを身につけることを目指したリスキリングとは異なります。


リスキリングが注目され始めた背景

リスキリングという概念は、2018年の世界経済フォーラム(通称「ダボス会議」)における「リスキル革命」と銘打たれたセッションにおいて初めて提唱されました。その後、2020年1月のダボス会議では、「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」という宣言がなされました(図1)。*4


0

出典)図1 リスキリングをめぐる政策動向(出所「東北圏企業におけるリスキリング推進に関する実態調査東北活性化研究センター」) p.29


国内でも、厚生労働省が2020年10月に「今後の人材開発政策の在り方に関する研究会」報告書を発表し、労働市場における人材のリスキリングの重要性を指摘しています。

2022年10月には、岸田前総理が所信表明演説で「新しい資本主義の実現」を政策に掲げました。同政策の目玉として、労働者のリスキリング支援など「人への投資」に5年間で1兆円を投じることを表明しています。

また、2023年6月には、政府によって労働者のリスキリング等に関する労働市場改革の指針が示されるなど、リスキリング推進に向けた支援が本格化しています。


リスキリング推進が求められる背景

デジタル技術等の進展により、2015年から2030年にかけて730万人の雇用が失われるとされています。一方で、人口減少による労働供給の減少が290万人。技術革新による新たな雇用の創出は400万人にも上るとされています(図2)。*5


1

出典)図2 人材需給バランスの時系列変化(2015年対比、需給コンポーネント別)(出所「大ミスマッチ時代を乗り超える人材戦略 第2回 人材需給の定量試算:技術シナリオ分析が示す職の大ミスマッチ時代」三菱総合研究所)


職業分類別に見ると、2030年には事務職等の労働供給量が過剰となる一方で、技術革新をリードしビジネスに適用する専門技術職人材は170万人不足する見込みです(図3)。*5


2

出典)図3 人材需給バランスの時系列変化(2015年対比、職業分類別)(出所「大ミスマッチ時代を乗り超える人材戦略 第2回 人材需給の定量試算:技術シナリオ分析が示す職の大ミスマッチ時代」三菱総合研究所)


このようなデジタルスキルを持つ人材を中心とした人材需給のギャップの拡大を食い止めるため、国内では、労働市場におけるリスキリング推進が進められています。*4


海外におけるリスキリング支援動向

海外では、官民によるリスキリングの取り組みが活発化しています。


米国におけるリスキリング動向

米国では、大手電気通信事業者であるAT&Tによって2013年に「WORKFORCE2020」というプロジェクトが立ち上げられるなど、先駆的な取り組みが行われています。

同プロジェクトは、2020年までに10億ドルを投下し、従業員10万人のリスキリングをめざすもので、様々な取り組みが展開されました(図4)。


3

出典)図4 「WORKFORCE2020」におけるリスキリングの取り組み(出所「東北圏企業におけるリスキリング推進に関する実態調査」東北活性化研究センター)p.25


同プロジェクトによって、必要な社内技術職の多くを社内異動によって確保することができ、2020年時点で23万人の雇用を維持し、収益の拡大にもつながったとされています。


シンガポールにおけるリスキリング動向

シンガポール政府は、リスキリング推進支援の一環として、環境問題の深刻化を背景に必要性が高まる「グリーン・スキル」の習得支援を行っています(図5)。*4


4

出典)図5 シンガポール政府が公表する「グリーン・スキル」(出所「東北圏企業におけるリスキリング推進に関する実態調査」東北活性化研究センター)p.26


同政府は、「スキルズフューチャー」と呼ばれる職業訓練施策も展開しています。同施策において、政府は国民もしくは永住権保持者に1人当たり500シンガポールドルを支給し、プログラムの受講費用を補助しています。


社会人がリスキリングに取り組むメリット

社会人が リスキリングに取り組むメリットとしては、キャリア形成や収入増などにつながる可能性があるという点です。


キャリア形成への寄与

リスキリングに取り組むことで、仕事に対するモチベーションの上昇や権限の増加、社内での評価向上につながることがあります。*6

日本政策金融公庫が実施した中小製造業の従業員等向けのアンケート調査によると、リスキリングに取り組んだことによってモチベーション上昇につながった人の割合は46.9%。取り組み前と比べて権限が増えたと回答した人は28.3%。社内での評価が上がったと回答した人は41.6%となるなど、一定の効果があったことがわかります(図6)。


5

出典)図6 リスキリングの成果(出所「アンケートと事例にみる中小製造業のリスキリングの実態」日本政策金融公庫) p.12


収入増への寄与

リスキリングに取り組むことによって、昇給など収入増につながることもあります。

ある企業が実施したアンケート調査によると、リスキリングを行う人材に対して昇給を行っている企業は全体の33%。また、37.5%もの企業が昇給を検討していると回答するなど、人事評価等においてリスキリングを考慮する企業が増えています(図7)。*7


6

出典)図7 リスキリングを行う人材に対して昇給を行う企業等の割合(出所「【2023年3月版】『リスキリング』のリアルと展望」パーソルイノベーション)p.11


先述した日本政策金融公庫の調査でも、リスキリングの実施によって28.3%が「収入が増えた」と回答しており、所属する企業によっては昇給につながることが分かります。*6

リスキリングは、副業など本業以外の収入増につながることも示唆されています。ある企業の調査によると、副業年収300万円以上の回答者の58.7%がリスキリングを実践していることが分かりました(図8)。*8


7

出典)図8 副業年収別でのリスキリング実施割合(出所「<副業者のリスキリング実態調査>副業年収300万円以上稼ぐ副業者の約6割が『リスキリング』を実践。~今話題の『リスキリング』。副業年収によって取り組みに差が生まれていることが明らかに~」パーソルキャリア)


副業年収300万円未満の回答者と比べて、300万円以上の方がリスキリングに取り組む割合が高くなっており、年収によってリスキリングへの取り組みに一定の差があります。


日本におけるリスキリング支援制度

現在、 経済産業省や厚生労働省を中心に、リスキリング推進に向けた様々な支援策が実施されています(図9)。*9


8

出典)図9 リスキリング関連の主な施策一覧(出所「リスキリング関連の主な施策 一覧 (R7.1.15時点)」経済産業省)


国による企業向けリスキリング支援策

厚生労働省は、「人材開発支援助成金」において、「事業展開等リスキリング支援コース」を展開しています。同コースは、新規事業の立ち上げなど事業展開等にともない必要となる知識や技術を習得させるための訓練に対して助成するものです。*10

事業展開は行わない場合でも、企業内のDXやカーボンニュートラル推進にあたり、必要な知識等を習得させるための訓練も対象となります。経費助成率は中小企業で75%、大企業で60%。賃金助成率は1人1時間あたり中小企業で1,000円、大企業で500円となっています。

その他にも、中小企業向けに人材育成等に関する専門的な助言等を行う「中小企業リスキリング支援事業」などが実施されています。*9


国による個人向けリスキリング支援策

労働者向けのリスキリング支援策も充実しています。

経済産業省が実施する「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、補助事業者経由でリスキリング講座の受講費用が最大56万円補助される制度です(図10)。*11


9

出典)図10 「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」による補助(出所「〈転職を実現し、継続就業すれば、最大56万円の補助〉」経済産業省)


本事業では、講座受講のほか、採択された補助事業者のもとでキャリア相談や転職支援を一体的に受けることができます。

また、経済産業省は、デジタルに関する知識等の習得に役立つポータルサイト「マナビDX(デラックス)」を公開しています。マナビDXは、これまでデジタルスキルを学ぶ機会がなかった人でも学習を始められるよう様々な学習コンテンツが掲載されたサイトです。*12

一部有料の講座もありますが、無料のものや受講費用等の補助が受けられる講座も紹介されているため、新たな学習を始めるきっかけ作りになります。


まとめ

今回紹介してきたように、取り組むことでモチベーションの上昇や収入増につながることもあるなど、多くのメリットがあるリスキリング。デジタル技術の進展による将来的な労働市場の変化への備えにもつながります。

国や企業がリスキリング推進を活発化させている今こそ、リスキリング実施を検討してみてはいかがでしょうか。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。

出典
*1 日本経済新聞社「リスキリングとは 成長産業への移動促す」
*2 リクルートワークス研究所「リスキリングとは」p.6, p.12
*3 文部科学省「大学等がリカレント教育に取り組む意義と推進に向けた方向性」p.2
*4 東北活性化研究センター「東北圏企業におけるリスキリング推進に関する実態調査」p.23, p.24, p.25, p.26, p.28, p.29
*5 三菱総合研究所「大ミスマッチ時代を乗り超える人材戦略 第2回 人材需給の定量試算:技術シナリオ分析が示す職の大ミスマッチ時代」
*6 日本政策金融公庫「アンケートと事例にみる中小製造業のリスキリングの実態」p.5, p.11, p.12, p.13
*7 パーソルイノベーション「【2023年3月版】『リスキリング』のリアルと展望」p.3, p.11
*8 パーソルキャリア「<副業者のリスキリング実態調査>副業年収300万円以上稼ぐ副業者の約6割が『リスキリング』を実践。~今話題の『リスキリング』。副業年収によって取り組みに差が生まれていることが明らかに~」
*9 経済産業省「リスキリング関連の主な施策 一覧 (R7.1.15時点)」
*10 厚生労働省「新規事業展開やDX推進等の人材育成に『人材開発支援助成金』が活用できます」p.1
*11 経済産業省「〈転職を実現し、継続就業すれば、最大56万円の補助〉」
*12 経済産業省「デジタル人材の育成」

関連コラム
もっとみる >
scroll-back-btn