近年、上昇傾向にある電気料金。
東京電力ホールディングスによると、2021年1月には6,317円であった平均モデルの電気料金(従量電灯B・30A契約)が、2022年3月には8,244円にまで上昇しています。*1
また、家計費に占める電気料金の割合も年々上昇傾向にあり、2021年には3.70%となりました。*2
そのような中、電気代を抑える手段として住宅用太陽光発電の設置を検討している人もいるかもしれません。*3
太陽光発電設置は高額の初期費用がかかるため、簡単に決断できないものです。そこで、政府は設置者への税制優遇措置や、補助金交付など様々な支援メニューを提供しています。
今回は、太陽光発電設置のメリットや、政府が提供している支援制度を紹介します。
太陽光発電システムとは、屋根に設置した太陽電池モジュールのほか、電気を送る接続箱や電力を変換するパワーコンディショナなどを全て合わせた総称です(図1)。*4
図1 太陽光発電システムとは(出所「ニッポンのすべての屋根に太陽光発電を!」太陽光発電協会)p.2
太陽光発電システムを自宅に設置すると、次のようなメリットを得られます。
一つ目は、電気単価が安くなる点です(図2)。*3
図2 電気料金と発電コストの単価比較(全国平均)(出所「住宅用太陽光発電の普及活動について(電気は買うよりつくる方が安い)」太陽光発電協会)p.8
2019年度の電気料金の平均単価は1kWh当たり約25円の一方、太陽光発電の発電コストは約17.7円と、太陽光発電システムを導入した方が電気代は割安と言えます。
二つ目のメリットは、環境問題の解決にも貢献できる点です。*4
太陽光発電は、CO2を排出しないクリーンなエネルギーシステムです。具体的には、住宅用太陽光システムのCO2削減効果を森林面積に換算すると、4kWの太陽光発電約8棟分が東京ドーム1個分の森林に相当すると試算されています(図3)。*4
図3 太陽光発電の環境面でのメリット(出所「ニッポンのすべての屋根に太陽光発電を!」太陽光発電協会)p.1
三つ目のメリットは、災害などで停電になった際、非常用電源として利用できる点です。*4
太陽が出ている時間帯の日射量により使用できる電力量は異なりますが、停電時にもテレビや炊飯器、電気ポット、携帯電話の充電器などの電源として利用できます。
住宅用(10kW未満)の太陽光発電の導入件数は、年々増加しています。実際、2000年度にはわずか5万件程度であった設置件数が、2020年度には累計約280万件に達しました(図4)。*3
図4 住宅用太陽光発電の導入件数推移(出所「住宅用太陽光発電の普及活動について(電気は買うよりつくる方が安い)」太陽光発電協会)p.2
280万件は、国内の戸建住宅総数のおよそ10%に当たり、およそ10戸に1戸は太陽光発電システムが設置されていることになります。
太陽光発電には様々なメリットがありますが、冒頭にお伝えしたように、設置する際には初期費用がネックとなります。
実際、機器・工事費を含め、1kW当たりの平均設置費用は32.1万円とされています。容量の大きい太陽電池モジュールを設置すると、その分費用も高くなります。*4
そこで政府は、設置費用など太陽光発電導入時の懸念を取り除こうと、様々な支援制度を提供しています。
例えば、「省エネ改修に係る所得税額の特別控除」(2022年1月1日から2023年12月31日まで適用可能)を活用することで、所得税額の特別控除を受けることができます。*5
具体的には、個人が省エネ改修工事を含む増改築等工事を実施した際、工事費用に応じた額を所得税から控除できます(図5)。*5
図5 省エネ改修に係る所得税額の特別控除における控除額(出所「省エネ改修に係る所得税額の特別控除」国土交通省)p.1
適用を受けるためには、申請する個人が所有・主として居住する家屋であることなどの要件があるため、申請を受ける前に確認することが大切です。また、控除を受けるためには、確定申告の際に必要な書類を税務署に提出する必要があります。
同制度では、太陽光発電装置の設置工事を併せて行うと、工事費用相当額に対する10%の控除部分にあたる上限が350万円まで増加します。そのため、太陽光発電導入を検討している方には、メリットの大きい制度と言えるでしょう。
また、ZEH(ネット ・ ゼロ ・ エネルギー ・ ハウス)等の要件を満たす戸建住宅を建築・購入等した際に補助金が支給される制度についても、個人で申請可能です。*6
ZEHとは、再生可能エネルギーの導入や、高効率な設備システムの導入等により年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとなることを目指した住宅を指します(図6)。*7
図6 ZEH(ネット ・ ゼロ ・ エネルギー ・ ハウス)とは(出所「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅関連事業(補助金)について」国土交通省)p.1
令和5年度事業では、ZEHの基準を満たした住宅に対し1戸当たり55万円が支給されます。また、蓄電システムを導入した場合には、1kWh当たり2万円(上限20万円かつ補助対象経費の1/3以内)が追加で受給できます。*8
さらに、より高性能なZEH(ZEH+)を建築・購入等した場合には、1戸当たり100万円の補助金が受給可能など、ZEH推進の支援制度がいくつかあります。
初期費用がネックとなる再生可能エネルギーの設置促進に向けて、国や地方自治体など行政は様々な支援制度を整備しています。
年度によって内容の変更や終了もありますが、太陽光発電システムを自宅に設置する場合は、支援制度を活用することで初期負担を下げられる可能性があり、行政のHPなどを事前に確認すると良いでしょう。
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本稿執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典
*1 東京電力ホールディングス「平均モデルの電気料金」
*2 東京電力ホールディングス「電気料金の家計費に占める割合(全国全世帯)」
*3 太陽光発電協会「住宅用太陽光発電の普及活動について(電気は買うよりつくる方が安い)」p.2, p.8
*4 太陽光発電協会「ニッポンのすべての屋根に太陽光発電を!」p.1, p.2
*5 国土交通省「省エネ改修に係る所得税額の特別控除」p.1, p.2
*6 資源エネルギー庁、環境省「再生可能エネルギー事業支援ガイドブック」p.132
*7 国土交通省「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅関連事業(補助金)について」
*8 経済産業省、国土交通省、環境省「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの推進に向けた取り組み」p.2