株価指数は、株式市場全体の動きを把握するうえで重要な指標です。日本では日経平均株価やTOPIXが代表的ですが、世界にもさまざまな株価指数が存在します。
株式や投資信託で資産形成に取り組むなら、株価指数について理解を深めておくことが大切です。
本コラムでは、株価指数の概要や国内外の主要な株価指数、資産運用での活用法について解説します。
株価指数とは、株式市場に上場している複数の銘柄の株価を一定の計算式で総合的に数値化したものです。
株式市場全体の値動きを表す指標であり、投資家が相場を把握するための「ものさし」といえます。*1
株式投資では、個別銘柄の値動きを把握する必要がありますが、同時に投資判断の目安として株式市場全体の動きを確認することも重要です。*2
個別銘柄の株価はその企業の業績や将来性だけでなく、株式市場全体の動向にも左右される傾向にあるからです。
日本の代表的な株価指数には、日経平均株価とTOPIX(東証株価指数)があります。
経済ニュースなどで値動きが毎日報道されていることから、日本経済にとって重要な指標であることがわかります。
ベンチマークとは、運用実績を評価・測定するための基準となる指標です。
株価指数は、主に投資信託のベンチマークとして活用されます。
国内株式を投資対象とする場合、日経平均株価やTOPIXがベンチマークとしてよく利用されます。*3
たとえば、1年間でA投資信託は130%上昇、B投資信託は150%上昇したとします。
どちらの投資信託も好成績を残しているように見えますが、TOPIXの上昇が140%だった場合、A投資信託は株式市場の平均を下回っています。
一方、B投資信託は株式市場の平均を上回っていると判断できます。*4
投資信託の運用成績を評価するときは、ベンチマークに対して基準価額がどのように推移しているかを確認することが大切です。
株価指数の算出方法は、「株価平均型」と「時価総額加重型」の2種類です。
たとえば、日経平均株価は株価平均型、TOPIXは時価総額加重型に該当します。*5
株価平均型の計算式は「構成銘柄の株価の合計÷一定の数」です。構成銘柄の個々の株価を合計し、それを一定の数で割ることで平均株価を計算します。
一方、時価総額加重型の計算式は「構成銘柄の時価総額の合計÷ある一定時点の時価総額」です。過去の一定時点と比較して、時価総額がどれくらい増減したかを表します。
株価平均型は1株あたりの株価が高い銘柄、時価総額加重型は時価総額の大きい銘柄の影響を受けやすいのが特徴です。
現在、世界の主要株価指数の多くは時価総額加重型を採用しています。*6
日経平均株価とTOPIXでは次のような違いがあります。
出典)なるほど!東証経済教室「2.株価変動要因」をもとに筆者作成
日経平均株価は、日本経済新聞社が東証プライム市場を代表する225銘柄を選定し、株価指数を算出したものです。「日経225」と呼ばれることもあります。*1
225銘柄の構成は、業種や流動性のバランスを考慮して年1回見直されます。また、構成銘柄が上場廃止になった場合など、臨時で入れ替えが行われるケースもあります。
TOPIX(Tokyo Stock Price Index)は、主に東証プライム市場に上場する幅広い銘柄が対象です。日経平均株価に比べて、株式市場全体の動きが反映されやすい傾向にあります。
以前は東証一部上場の全銘柄が対象でしたが、2022年4月の市場区分の再編に伴い、TOPIXの構成銘柄の見直しが行われています。
具体的には、流通株式時価総額が100億円未満の銘柄のウエイトを段階的に低減しました。
その結果、2022年4月時点で約2,200銘柄だったTOPIXの構成銘柄数は、2025年1月末時点では約1,700銘柄となりました。
今後も定期的な構成銘柄の入れ替えなどが予定されています。*7
世界にはさまざまな市場があり、それぞれの市場の動向を示す株価指数が存在します。ここでは、世界の主要な株価指数を紹介します。
NYダウは、米国株式市場の主要な株価指数です。
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出・公表しており、米国を代表する30銘柄で構成されています。正式名称に工業株という言葉がありますが、実際には幅広い業種から銘柄が選定されています。*8
NYダウは株価平均型の株価指数であるため、株価が高い銘柄に値動きが左右されやすい点に注意が必要です。
S&P500も、米国の代表的な株価指数です。
NYダウと同じく、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出・公表しています。時価総額加重型の株価指数で、ニューヨーク証券取引所やナスダックに上場する企業から選ばれた500銘柄で構成されています。*1
NYダウよりも幅広い銘柄で構成されているため、米国株式市場全体の値動きを把握するのに適しているでしょう。
ナスダックは、米国のベンチャー企業向けの株式市場です。ベンチャー企業といっても時価総額がかなり大きく、世界を代表する企業が上場しています。*9
ナスダック総合指数は、ナスダックに上場するすべての銘柄が対象です。
時価総額加重型の株価指数であり、1971年2月5日の値を100として算出しています。もともとは中小型銘柄が中心でしたが、大企業となった銘柄も残っているため、時価総額は年々拡大しています。*1
FTSE100とは、英国の代表的な株価指数です。ロンドン証券取引所に上場する、時価総額の大きい100銘柄が対象です。
1983年12月31日の株価を基準(1,000ポイント)として、時価総額加重型で算出されています。
MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスとは、米MSCI社が算出・公表している株価指数です。「全世界株指数」とも呼ばれます。*10
47ヵ国・地域の約2,800の大型株・中型株で構成されており、世界の時価総額全体の約85%をカバーしています。
国・地域別の構成比率は米国が65%を占めており、日本が5%、英国が3%です(2024年6月末時点)。
資産運用では、株価指数との連動を目指して運用されるインデックスファンド(投資信託)があります。
投資先は日経平均株価やTOPIXをはじめ、S&P500、全世界株指数などさまざまです。*1
インデックスファンドは対象指数との連動を目指して運用されるため、値動きがわかりやすいのが特徴です。
株価指数が上がればインデックスファンドの基準価額も上昇し、株価指数が下がれば基準価額も下落するというシンプルな仕組みになっています。
インデックスファンドは信託報酬などの運用コストが低く、分散投資によるリスク軽減が期待できるのもメリットです。
たとえば、日経平均株価に連動するインデックスファンドを1本購入すると、225銘柄全体に分散投資ができます。比較的少額から購入できるため、初心者の方でも始めやすいでしょう。
株価指数は、株式市場全体の値動きを表す指標です。株価指数の値動きに注目すると、株式市場の動向を把握しやすくなります。
株価指数を資産運用に活用したい場合は、値動きがわかりやすく、低コストで分散投資ができるインデックスファンドを検討しましょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。
出典
*1 三菱UFJ銀行「株価指数とは?初心者が知っておきたい種類や変動する要因をわかりやすく解説」
*2 日本取引所グループ「よくあるご質問(株価指数関連)Q1.株価指数とは何ですか。」
*3 投資信託協会「用語集 ベンチマーク」
*4 日本取引所グループ「よくあるご質問(株価指数関連)Q2.ベンチマークとは何ですか。」
*5 日本取引所グループ「よくあるご質問(株価指数関連)Q5.日経225は「株価平均型」ですが、「時価総額加重型」であるTOPIXと計算方法はどのような違いがあるのでしょうか。」
*6 東証マネ部「【JPX総研】銘柄が同じでも結果は変わる?! 日経平均株価とTOPIXの算出方法の違いを簡単解説」
*7 東証マネ部「【JPX総研】進化し続けるTOPIX」
*8 三菱UFJ銀行「NYダウとは?S&P500との違いや投資できる商品をわかりやすく解説」
*9 三菱UFJeスマート証券「米国市場のNASDAQ(ナスダック)とは」
*10 日本経済新聞「全世界株指数」