
近年社会問題になっている「闇バイト」の募集として、最もよく見られるものの一つが「銀行口座の売買」です。
他人名義の口座を用いることで、首謀者まで捜査が及びにくくするために、詐欺グループによって銀行口座の売買が募集されています。
銀行口座の売買は犯罪であり、関与すると逮捕・起訴されて有罪判決を受けるおそれがあります。また、使用中の銀行口座が凍結されるほか、将来的な新規開設もできなくなり、生活に大きな影響が生じてしまいます。
お金が欲しいとしても、銀行口座の売買には絶対に関わってはなりません。
本記事では銀行口座の売買について、すべきでない理由、違法な闇バイト募集を見破るためのポイント、売ってしまったときの対処法などを解説します。
「闇バイト」とは、違法行為をして報酬を受け取ることの俗称です。最近では、主にインターネット上で闇バイトの募集が行われています。銀行口座の売買は、闇バイトの典型例の一つです。
銀行口座を売ってくれる人を募集しているのは、主に特殊詐欺などの犯罪行為をする組織です。
犯罪によって得たお金が入金された銀行口座は、被害届などをきっかけに特定される可能性が高いと考えられます。
犯罪グループのメンバーの口座を用いた場合は、そのメンバーの摘発のみならず、芋づる式にグループ全体が摘発される事態に繋がります。
こうした事態を避けるため、犯罪グループは他人から買い取った銀行口座を利用する傾向にあります。
警察によって銀行口座が特定されても、その口座は犯罪グループのメンバーのものではないため、口座情報から犯人が特定されることはありません。
このように、犯罪グループが摘発を逃れるために、銀行口座を売ってくれる人を募集する例が多数見受けられます。
銀行口座の売買は、時給に換算すると一般的なアルバイトより高額に見えるかもしれません。しかし、銀行口座の売買は犯罪であり、関与するとさまざまなリスクを負うことになってしまいます。
銀行口座の売買は、「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)」に違反する犯罪行為です。
売った側と買った側の両方が「1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金」に処され、または拘禁刑と罰金が併科されます(同法28条1項・2項)。
さらに、業として銀行口座の売買をした場合は「3年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金」に処され、または拘禁刑と罰金が併科されます(同条3項)。
銀行口座の売買に関与すると、上記の犯罪によって警察に逮捕されるリスクがあります。さらに検察官に起訴されると、刑事裁判で有罪判決を受けて前科が付いてしまう可能性が高いです。
このような事態になると、生活・学業・仕事などに多大な影響が生じてしまいます。銀行口座の売買は摘発のリスクがきわめて高いので、決して関与してはなりません。
銀行口座の売買に関与した事実が金融機関に知られると、その情報が他の金融機関にも共有されます。その結果、保有している銀行口座がすべて凍結されて使えなくなります。
銀行口座が凍結されると、生活上さまざまな不便が生じます。
たとえば、給料を銀行振込で受け取ることができなくなります。クレジットカード料金も、銀行口座から引き落とされなくなります。
また、多額のお金が口座に入っていても、出金することはできません。
銀行口座の凍結による不利益は、想像以上に大きいものです。銀行口座を売買すると、大きな不利益を被ることになるのでご注意ください。
一度銀行口座の売買を行った人は、あらゆる金融機関において半永久的に、新たに銀行口座を作ることができなくなります。
つまり、給料を銀行振込で受け取れず、クレジットカード料金も銀行口座から引き落とされない状態がずっと続くということです。
生活上大きな不便が生じることに加えて、「銀行口座を持っていない」というのは社会人としての信用に関わります。
口座情報の登録や通知を求められる場面は多岐にわたるところ、口座を持っていなければその情報を伝えることができません。
「普通の人なら銀行口座を持つことができるのに、なぜこの人は持っていないんだろう」と怪しまれてしまいます。
銀行口座の売買をすると、このような取り返しのつかない事態が生じてしまいます。多少の報酬を得られるとしても、それに全く見合わないほどリスクの大きな行為なので、銀行口座の売買を絶対にしてはいけません。
銀行口座を売ることだけでなく、一時的に貸すことも犯収法違反に当たる犯罪行為です。
銀行口座を他人に貸した人には「1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金」が科され、または拘禁刑と罰金が併科されます(同法28条1項・2項)。
さらに、持っている銀行口座が凍結されたり、将来にわたって新たな口座開設ができなくなったりするリスクがある点も、売買をした場合と同様です。
「銀行口座を貸してほしい」と頼まれても、絶対に応じてはなりません。
インターネット上では、違法な銀行口座の売買の募集が盛んに行われています。
特に以下のようなハッシュタグが付けられている投稿を目にしたら、違法な銀行口座の売買の募集ではないかと疑いましょう。
#即日・即金
#お金に困ってます
#高額収入
#高額買取
#ホワイト案件
#口座売買
#口座買取
#リスクなし
#UD(受け子、出し子の隠語)
#○ヶ月間逮捕者なし
闇バイトに応募して、銀行口座を売ったり貸したりしてしまった場合は、すぐに口座を作った金融機関に連絡しましょう。
銀行口座を売ったり貸したりしたことは、いずれ警察に発覚する可能性が高いです。捜査を通じて発覚するよりも、自首した方が罪は軽くなります。
また、一日も早く金融機関に連絡して口座の利用停止措置をとってもらえば、犯罪被害に遭う人を減らすことができます。
口座凍結など何らかのペナルティを受けることは避けられませんが、自分のしたことにけじめをつける意味でも、速やかに金融機関へ連絡してください。
闇バイトの一種として募集されている銀行口座の売買は、犯罪です。
銀行口座の売買に関与すると、刑事罰を受けるリスクがあるほか、持っている銀行口座が使えなくなり、新たに口座を開設することもできなくなります。
少々の報酬と引き換えに、大きな社会生活上の不利益を受けることになるので、全く割に合いません。
一般的なアルバイトよりも高額に見える報酬に魅力を感じても、銀行口座の売買は絶対に行ってはなりません。特にSNSを利用する際には、違法な闇バイトの募集に十分ご注意ください。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
