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【弁護士が解説】相続税はいくらから?預貯金にも税金はかかるの?
【弁護士が解説】相続税はいくらから?預貯金にも税金はかかるの?

【弁護士が解説】相続税はいくらから?預貯金にも税金はかかるの?

2025/05/29に公開
提供元:阿部由羅

亡くなった家族から相続する財産が一定金額を超える場合は、相続税がかかります。銀行預金も相続税の対象です。

家族が亡くなって相続税がかかりそうな場合は、相続税申告について税理士に相談しましょう。また、自分が多額の財産を持っている場合には、将来の相続に備えた対策を検討しましょう。

本記事では、遺産などの額がいくらから相続税がかかるのかなどを解説します。



相続税はいくらからかかる?

相続などによって取得した財産の総額が「基礎控除額」を超えると、相続税がかかります。


基礎控除額の計算方法

基礎控除額は、以下の式によって計算します。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数


※法定相続人の数に含めることができる養子の数は、以下のとおりです。
 実子がいる場合:1人まで
 実子がいない場合:2人まで

※相続欠格または相続廃除によって相続権を失った者は、法定相続人の数に含めません。
※相続放棄をした者は、法定相続人の数に含めます。


たとえば、法定相続人が亡くなった人(=被相続人)の配偶者と子2人の計3人なら、基礎控除額は4,800万円です。
この場合、相続などによって取得した財産の総額が4,800万円を超えると、超えた部分に対して相続税が課されます。


法定相続人になる人

法定相続人になるのは、被相続人の配偶者と、以下の順位に従った最上位者です。


第1順位:被相続人の子

※被相続人の子が死亡・相続欠格・相続廃除によって相続権を失った場合は、さらにその子(=被相続人の孫)が相続人となります。
※被相続人のひ孫以降による再代襲相続も認められます。


第2順位:被相続人の直系尊属(父母、祖父母など)

※親等が異なる直系尊属がいる場合は、被相続人との親等が最も近い人だけが相続人となります。


第3順位:被相続人の兄弟姉妹

※被相続人の兄弟姉妹が死亡・相続欠格・相続廃除によって相続権を失った場合は、その子(=被相続人の甥・姪)が相続人となります。


誰が法定相続人であるかは、戸籍謄本などを取り寄せて確認します。漏れなく法定相続人をリストアップしたうえで、相続税の基礎控除額がいくらになるかを計算しましょう。


相続税が課される財産の範囲は?

相続税は、主に亡くなった家族が所有していた財産(=相続財産)に対して課されます。預貯金も相続税の課税対象です。
また、相続財産以外の財産の中にも、相続税が課されるものがある点にご注意ください。


相続税がかかる財産の範囲

相続税が課されるのは、主に以下の財産です。相続財産以外の財産も、きちんと調べたうえで計上しましょう。*1


(1)相続財産
被相続人が亡くなった時点において所有していた財産です。
なお、亡くなった時点で借金などの債務を負っていた場合は、その額を差し引きます。


(2)みなし相続財産
被相続人が亡くなったことをきっかけに取得される財産の一部は、みなし相続財産として相続税が課されます。
(例)

  • 死亡退職金
  • 生命保険の死亡保険金のうち、被相続人が保険料を負担していたもの
  • 贈与税の非課税特例が適用されていた一括贈与のうち、まだ使っていないもの
  • 特別縁故者が受けた財産分与
  • 特別寄与料
  • 著しく低額の対価による財産の譲渡や、債務免除などによる利益
  • 遺言による信託の受益権
  • など

(3)相続開始前の以下の期間に受けた贈与
(a)2026年12月31日までに被相続人が亡くなった場合
死亡日から遡って3年前の日から、死亡日まで

(b)2027年1月1日から2030年12月31日までの間に被相続人が亡くなった場合
2024年1月1日から、死亡日まで

(c)2031年1月1日以降に被相続人が亡くなった場合
死亡日から遡って7年前の日から、死亡日まで


(4)相続時精算課税制度*2の適用を受けた贈与
「相続時精算課税」の適用を受けている贈与には、一定額まで贈与税が非課税となる一方で、相続発生時にまとめて相続税が課されます。


相続税がかかる財産の具体例|預貯金も課税対象

相続税は、たとえば以下の財産などに課されます。銀行に預けている預金も、相続税の課税対象です。

  • 預貯金
  • 有価証券(株式や投資信託など)
  • 不動産
  • 自動車
  • 美術品、骨董品
  • 貴金属類
  • など

次の項目で解説するように、相続税は課税対象財産の総額に対して課されます。「預貯金が○○円以上あれば相続税がかかる」というわけではありません。

相続税がかかるかどうかは、すべての課税対象財産をリストアップしたうえで、その総額と基礎控除額を比較して判断する必要があります。


相続税がかかる場合は、相続税申告が必要

課税対象財産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続税申告をする必要があります。


相続税の計算方法はかなり複雑

相続税申告に当たっては、税法のルールに従って各相続人の相続税額を計算し、その計算内容を反映した相続税申告書を作成しなければなりません。

相続税の計算方法の概要は以下のとおりですが、実際にはかなり複雑な計算が必要になります。

  • 課税対象財産を把握し、総額を計算する
  • 各相続人の相続税額を計算し、それを合計して総額を求める
  • 実際の相続分に応じて、各相続人に税額を割り振る
  • 控除や特例を適用し、最終的な相続税額を計算する

相続税の詳しい計算方法を知りたい方は、国税庁のウェブサイト*3をご参照ください。


相続税申告の期限は10か月以内

相続税申告の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。

申告期限までに遺産分割が完了した場合は、その内容に従って相続税申告を行います。

遺産分割が完了していない場合も、期限までに相続税申告をしなければなりません。
この場合は、暫定的に法定相続分によって申告を行い、後に更正の請求や修正申告によって税額を修正します。

期限までに相続税申告をしないと、本来の税額に加えて延滞税や加算税が課され、余分に税金を納めることになってしまいます。スケジュールを立てて、計画的に相続税申告を行いましょう。


申告漏れがあると追徴課税を受けることも|税理士に相談を

2023年に相続税の申告書が提出された件数は15万5,740人*4であるのに対して、同年度中に相続税の実地調査が行われた件数は8,556件*5でした。
調査対象は過年度(=すでに終了した年度)なので単純な比較はできませんが、おおむね5~6%程度の割合で税務調査が行われています。

2023年度に相続税の実地調査が行われた8,556件のうち、申告漏れ等が指摘された件数は7,200件で、84.2%もの高い割合に上ります。
税務調査で申告漏れを指摘されると、延滞税や加算税を含む追徴課税がなされ、多額の出費が発生してしまうので要注意です。

相続税申告は、税理士に依頼することができます。税額の計算や申告書の作成などを、期限内に正しく行ってもらえるので安心です。
亡くなった家族から多額の財産を相続して、相続税がかかりそうな場合は、早い段階で税理士に相談しましょう。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。


出典
*1 国税庁「No.4105 相続税がかかる財産」
*2 国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」
*3 国税庁「No.4152 相続税の計算」
*4 国税庁「令和5年分相続税の申告実績の概要」p1
*5 国税庁「令和5年事務年度における相続税の調査等の状況」p1


阿部 由羅
あべ ゆら

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

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