2025年10月に予定されている「ふるさと納税」のルール変更について、具体的な変更点とそれが私たち納税者にどのような影響を与えるのかを解説します。
特に話題となっている仲介サイトでのポイント付与禁止の内容や背景、そして制度変更前に取っておきたい対策について詳しく見ていきましょう。
ふるさと納税を活用した節税を検討している方が損をしないよう、最新情報を基にポイントを押さえていきます。
ふるさと納税とは、 自分の応援したい自治体に寄附をすることで、寄附額のうち2,000円を超える部分が所得税と住民税から全額控除される仕組みです。
つまり、寄附者は実質自己負担2,000円で寄附ができ、そのお礼として各自治体から地域の特産品などの返礼品を受け取ることができます。
具体例として、例えば年収700万円・配偶者ありの給与所得者が3万円をふるさと納税した場合、自己負担額2,000円を差し引いた2万8,000円が所得税・住民税から控除されます。*1
このように寄附額から2,000円を除いた全額が後日減税されるため、多くの人にとって節税と地域貢献を両立できる制度と言えるでしょう。
2024年6月25日、総務省はふるさと納税の制度見直しを発表し、 2025年10月1日以降は寄附に伴う独自ポイントを付与する仲介サイトを利用した寄附募集を禁止する決定を明らかにしました。
簡単に言えば、これまで楽天ふるさと納税やふるさとチョイス、さとふるなどのポータルサイト経由で寄附を行うと受け取れていたサイト独自のポイントが、2025年10月以降は一切もらえなくなるということです。 *1
この新ルールは、ふるさと納税ポータルサイトだけでなく、ハピタスやモッピーなどのポイントサイト経由のポイント還元についても全面禁止となる方針です。*2
今回、総務省がふるさと納税におけるポイント付与を禁止する方針を打ち出した背景には、大きく分けて 「制度の公平性」と「財源の健全性」に関する問題意識があります。
近年、楽天やさとふる等の各ポータルサイトは利用者獲得のためにポイント還元競争を激化させ、付与ポイント倍率を引き上げるキャンペーン(ポイント2倍・3倍キャンペーンなど)を行ってきました。
こうしたポイントサービスによって、利用者が返礼品以上のメリットを享受できる状況になっており、「返礼品+ポイント」で過度にお得になる現状は制度本来の趣旨から逸脱しているとの指摘があります。*3
総務省は特に、仲介サイト同士がポイントで寄附者の取り合いをする中で、自治体がこれらサイトに支払う手数料(経費)が膨らみ、本来の寄附の目的が十分果たされていない点を問題視しました。*1
このため総務省は「返礼品目当てではなく寄附の使い道や目的に着目することが本来の意義である」旨を強調し、制度の健全化の一環としてポイント付与禁止に踏み切ったと考えられます。
また、ふるさと納税を巡っては高額返礼品や過度な返礼率の問題も以前から指摘されてきました。
2015年前後には一部の自治体が寄附額の還元率70%超にも及ぶような高額な返礼品(高級家電や商品券など地元と関係の薄い品)を提供し、寄附金集めを競い合う事態となりました。
これは問題視され、そこで総務省は2017年に「返礼品は寄附額の3割以下」「地場産品に限定」「商品券など換金性の高いものは禁止」といった基準を自治体に通知しています。
その後2019年には法改正により厳格化され、基準を守らない自治体は制度対象外とする措置も取られました。*4 *5
今回のポイント還元禁止は、過度なサービスを是正し、制度の公平性・健全性を維持する流れの延長線上にあると言えるでしょう。
2025年10月からのポイント付与禁止によって、ふるさと納税の「お得感」はこれまでより減ることが予想されます。
しかし、制度変更までには猶予があります。
それまでの期間に賢く制度を活用し、最大限のメリットを享受するために、以下の対策を検討してみましょう。
ポイント付与が禁止される2025年9月まで、各種ポータルサイトが実施するポイントアップキャンペーンをフル活用しましょう。
例えば、楽天ふるさと納税の「楽天スーパーSALE」や「お買い物マラソン」、さとふるの「さとふるの日」、ふるなびの「ふるなびメガ還元祭」など、各サイトでは特定の時期にポイント還元率が高まるキャンペーンが定期的に実施されています。
条件次第では寄附額の数十%に相当するポイントが付与されるケースもあり、実質的な自己負担をさらに抑えられます。
2025年9月までは最後の争奪戦として各種キャンペーンが展開される可能性があります。
ルール変更前の駆け込み寄附が増えることで、人気の返礼品には品切れや発送遅延が発生する恐れがあります。
特に寄附が集中しがちな年末時期や、ポイント終了直前の時期には、目当ての返礼品が在庫切れになるケースも多いようです。
実際、ふるさと納税では例年12月に申し込みが殺到し、米や肉など定番の人気返礼品が早期に受付終了となる例が報告されています。
こうした事態を避けるため、 早めに欲しい返礼品をリストアップし、在庫状況をチェックしておきましょう。 *6
自治体やポータルサイトのページで「残りわずか」「次回入荷予定」などの情報が掲載されていないか確認し、必要に応じて事前予約や入荷お知らせ機能を利用するのも一つの手です。
ポイント還元廃止という大きな変更を控え、ふるさと納税に関して寄せられる疑問も少なくありません。
ここでは、ふるさと納税のルール変更についてQ&A形式で解説します。
年収が200万円未満程度の方は注意が必要です。
ふるさと納税では自己負担2,000円を除いた全額が控除されるとはいえ、控除を受けるためには所得税や住民税を十分に納めている必要があります。
年収200万円程度だと扶養状況にもよりますが控除上限額はごく小さい場合が多く、高額な寄附をすると2,000円以上の自己負担が発生してしまうケースがあります。
実際、年収200万円未満でも制度の利用は可能ですが、控除限度額が低いため、上限を超えた寄附額は全額自己負担となり、「単なる寄附」になってしまいます。*7
ご自身が得をするか損をするか判断するには、各種シミュレーションサイトや総務省が公開している控除上限額の目安表を参考に、控除上限額(寄附可能な上限)を必ず確認しましょう。
控除上限額内に収まる範囲で寄附をすれば自己負担2,000円で済みますが、上限を超えた分は全額自己負担となり「税金の前払い+返礼品購入」と同じ状態になります。
今回の制度変更はあくまで「仲介サイトが提供する独自のポイント還元」を禁止するものです。
そのため、 クレジットカード決済に伴ってクレジットカード会社から付与されるポイントやマイルは対象外であり、今後も引き続き付与される見込みです。
例えば、寄附の支払いにポイント付与型のカードやマイル付きのカードを使用すれば、従来通り利用額に応じたポイントやマイルが貯まります。総務省も「通常のクレジットカード支払いで貯まるポイントは今回の見直しの対象ではない」ことを明言しています。*8
したがって、「○○カードで寄附すれば1%ポイント還元」といった決済手段に付随する特典は今後も有効です。
このように、クレジットカード払いを選択すればカードポイントは今後も得られるため、ご自身のメインカードの特典は引き続き活用すると良いでしょう。
2025年10月のポイント付与禁止により、ふるさと納税を取り巻く環境は一部変化しますが、制度そのものの魅力が失われるわけではありません。
寄附額から2,000円を引いた額が控除される仕組みは今後も維持され、各自治体も寄附者に魅力を感じてもらえるような返礼品の充実に努めていくと考えられます。
ポイントという付加的なメリットは減少しますが、裏を返せば「返礼品そのものの質」や「寄附することの意義」がこれまで以上に重視されるようになるでしょう。
制度変更後に賢くふるさと納税を活用するためには、まず返礼品選びの目利きが重要になります。ポイントがなくなった分、寄附先の自治体が提供する返礼品の内容や還元率をよりシビアに比較検討すると良いでしょう。
また、本来の目的である「寄附金の使い道や社会貢献」に目を向けることも大切です。
自分が応援したい分野、例えば教育、災害支援、環境保全などに寄附することで、ポイントがなくともお金の有意義な使い方につながります。
さらに、引き続き節税策として有効活用するために、NISAやiDeCoなど他の制度とも組み合わせた資産形成・税制優遇の戦略を考えてみるのも良いでしょう。
ふるさと納税は翌年度の住民税負担を軽減しつつ地域貢献ができる制度です。
同じく税制優遇のあるNISAやiDeCoと併用すれば、「投資による資産運用+寄附による節税」という二軸で賢くお金を運用できます。
もちろん各制度には上限やリスクもありますので、無理のない範囲で計画することが大切です。
最後に、 制度変更に関する最新情報にも注意を払いましょう。
総務省から追加の発表や各自治体・ポータルサイトの対応策、たとえばポイントに代わる新サービスなどが出てくる可能性もあります。
実際、楽天など大手サイトはポイント禁止に強く反発しており、今後新たな利用者還元策を打ち出すことも考えられます。
常に信頼できる情報源で最新動向をチェックしつつ、制度趣旨を踏まえて賢くふるさと納税を活用していきましょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。
*1 株式会社セゾンファンデックス「ふるさと納税、2025年10月から「ポイント付与禁止」で“得する人”と“損する人”【お金の専門家が解説】」
*2 株式会社ブレイク・フィールド社「ふるさと納税、10月から「ルールが厳しくなる」って本当? 毎年年末にしていたけど、今年は早めにやったほうが得?「改正内容・対策」を解説」
*3 G.S.ブレインズグループ「【ふるさと納税】2025年10月以降はポイント付与禁止へ」
*4 総務省「ふるさと納税に係る返礼品の送付等について 」
*5 合同会社One Reach「2025年10月にふるさと納税改悪!変更点と過去の歴史をわかりやすく解説」
*6 auじぶん銀行「毎年12月に「ふるさと納税」の駆け込みが増加!その理由とは?」
*7 GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社「ふるさと納税で損する年収はいくら?損しないために知っておくべきことを詳しく解説!得する年収もあわせて紹介」
*8 株式会社 D2C「ふるさと納税サイトのポイント付与が禁止に。2025年10月からの変更点を解説」