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暗号資産とは簡単にいうと何?税金や確定申告を含め弁護士が解説
暗号資産とは簡単にいうと何?税金や確定申告を含め弁護士が解説

暗号資産とは簡単にいうと何?税金や確定申告を含め弁護士が解説

2025/02/20に公開
提供元:阿部由羅

「仮想通貨」という名称で知られているビットコインなどは、現在の法律では「暗号資産」と呼ばれています。

暗号資産は近年大幅に値上がりするなど、投資対象として注目を集めています。しかし、一般的な資産とは異なるリスクやルールが存在するほか、投資詐欺の道具として暗号資産が用いられるケースもあるので要注意です。

本記事では、暗号資産に関する基礎知識を解説します。


暗号資産とは

「暗号資産」とは、インターネット上でやり取りできる財産的価値であって、以下の性質を持つものをいいます。


  • 不特定の者に対する代金の支払いなどに使用でき、かつ法定通貨(日本円や米ドルなど)と相互に交換できる
  • 電子的に記録され、移転できる
  • 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカードなど)ではない

当初は「仮想通貨」という名称で広まり、現在も「仮想通貨」として認識している方が多いかと思います。
「資金決済に関する法律」(資金決済法)によって仮想通貨に関する規制が設けられる際に、「暗号資産」と呼称を変えて、上記のように定義されました。


主な暗号資産の種類

主な暗号資産としては、以下の例が挙げられます。


  • ビットコイン(BTC)
  • イーサリアム(ETH)
  • リップル(XRP)
  • ビットコインキャッシュ(BCH)

など

上記のほかにも、暗号資産は数万種類存在すると言われています。


これまでの暗号資産相場の変遷

世界で初めて暗号資産として、2008年に「ビットコイン」が誕生しました。

当初ほとんど無価値に等しかったビットコインは、2009年に初の取引所が開設されて以降、少しずつ価値を高めていきました。

1BTC(ビットコインの単位)当たりの取引価格は、2013年には1,000円程度から9万円程度まで上昇し、2017年には10万円程度から最高240万円程度まで上昇するなど、短期間で大幅に高騰する局面が複数回見られました。
特に2017年には、ビットコイン以外の暗号資産の取引価値も大幅に高騰しました。

こうした状況が世間の目に留まり、暗号資産は主に投機的取引の対象として注目を集めるようになりました。

その後は、日本の暗号資産取引所のハッキング事件などをきっかけに低迷期へ入りましたが、2020年ごろから再び高騰を始めました。
2024年12月時点で1BTC当たり最高1,500万円を付けるなど、改めて暗号資産に対する社会的な注目が集まっている状況です。


暗号資産を取引する方法

日本で暗号資産を取引するためには、金融庁の「暗号資産交換業」の登録を受けている事業者(=暗号資産交換業者)が運営する取引所に口座を開設する必要があります。
暗号資産交換業者の一覧は、金融庁のウェブサイト「暗号資産交換業者登録一覧」で確認できます。*1

主な暗号資産取引所としては、以下の例が挙げられます。


  • bitFlyer
  • Coincheck
  • bitbank
  • SBI VCトレード
  • BITPOINT
  • GMOコイン

など

暗号資産取引所に開設した口座へ日本円などを入金すると、その残高を用いて暗号資産を購入することができます。
また、取引所を通じて保有する暗号資産を売却することも可能です。

なお、 暗号資産交換業の登録を受けることなく、日本国内の顧客に向けて暗号資産取引の媒介などを行うことは違法です。
無登録業者が運営する取引所では、口座の開設や暗号資産の取引を行わないようにしましょう。


暗号資産に投資することのリスク

暗号資産に投資することには、以下のようなリスクがあります。


  • 激しい相場変動により、多額の損失が発生するリスク
  • 取引所のハッキングなどにより、暗号資産が失われてしまうリスク
  • 詐欺業者に資金を持ち逃げされてしまうリスク

激しい相場変動により、多額の損失が発生するリスク

株式や投資信託など別の金融商品に比べて、暗号資産の取引相場は激しく変動する傾向にあります。

たとえばビットコインの価格は、2013年には約90倍、2017年には20倍以上と大幅に高騰したことがある一方で、2018年には約4分の1まで下落しています。
高騰した暗号資産を購入した後、取引相場が下落局面に入ると、 想定を上回る損失が発生するおそれがある点に注意が必要です。


取引所のハッキングなどにより、暗号資産が失われてしまうリスク

暗号資産取引所においては、過去に大規模なハッキング事件が発生しています。

2014年には、当時の最大規模のビットコイン取引所だった「マウントゴックス」がハッキングを受け、顧客資産の75万BTCと自社保有資産10万BTCが消失しました。
当時のレートでは、被害総額は約470億円に及びます。その後、マウントゴックス社は破産し、 被害に遭った顧客は資産の大部分を回収できずに終わりました。

また2018年には、日本の暗号資産取引所である「Coincheck」がハッキングに遭い、顧客資産である「NEM」という暗号資産5億2630万10XEM(NEMの通貨単位)が外部へ不正送金されました。
当時のレートでは、被害総額は約580億円に及びます。
被害顧客に対しては、取引所側が日本円で補償を行いました。しかし、ハッキング事件の影響を受けて暗号資産相場が大幅に下落していたため、結果的に多くの顧客が損失を被ることになりました。

これらのハッキング事件を受けて、金融庁の登録を受けている暗号資産交換業者の多くは、強固なセキュリティ体制を導入しています。
そのため、暗号資産のハッキングリスクは低くなっていると考えられますが、それでも絶対にハッキングが起こらないとは言い切れません。

暗号資産取引所がハッキングの被害を受けると、その取引所に預けていた暗号資産が失われてしまうおそれがあるので要注意です。


詐欺業者に資金を持ち逃げされてしまうリスク

暗号資産には、相場の高騰に乗れば大幅に儲かる可能性があります。このような特徴を利用して、 暗号資産は投資詐欺に用いられる例がよく見られます。*2*3

詐欺業者にお金を預けると、ほぼ確実にそのお金は持ち逃げされてしまいます。

「高騰すること間違いなしの暗号資産に投資しませんか?」
「暗号資産のプロがお金を預かって運用し、短期間で数倍に増やしてあげます」

このような言葉で暗号資産への投資を勧誘されたら、投資詐欺の可能性を疑いましょう。


暗号資産に関する税金のルール

暗号資産の取引によって得られた利益には、所得税や住民税が課されます(個人で取引をしている場合)。
暗号資産取引による利益は「総合課税」とされており、「雑所得」としてほかの所得と合算して課税されます。

所得税は累進課税で、税率は所得額に対して5.105%~45.945%です(復興特別所得税を含む)。*4
住民税の税率は原則として、所得額に対して一律10%です。

会社員などの給与所得者であっても、暗号資産取引によって年間20万円を超える利益が出た場合は、翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告をする必要があります。*5

また、暗号資産取引による利益が年間20万円以下の場合は、所得税の確定申告は不要ですが、居住している自治体に対して住民税の申告を行わなければなりません。

暗号資産取引の利益に対する課税の内容や、税務申告の手続きについて分からないことがある場合は、税理士などへご相談ください。


まとめ

暗号資産の取引には、大きな利益を得られる可能性がある一方で、多額の損失を被るリスクも潜んでいます。
暗号資産取引を始めようと考えている方は、そのリスクを正しく理解した上で、ご自身のリスク許容度を超えないような取引を心がけてください。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。

出典
*1 金融庁「暗号資産交換業者登録一覧」
*2 警視庁「暗号資産(仮想通貨)の投資詐欺に注意!」
*3 独立行政法人国民生活センター「マッチングアプリで知り合った人から勧められた暗号資産の投資サイトに手数料を支払ったが、出金できない」
*4 国税庁「No.2260 所得税の税率」
*5 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」


阿部 由羅
あべ ゆら

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

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