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【弁護士が解説】年末調整と確定申告の違いは?両方必要なのはどんな人?
【弁護士が解説】年末調整と確定申告の違いは?両方必要なのはどんな人?

【弁護士が解説】年末調整と確定申告の違いは?両方必要なのはどんな人?

2024/12/08に公開
提供元:阿部由羅

会社員などの給与所得者は原則として年末調整を受けますが、給与とは別の収入がある人や、給与年収が2,000万円以上の人などは確定申告も行う必要があります。
申告を怠ると追徴課税のリスクが生じるので、必要な方は確実に確定申告を行いましょう。

本記事では主に給与所得者の方に向けて、年末調整と確定申告の違い、確定申告の要否、自分で確定申告をする際の手続きや注意点などを解説します。


年末調整とは

「年末調整」とは、給与等から源泉徴収をした所得税・復興特別所得税の合計額と、本来納めるべき税額との差額を精算する手続きです。

源泉徴収額は毎月の給与額に応じて決まりますが、最終的な税額は1年間の給与額に応じて決まります。そのため、源泉徴収額と最終的な税額の間にはずれが生じるところ、そのずれを埋める手続きが年末調整です。

勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している給与所得者の方は、原則として年末調整の対象となります。*1


年末調整と確定申告の違い

1年間の所得に対して課される所得税・復興特別所得税の額は、「確定申告」によって税務署に申告するのが原則とされています。

確定申告では、原則として1年間のすべての所得を合算した額を申告します。したがって、確定申告によって課される税額は、1年間の総所得に対する金額となります。

これに対して年末調整は、勤務先から支払いを受けている給与所得のみを対象とします。給与所得以外の所得(事業所得・不動産所得・雑所得など)は、年末調整の対象外です。


年末調整を受けた人も、確定申告は必要か?

年末調整を受けた人でも、所得の状況などによっては、確定申告も行うべき場合があります。ご自身の状況に照らして、確定申告が必要かどうかをチェックしましょう。


給与所得だけの場合は、原則として確定申告は不要

1年間の所得が給与所得のみであり、かつ勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していれば、原則として確定申告は必要ありません。
年末調整によって税額の精算が完了するためです。


給与所得者でも、確定申告が必要になるケース

給与所得者であっても、勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない場合は、年末調整の対象にならないので確定申告が必要です。

また、以下のいずれかに該当する方は、給与所得者であっても確定申告が必要になります(税金が還付される人は任意)。*2


  • 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
  • 1か所から給与の支払を受けていて、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人
  • 2か所以上から給与の支払を受けている人のうち、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人
  • 同族会社の役員などで、その同族会社から貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
  • 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
  • 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
  • 退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人

特に高給取りの方(給与の年間収入金額が2,000万円を超える方)や、副業収入が合計20万円を超える方などは、確定申告が必要となる点にご注意ください。


確定申告の手続き

確定申告の手続きに関する基礎知識を解説します。


確定申告の期間

確定申告の期間は、原則として所得を得た年の翌年2月16日から3月15日までです。ただし、開始日または最終日が土日祝日に当たる場合は、翌平日にずれます。
(例)2024年の所得税の確定申告期間は、2025年2月17日(月)~3月17日(月)

なお、所得税等が還付される場合の申告(=還付申告)は、確定申告の開始日より前でも行うことができます。


確定申告書の作成・提出方法

確定申告書を作成する際には、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用するのが便利です。
画面の案内に従って金額等を入力すれば、税額などが自動的に計算され、確定申告書を作成することができます。*3

確定申告書への金額の入力は、所得や経費に関する資料(源泉徴収票や会計帳簿など)、所得控除や税額控除に関する資料(控除証明書など)を参照しながら行いましょう。

確定申告書の提出先は、納税地(=原則として住所地)を管轄する税務署です。管轄税務署は、国税庁のウェブサイトから確認できます。*4*5
マイナンバーカードなどを利用すれば、e-Taxを通じてオンラインで確定申告書を提出することも可能です。*6


確定申告に関する相談先

確定申告について分からないことがある場合は、税務署か税理士に相談しましょう。

税務署では、確定申告の時期になると相談コーナーを設けて、納税者の質問への対応や申告書作成のサポートを無料で行っています。事前予約制としているところが多いので、税務署に問い合わせてみましょう。

税理士に依頼すれば、確定申告書の作成を代行してもらえます。費用はかかりますが、自分で確定申告書を作成するのが面倒な方は、税理士にご依頼ください。


自分で確定申告を行う際の注意点

自分で確定申告を行う際には、特に以下の各点にご注意ください。


  • 計上する経費の範囲に注意
  • 控除証明書などは整理して保存する
  • 期限内に確定申告をしないと、延滞税や加算税が課される

計上する経費の範囲に注意

副業をしていて事業所得または雑所得がある方や、不動産を所有していて不動産所得がある方は、経費をたくさん計上して所得を減らし、節税をしようとするケースがよくあります。

しかし、必要経費に算入できる金額は、以下の費用の額に限られています(所得税法37条1項)。


  • 売上原価その他総収入金額を得るため直接に要した費用の額
  • 販売費、一般管理費その他所得を生ずべき業務について生じた費用

業務に関係がないプライベートな費用は、必要経費に計上できません。また、業務とプライベートが混在する費用は、その割合に応じて按分する必要があります。

過大な経費を計上すると、後に過少申告を指摘されて追徴課税を受けるおそれがあるのでご注意ください。


帳簿や控除証明書などは整理して保存する

勤務先から交付を受けた源泉徴収票、事業に関する帳簿、控除証明書などについては、年度ごとに整理して保存しておきましょう。
後に税務署の調査が行われるケースもあるため、その際すぐ提示できるようにしておくことが大切です。


期限内に確定申告をしないと、延滞税や加算税が課される

確定申告が必要とされているのに、期限内に確定申告を行わないと、本来の税額に加えて延滞税や加算税(無申告加算税または重加算税)が課されます。*7*8

税負担が重くなってしまうことを避けるためにも、確定申告が必要な場合は、期限内に確実に申告を行いましょう。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。

出典
*1 国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」
*2 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
*3 国税庁「国税庁 確定申告書等作成コーナー」
*4 国税庁「No.2029 確定申告書の提出先(納税地)」
*5 国税庁「税務署の所在地などを知りたい方」
*6 国税庁「e-Tax 国税電子申告・納税システム」
*7 国税庁「延滞税の計算方法」
*8 財務省「加算税の概要」


阿部 由羅

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。
企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。
その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。


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