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仮想通貨のマイニングとはどういうもの?なぜ膨大な電力を消費するの?
仮想通貨のマイニングとはどういうもの?なぜ膨大な電力を消費するの?

仮想通貨のマイニングとはどういうもの?なぜ膨大な電力を消費するの?

2025/10/23に公開
提供元:清水沙矢香

現在、AIの計算量の急増で世界の電力消費量が問題になっていますが、同じように仮想通貨のやりとりも大きな電力消費源として懸念されています。

仮想通貨には、いくつか特徴があります。
まず実物の硬貨や紙幣などの現物が存在せず、デジタル空間で記録・管理される資産だという点です。
そして各国の硬貨や通貨は日本銀行など国の中央銀行が価値を担保していますが、仮想通貨にはそのような機関がなく、参加している人の間の需給によって価値が変化するという特徴が挙げられます。

その中でも「マイニング」といった作業で収益を得ている人がいます。

仮想通貨のしくみと「マイニング」、そして電力問題について解説していきます。


仮想通貨の基盤「ブロックチェーン」

通常、お金が誰かから誰かに渡る時、銀行などの第三者機関を通します。取引の信頼性はこの第三者機関によって担保されますし、取引履歴も第三者機関に保存されます。

一方で 仮想通貨の管理基盤になっている「ブロックチェーン」では、日銀や銀行などの中央・仲介機関は存在しません。


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従来の通貨の管理システムと仮想通貨のブロックチェーンの違い

出典)KDDI「ブロックチェーンとは?~仮想通貨 (ビットコイン) との関係性とあわせてわかりやすく解説~」


銀行などを介した取引とは違い、ブロックチェーン上での仮想通貨のやりとりでは、参加している人全員が見られる「帳簿」があり、誰が誰にいくら送金したということを全員が確認できます。
参加者全員の監視の目が価値を担保しているとも言えるでしょう。


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ブロックチェーンの概要

出典)NTTドコモ「ブロックチェーンとは」


そして 取引を記録したデータブロックはチェーン状に連なっており、仮に改竄しようとしても前後のブロックとの整合性を取らなければならず、簡単なことではありません。

仮想通貨はこのシステムによって安全性を担保しています。


法定通貨として導入する国も

仮想通貨、例えばビットコインなどは現実世界の決済にも利用できます。

この性質をいかして、 中米のエルサルバドルは2021年に世界で初めて、ビットコインを国の法定通貨に導入しました。*1
これには理由があります。

エルサルバドルではアメリカなど海外の家族からの送金がGDPの2割以上を占めているのです。そこで送金費用を抑えられるビットコインに目をつけたわけです。
これにより、海外からの投資を呼び込み、経済成長を促進する狙いもありました。

また 2022年には、中央アフリカ共和国が仮想通貨ビットコインを法定通貨にすると発表しました。*2
海外からの送金を伴うグローバルビジネスを行う人には強力な代替手段になり得ます。
かつ中央アフリカを含めた近隣6カ国では中部アフリカ諸国中央銀行(BEAC)の発行するCFAフランを使用していますが、この通貨はユーロに固定相場制で紐づき、中央銀行の外貨準備金の50%をフランス国庫に預ける必要があります。
その結果、アフリカの経済発展が妨げられていると指摘されてきました。

中央アフリカのビットコイン導入には上記のような背景があると見られますが、大きな課題があります。

仮想通貨を使ったモノやサービスに欠かせない信頼性が高い高速なインターネットと、コンピューターやスマートフォンへの広範なアクセス網が構築されていないのです。

よってIMF(世界通貨基金)は警戒を発しています。アフリカでは他に、ナイジェリアの中央銀行が2021年に地域の銀行が暗号通貨を扱うことを禁止し、独自のデジタル通貨であるeNairaを立ち上げました。
南アフリカの規制当局は、暗号通貨やその他のブロックチェーン技術を規制する方法を模索しています。
また、タンザニアの中央銀行は昨年、暗号通貨に備えるための大統領指令に取り組んでいると述べています(2022年4月)。*3


仮想通貨の「マイニング」とは

さてこのように様々な方面から注目される仮想通貨ですが、 仮想通貨ネットワークの世界には「マイニング」という作業を行って報酬を得ている人がいます。

先ほどもご紹介した通り、ビットコインをはじめとする仮想通貨はブロックチェーンという技術を安全性の担保にしていますが、 ブロックが繋ぎ続けられなければシステムは維持されません。


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マイニングのしくみ

出典)コインチェック「暗号資産(仮想通貨)のマイニングとは?仕組みと実践方法を初心者向けに解説!」


そこで、 それまでのブロックに載っていない最新の取引を見つけ出し、新しいブロックを繋ぐ必要があります。これを「マイニング」といい、 マイニング成功者には報酬が支払われるしくみになっています。

ビットコインの場合、今は約10分でひとつのブロックが生成されます。これの次の取引を見つけ出しブロックを生成するには、かなり高速かつ膨大な計算量が求められます。家庭用の一般的なパソコンでできるものではなく、 専用のコンピューター設備を持つ事業者がマイニング報酬をほぼ独占するようになりました。*4

マイニングはひとつのビジネスになりつつありますが、落とし穴もあります。電力です。


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Bitcoinの電力消費量

出典)日本総研「ブロックチェーンと生成AIにおける電力消費の現状」


マイニングを行うビットコインでは、マイニングも含めて 電力消費量が右肩上がりとなっているのです。


電力爆食でマイニングを禁止する国も

2025年5月、クウェートでは仮想通貨のマイニング業者の一斉摘発に乗り出しました。*5
当局は、 マイニングが停電を引き起こす電力危機の主因と見ており、「電力を違法に搾取している。停電を引き起こす可能性があり、一般住宅や商業・サービス地域に影響するほか、公共安全にも直接的に影響する」と指摘しています。

この摘発が行われた最南端アルワフラの住宅では約100棟がマイニングに利用されており、一部の電力消費は最大で通常の20倍に達したといいます。 摘発後、同地域の電力消費は55%減少しました。

また、 中国の内モンゴル自治区政府は2021年、同自治区内での仮想通貨のマイニング事業をすべて2021年4月末までに終了させ、新規のプロジェクトも禁止すると発表しています。*6
石炭資源が豊富な新疆ウイグル自治区や内モンゴル自治区の電力に中国のマイニング業者が目をつけ、大量に電力を消費したことが原因と考えられます。

実際、日本総研が制作した資料では、 ビットコインなどの運用にかかる電力量は、GAFAMといった大手IT企業1社のデータセンターでの電力消費量の4〜5倍にあたると指摘されています。


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日本全体・主要IT企業・ブロックチェーンの電力消費量

出典)日本総研「ブロックチェーンと生成AIにおける電力消費の現状」


GoogleやMicrosoft、Metaの消費電力とBitcoinの消費電力を比べてみると一目瞭然でしょう。


持続可能な経済圏になるか

ビル・ゲイツ氏は過去に新聞のインタビューで、 「ビットコインは、1トランザクション(=一連の処理のかたまり)ごとの電力消費量が、人類が知っている他のどの方法よりも多い」と語っています。*7

またオランダ中央銀行のデータサイエンティストのアレックス・デ・ヴリース氏は、ビットコインが生み出すCO2が、1トランザクションあたり300kgと試算しました。
これはVisaカードの約75万回分の決済が生み出すCO2の量に匹敵するといいます。

仮想通貨は上記にもご紹介した通り、有効な場所ではその特徴を大いに発揮してくれます。

しかしこうした環境問題と隣り合わせであることは知っておきたいものです。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。

出典
*1 ダイヤモンド・オンライン「なぜエルサルバドルはビットコインを法定通貨として採用したのか?」
*2 Reuters「Bitcoin adoption by Central African Republic baffles cryptoverse」
*3 現代アフリカ地域研究センター「中央アフリカのビットコイン法定通貨化」
*4 コインチェック「暗号資産(仮想通貨)のマイニングとは?仕組みと実践方法を初心者向けに解説!」
*5 ロイター通信「クウェート、暗号資産マイニング業者を摘発 電力危機の要因」
*6 東洋経済オンライン「中国・内モンゴル、仮想通貨「マイニング」を禁止」
*7 Forbes Japanビットコインの電力消費量が「地球に危険なレベル」である理由」


清水 沙矢香
しみず さやか

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアや経済誌に寄稿中。

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