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預金金利の動向は? 日銀の利上げによる影響を解説
預金金利の動向は? 日銀の利上げによる影響を解説

預金金利の動向は? 日銀の利上げによる影響を解説

2025/01/21に公開
提供元:Money Canvas

日銀は、2024年7月31日までに開催された金融政策決定会合で、政策金利を0.25%程度に引き上げる追加の利上げを決定しました。*1

本決定を受けて、大手銀行は普通預金の金利の引き上げを相次いで発表しています。

金利が上がることで、企業や個人は借りたお金に対する支払利息がふえるため、金融機関から資金を借りにくくなってしまいます。
一方で、預貯金などの受取利息がふえる可能性があるため、預貯金をしている人にとってはメリットがあります。*2

そこで本コラムでは、金利の仕組みや、政策金利引き上げに伴う預金金利の引き上げに関する最新動向などについて解説します。


金利とは

金利は、借りた金額に対してどのくらいの利息(利子)が発生するのかを表した割合です。

また、利息とは、お金の貸し借りにおいて、借りた人が貸した人へ支払う対価(レンタル料)を指しています。


金利の仕組み

お金を借りた際には、通常、その元金と利息を支払う必要があります。たとえば、年10%の金利で10,000円を借りた場合、1年後の返済額は元金10,000円と元金の年10%にあたる1,000円を合計した11,000円となります。


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出典)三菱UFJ銀行「金利とは?利息の計算方法など仕組みや注意点をわかりやすく解説!」


金利が高ければ高いほど、返済総額は多くなります。たとえば、100万円を借りた場合、5年後の返済総額は、金利が年5%で128万円、年10%で201万円、年15%で249万円となります。

このように、同じ借入金額でも、適用される金利によって返済総額が大きく異なるため、金利を正しく理解することが大切です。


身近な金利

私たちの身の回りには、借入や預金、債券投資など、さまざまな場面で金利が設定されています。

たとえば、住宅ローンやカードローン、教育ローンなどには、それぞれ金利が設定されているため、その割合に応じた利息を支払う必要があります。

一方で、普通預金や定期預金などは、銀行にお金を貸しているといえるため、銀行にお金を預けることで、設定された金利に応じた利息を受け取ることができます。

また、企業や国が発行した債券にも金利が設定されているため、債券を購入した人は利息を受け取ることが可能です。


貸出金利、預金金利とは

銀行の主な業務の一つとして、お金を借りたいと思っている企業や個人へのお金の貸出が挙げられます。
お金を借りた企業や個人は、返済時の利息を加えて支払う必要があり、この利息の比率を貸出金利と言います。

一方で、銀行は企業や個人に貸し出すためのお金を調達する必要があり、お金を調達する手段の一つが、企業や個人による銀行への預金です。
預金金利とは、預金者が銀行にお金を預けた際に発生する、預けたお金に対する利息の比率を指します。*3


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出典) 金融庁「わたしたちの生活と金融の働き」


銀行も経営を維持していくために利益を得る必要があります。そのため、利ざやをとれるよう預金金利は貸出金利を下回るように設定しています。

なお、金融機関ごとに設定している貸出金利や預金金利などは、日銀の金融政策に影響を受けています。


日銀の金融政策と政策金利とは?

金融政策とは、物価安定を目的として、中央銀行(日本の場合、日銀)が金融市場に出回るお金の量を調節する政策のことです。
具体的には、政策金利を上げたり下げたり、国債や手形を売買したりなどすることで、市場に出回るお金の量をコントロールします。


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出典)金融庁「わたしたちの生活と金融の働き」


日銀は、金融市場に出回るお金の量を調節するため、政策金利と呼ばれる金利を調整しています。
政策金利とは、中央銀行が設定する短期金利(誘導目標金利)のことです。*4
政策金利は、銀行が中央銀行から資金を借りる際の金利や、銀行同士が短期的に資金を貸し借りする際の金利に影響を与えます。

政策金利が上がると、金融機関は中央銀行からより高い金利で資金を調達しなければならないため、企業や個人へお金を貸し出す際の貸出金利を引き上げるようになります。

反対に、政策金利が下がると、金融機関は低金利で資金を調達できるため、貸出金利を引き下げるようになります。


最近の政策金利の動向

日銀は2024年7月30日から31日に行われた金融政策決定会合で、政策金利を0.25%程度に引き上げることを決定しました。

その理由は、輸入物価が上昇している情勢のなかで2%の物価目標の持続的・安定的な実現に向けて金融緩和の度合いを調整することが適切と判断したためです。

日銀の植田総裁は、今回の利上げについて、実質金利が低い水準における少しの調整のため、景気に大きなマイナスの影響を与えるということはないと発言しています。

また、10月30日から31日に行われた金融政策決定会合では、政策金利を据え置き、短期の市場金利を0.25%程度で推移するように促すとしました。*5

さらに、植田総裁は今後の利上げについて、アメリカ経済の先行きをめぐるリスクを念頭に慎重に判断していくとしています。


利上げによる企業や個人への影響

企業や個人にとって、利上げにはメリットとデメリットの両面があります。


利上げによるメリット

預貯金や個人向け国債などの債券の金利が上昇し、利息が多くもらえるようになるというメリットがあります。

実際、日銀が7月31日に追加利上げを決定したことを受けて、大手銀行は普通預金の金利を引き上げると発表しました。*6

このうち、三井住友銀行は8月6日から、三菱UFJ銀行とみずほ銀行は9月2日から普通預金の金利を年0.02%から5倍の年0.10%に引き上げました。
普通預金の金利引き上げは、同年3月のマイナス金利解除以来で、今後、他の金融機関にも波及する可能性があります。


利上げによるデメリット

ローン金利が上昇するため、お金を借りている企業や個人にとっては、支払利息がふえるというデメリットがあります。
さらに企業や個人が借入を控えることで資金の流動性が落ち、人々の購買意欲が低くなれば物価の下落につながるかもしれません。

企業にとっては減収につながるとともに新規借入を控えるようになり、企業の業績にも悪影響が出て株価が下落することもあります。*7

個人にとっては、金利上昇後に自動車ローンや教育ローンなどを借りると、上昇前に借りるよりも支払う利息がふえることになります。
とくに変動金利で住宅ローンを借り入れしている人は、金利上昇によって支払う利息が上昇するでしょう。

変動金利は、政策金利の影響を受けて金利が変動しますが、元利均等返済方式かつ変動金利での借入の場合には、多くの金融機関に5年ルールと125%ルールがあります。*8


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出典)三菱UFJ銀行「【2024年最新】住宅ローンの金利は今後どうなる?今後の金利上昇リスクを踏まえた住宅ローンの選び方」


5年ルールとは、返済額を5年ごとに見直す方式です。そのため、金利が変更になっても、次回の見直しまで返済額は変わりません。

125%ルールとは、金利上昇により5年ごとに返済額が大きくなる場合でも、新返済額は前回までの返済額の125%を限度とするルールのことです。

これらのルールは、金利上昇による返済額の急増を避けるための措置ではありますが、金利上昇によってふえた利息が減るわけではありません。
つまり、利息分だけで返済額を超えてしまった場合、超過分は未払利息として翌月以降に蓄積され、後日支払う必要があるのです。

なお、日銀は、変動金利の住宅ローンについて、5年ルールで返済額が見直されるため、賃金上昇が続くという見通しにおいては個人の負担は軽減されるだろうとしています。*1


まとめ

日銀の利上げは、預金金利の上昇により受取利息がふえるというメリットがある一方で、さまざまなデメリットもあります。

現在、物価安定目標の実現に向けて、さらなる利上げの可能性についても議論されていますが、実現すればその影響は預金金利やローン金利に波及するかもしれません。*9

今回のコラムをきっかけに、今後の日銀の動向に注視し、自身の生活にどのような影響をおよぼすのか考えてみてはいかがでしょうか。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。

出典
*1 NHK「日銀 追加利上げ決定 政策金利0.25%程度に【総裁会見詳細も】」
*2 三菱UFJ銀行「金利とは?利息の計算方法など仕組みや注意点をわかりやすく解説!」
*3 金融庁「わたしたちの生活と金融の働き」p.11, p.12, p.13
*4 三菱UFJ銀行「政策金利」
*5 NHK「【詳しく】日銀 政策金利据え置き 総裁『米経済のリスク低下』」
*6 NHK「大手銀行 普通預金の金利 今の5倍に引き上げへ 追加利上げ受け」
*7 三菱UFJ銀行「利上げとはどのような政策?為替・株価・物価に与える影響とは?」
*8 三菱UFJ銀行「【2024年最新】住宅ローンの金利は今後どうなる?今後の金利上昇リスクを踏まえた住宅ローンの選び方」
*9 NHK「12月?1月?追加利上げへ 植田総裁メッセージは?【経済コラム】」

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