
東京証券取引所は、投資家が中長期的な視点で企業を応援できるよう、特定のテーマに関連する企業を選定・公表しています。株式投資で資産形成に取り組むなら、東証のテーマ銘柄は投資先選びの参考になるかもしれません。
本コラムでは、東証が設定する各テーマの概要や銘柄選定のプロセス、投資する際の注意点を解説します。
東京証券取引所では、特定のテーマを設定し、そのテーマについて積極的に取り組む上場企業を選定・紹介しています。
個人投資家に株式投資を考えるきっかけや関心材料を提供したり、上場企業の取り組みを支援したりすることが目的です。*1
株式投資では、特定のテーマや指標をベースに投資先を選ぶ「テーマ投資」という手法があります。
2025年10月末現在、東京証券取引所には3,900社を超える企業が上場しています。*2
個人投資家が、これだけ多くの企業から投資先を選ぶのは簡単ではないでしょう。関心のあるテーマに関連する企業に注目することで、投資先を探しやすくなります。
東証が設定・公表しているテーマ銘柄は以下の通りです。*3
次の見出しから、各テーマ銘柄の概要や選定プロセスなどを確認していきましょう。
なでしこ銘柄とは、女性活躍推進に優れた上場企業です。2012年度から、女性が働き続けるための環境整備を含め、女性の活用を積極的に進める企業を「なでしこ銘柄」として紹介しています。*4
中長期の企業価値向上が期待できる銘柄として紹介することで、企業への投資を促進し、各社の取り組みを加速化していくことが目的です。
2023年度からは、「共働き・共育てを可能にする性別を問わない両立支援」に関する取り組みが特に優れた企業を「Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業」として選定しています。
令和6年度はなでしこ銘柄が23社、Nextなでしこ 共働き・共育て支援企業が16社選定されました。*1
選定プロセスは以下の通りです。
出典)日本取引所グループ「上場会社の取組み支援」
応募企業のスクリーニングを行って審査対象企業を選出し、キャリア形成支援の進捗状況や共働き・共育ての進捗状況などに関する回答内容をスコアリングしたうえで評価・選定しています。
以下は、令和6年度なでしこ銘柄選定企業の株価指数平均とTOPIX(東証株価指数)を比較したものです。
出典)経済産業省「令和6年度「なでしこ銘柄」レポートP10」
平成29年頃から、なでしこ銘柄のほうが株価は高い傾向がみられます。なでしこ銘柄は、中長期でTOPIXを上回るパフォーマンスを残しています。*5
健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。健康経営は従業員の活力や生産性の向上などをもたらすため、結果として株価や企業業績の向上につながると期待されています。*6
東証と経済産業省は、2014年度から健康経営に積極的に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として毎年紹介しています。*1
2025年度は、29業種から53社が健康経営銘柄に選定されました。*7
選定プロセスは以下の通りです。
出典)日本取引所グループ「上場会社の取組み支援」
まず「令和6年度健康経営度調査」の回答結果をもとに、健康経営に優れた企業を選出します。選出した企業を対象にROE(自己資本利益率)に基づくスクリーニングを行い、社外への開示状況や投資家との対話状況についても評価したうえで選定しています。
以下は、健康経営銘柄2021選定企業の平均株価とTOPIXの推移を10年間(2011年9月~2021年9月)で比較したものです。
出典)経済産業省「健康経営の推進 P4」
健康経営銘柄の平均株価は、TOPIXを上回るかたちで推移していることがわかります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用してビジネスモデル等を抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげていくものです。
たとえば、「在庫情報システムによる在庫・発注管理に切り替え、蓄積されたデータを販路拡大につなげる」といった取り組みが挙げられます。*8
DX銘柄は、企業価値の向上につながるDXの推進に取り組み、デジタル活用の実績に優れた上場企業を選定・紹介するものです。
東証と経済産業省が2015年から選定しています。国内企業の戦略的IT利活用を促進することが主な目的です。*9
2025年度は31社がDX銘柄に、そのうちDXの取り組みが特に優れた企業2社は「DXグランプリ企業2025」に選定されました。*10
選定プロセスは以下のとおりです。
出典)経済産業省「DX銘柄2025 P4」
DX認定を取得している企業を選定対象とし、まずは一次審査としてアンケート調査の選択式項目やROE・PBR(株価純資産倍率)などの財務指標によるスコアリングで候補企業を選出します。その候補企業について二次審査を行い、業種ごとに優れた企業を「DX銘柄2025」として選定しています。*11
DX認定とは、経営者に求められる対応を経済産業省が定めた「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業を国が認定する制度です。*12
また、DX銘柄とは別に、企業価値貢献において注目される取り組みを実施している企業を「DX注目企業2025」として19社選定しています。
SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは、社会と企業の持続可能性を両立させるために必要な事業変革を行い、持続的な企業価値向上を図るための取り組みです。*1
一例として、長期的な視点で、気候変動や人権などの社会的課題の解決を企業価値の向上につなげていく経営スタイルが挙げられます。*13
東証と経済産業省は、2024年度からSXを通じて持続的な成長や企業価値の向上に取り組む先進的企業をSX銘柄として選定しています。
2025年度は13社がSX銘柄に選定されました。*14
選定プロセスは以下の通りです。
出典)日本取引所グループ「上場会社の取組み支援」
応募企業を対象に、評価委員会がアンケートの選択式項目や記述式項目について審査を行ったうえで、PBR1倍以上の企業の中から選定しています。「PBR1倍以上」が必須要件となっているのは、中長期的に株主資本コストを上回るリターンを創出できると考えられるためです。*1
PBR1倍割れは、株価が純資産を下回っている状態です。つまり、企業の成長性に対する市場評価や投資家の期待が低いことを示しています。*15
テーマ銘柄に投資する際は、リスクを軽減するために分散投資を心がけるとよいでしょう。
分散投資とは、投資する資産や地域、業種、投資タイミングなどを複数に分けて投資する手法です。値動きの異なる資産・銘柄に分けて投資することで、価格変動リスクを抑える効果が期待できます。*16
東証は、中長期的な企業価値の向上に重点をおいてテーマ銘柄を選定しています。
しかし、複数の企業に投資を行っても、特定のテーマや業種に偏っていると分散の効果を得にくくなる可能性があります。
上記で紹介したテーマ銘柄への投資を検討する際は、テーマだけでなく業種や投資タイミングを分散することが大切です。
東証は、上場企業の取り組みを支援する観点からテーマ銘柄を選定・紹介しています。
中長期的な企業価値の向上を重視しているため、個人の資産形成に活用できるかもしれません。投資銘柄を探す際は、東証のテーマ銘柄に注目してみてはいかがでしょうか。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。
出典
*1 日本取引所グループ「上場会社の取組み支援」
*2 日本取引所グループ「上場会社数・上場株式数」
*3 日本取引所グループ「テーマ銘柄の選定」
*4 経済産業省「女性活躍に優れた上場企業を選定「なでしこ銘柄」」
*5 経済産業省「令和6年度「なでしこ銘柄」レポートP10」
*6 経済産業省「健康経営」
*7 経済産業省「「健康経営銘柄2025」に53社を選定しました」
*8 経済産業省「DX支援ガイダンス 概要版 P4」
*9 経済産業省「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」
*10 経済産業省「「DX銘柄2025」「DX注目企業2025」「DXプラチナ企業2025-2027」を選定しました)」
*11 経済産業省「DX銘柄2025 P4」
*12 経済産業省「DX認定制度(情報処理の促進に関する法律第二十八条に基づく認定制度)」
*13 経済産業省「SX銘柄2025 P5」
*14 経済産業省「「SX銘柄2025」「SX注目企業2025」を選定しました」
*15 三菱UFJ銀行「PBR(株価純資産倍率)とは?PERとの違いは?計算式や目安、1倍割れなどを解説」
*16 三菱UFJ銀行「分散投資とは?どんなメリットがある?どんな商品が良い?」
