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日銀短観はなぜ注目される?業況判断DIの見方や株価・金利への影響を解説
日銀短観はなぜ注目される?業況判断DIの見方や株価・金利への影響を解説

日銀短観はなぜ注目される?業況判断DIの見方や株価・金利への影響を解説

2024/07/11に公開
提供元:大西勝士

日銀短観は、個人投資家からの注目度が高い経済指標の一つです。今後の景気動向を判断する材料となるため、発表されるたびに経済ニュースで取り上げられます。

特に業況判断DIは株式市場への影響力が強いといわれ、株式や投資信託で資産形成を行うなら定期的に確認しておきたい指標です。*1

本コラムでは、日銀短観が注目される理由や業況判断DIの見方、株価・金利への影響などを解説します。


日銀短観とは

日銀短観(全国企業短期経済観測調査)とは、日本銀行が実施している統計調査です。*2

全国の約1万社の企業を対象に、四半期ごとに実施しています。
企業動向を把握し、日銀の金融政策の適切な運営に役立てることが目的です。

「企業が自社の現状や先行きをどうみているか」をはじめ、売上高等の事業計画の実績・予測値など、企業活動全般に関する項目について調査しています。

日銀短観は国内外で利用されており、海外では「TANKAN」として広く知られています。


日銀短観が注目される理由

日銀短観が注目されるのは、調査対象企業が約1万社と多く、速報性があるからです。*3

公表までの期間も短いため、経営者の景況感を把握しやすい特徴があります。
また、日銀が金融政策を決定する判断材料になることも、国内外から注目を集める理由だと考えられます。


調査結果の公表タイミング

日銀は年4回(3、6、9、12月)調査を行い、原則として4、7、10月初旬と12月中旬に日銀短観の結果を公表しています。

公表時刻は午前8時50分で統一されています。
日銀短観の公表結果は「まず日本の市場(金融・為替・株式市場)で消化されることが望ましい」との考え方に基づき、市場が開く午前9時の直前としています。*4

また、公表日程は6、12月末頃に、それぞれ先行き12ヵ月間の予定が日銀のホームページで公表されています。


日銀短観の調査項目・公表内容

日銀短観の主な調査項目は以下の通りです。*5

  • 業況判断
  • 需給・在庫・価格判断
  • 売上・収益計画
  • 設備投資計画等
  • 雇用
  • 企業金融
  • 企業の物価見通し

調査結果の公表は、31の業種(製造業17業種、非製造業14業種)および3つの規模(大企業、中堅企業、中小企業)に分類して行われます。*6
企業規模の区分は以下の通りです。


区分 資本金
大企業 10億円以上
中堅企業 1億円以上10億円未満
中小企業 2,000万円以上1億円未満

出所)日本銀行「「短観」(全国企業短期経済観測調査)のFAQ(1-4. 「短観」の調査対象を教えてください。)」をもとに筆者作成

全国の企業全体の景況感や業績、設備投資などの状況はもちろん、業種や企業規模ごとの状況を把握することも可能です。


日銀短観の「業況判断DI」は特に注目度が高い

日銀短観の調査項目のなかでも、特に注目度が高いのが「業況判断DI」です。
ここでは、業況判断DIの概要や見方、株価・金利への影響などを確認していきましょう。


業況判断DIとは

業況判断DIとはDiffusion Indexの略で、企業経営者の景況感やその変化がわかる指標です。

回答企業は自社の収益を中心とした業況の判断について、「良い」「さほど良くない」「悪い」の3つから回答します。
業況判断DIは、「良い」と回答した企業の割合から、「悪い」と回答した企業の割合を差し引いて算出されます。

たとえば、「良い」の割合が21%、「さほど良くない」が66%、「悪い」が13%の場合、業況判断DIは8ポイント(21%-13%)となります。*7


業況判断DIの見方

業況判断DIの結果がプラスなら、業況が「良い」と考える経営者のほうが多い状態です。
一方、結果がマイナスなら、業況が「悪い」と判断している経営者のほうが多いことを示しています。


業況判断DIは、アンケートをベースにして得られるデータです。
多くの企業活動は経営者の判断に基づいて行われるため、経営者が業況をどう判断しているかは、その後の企業活動に大きな影響を与えます。*8

基本的に大企業、中堅企業、中小企業で結果は異なりますが、特に景気や経済に大きな影響力を持つ大企業の業況判断DIは重要といえます。

また、単にプラスかマイナスかを見るだけでなく、前回からの変化率に注目することも大切です。
前回調査からポイントが増えていれば景況感は改善しており、ポイントが減っていれば景況感は悪化していると判断できます。


株価や金利への影響は?

業況判断DIは、回答期間から公表まで約1ヵ月と短く、経済指標の中でも速報性が高いのが特徴です。
景況感の先行きが「良い」と回答した経営者の割合が高ければ、株価が上昇するかもしれません。
逆に、「悪い」と回答した経営者の割合が高い場合は、株価が下落する可能性があります。


先述の通り、「公表結果はまず日本市場で消化されることが望ましい」との考え方に基づき、公表時刻を市場が開く直前の午前8時50分に統一していることからも、株価への影響が大きいことがわかります。

また、日銀短観は「全国の企業動向を的確に把握し、金融政策の適切な運営に資すること」を統計上の目的にしています。
日銀は景気や物価の安定を目的に政策金利の誘導目標を設定しているため、業況判断DIを含む日銀短観の結果は金利に影響を与えるといえます。*9


業況判断DIの推移

業況判断DIの推移は以下の通りです。


業況判断DIの推移

引用)三菱UFJリサーチ&コンサルティング「経済レポート 日銀短観(2024年3月調査)結果 P1」


直近の2024年3月調査の結果をみると、大企業製造業の業況判断DI(最近)は11で、前回から2ポイント悪化しました。景況感の悪化は4四半期ぶりです。

大企業非製造業は34で、前回から2ポイント改善しました。景況感の改善は8四半期連続で、水準も歴史的な高さにあります。

業況判断DI(先行き)については、大企業製造業が10(1ポイント悪化)、大企業製造業が27(7ポイント悪化)で、いずれも慎重な見通しとなっています。


まとめ

日銀短観は、日銀が景気の現状と先行きについて、約1万社の企業を対象に行う調査です。
高い回答率と速報性があるため、国内外から注目されています。投資信託などで資産形成に取り組むなら、今後の景気動向を把握するために、年4回公表される調査結果を確認しておきましょう。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。

出典
*1三菱UFJモルガン・スタンレー証券「解説!知っておきたい経済指標」
*2日本銀行「Q「短観」とは何ですか?」
*3東証マネ部「日銀短観とは年に4回日銀が発表する調査結果!注目される理由も解説」
*4日本銀行「「短観」(全国企業短期経済観測調査)のFAQ(5-5. 「短観」の公表時刻は何故午前8時50分なのですか。)」
*5日本銀行「短観(2024年3月調査)P1-7」
*6日本銀行「「短観」(全国企業短期経済観測調査)のFAQ(1-4. 「短観」の調査対象を教えてください。)」
*7 auカブコム証券「株式投資に必要な日銀短観の見方と注意点とは?」
*8知るぽると「経済データの基本的な読み方(9.日銀短観・業況判断DI)」
*9三菱UFJ銀行「政策金利」



大西 勝士
おおにし かつし

金融ライター(日本FP協会 AFP認定者)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで記事を執筆中。得意領域は投資信託、不動産、税務。

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