金融政策決定会合は、日銀が今後の金融政策を決定するために開く会合です。政策金利の上げ下げなどが決まるため、市場関係者から注目されています。会合の結果は、資産運用にどのような影響を与えるのでしょうか。
本コラムでは、日銀の金融政策決定会合の基礎知識と株価・為替への影響を解説します。
金融政策決定会合とは、日銀の政策委員が金融政策の方向性について審議・決定する会合です。年に8回(毎回2日間)開催され、9名の政策委員(総裁、副総裁2名、審議委員6名)による多数決で決定されます。*1
政策金利の誘導目標や金融・経済情勢に関する基本的見解などが示されることから、市場関係者からの注目度は高く、会合の決定内容は経済ニュースで大きく取り上げられます。
日銀は日本の中央銀行として、物価の安定のために金融政策の決定・実行を行っています。
日本銀行法では、日銀の金融政策の理念を「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」と定めています。*2
物価の安定は、あらゆる経済活動や国民経済の基盤となるものです。個人や企業は、モノやサービスの価格をもとに消費や投資をするかどうかの判断を行っています。
物価が大きく変動すると、個人や企業が消費・投資判断を行うことが難しくなり、経済に影響を与えます。
このような点を踏まえ、日銀は物価安定の目標を「消費者物価の前年比上昇率2%」と定めています。
金融政策決定会合の議事内容は主に次の4つです。*3
金融経済情勢に関する検討を行い、次回会合までの金融市場調節方針を決定します。その方針をもとに、日銀は金融市場における資金量の調整を行っています。*4
金融政策手段は、大きく「政策金利操作」「公開市場操作」「預金準備率操作」の3つがあります。*5
かつては政策金利操作が中心でしたが、現在は公開市場操作による市場金利の誘導が主体となっています。
預金準備率とは、民間金融機関が日銀に預け入れる必要がある金額の比率です。
預金準備制度により、対象金融機関(銀行、一部の信用金庫など)は一定以上の金額を日銀に預け入れることが義務づけられています。*7
また、会合では金融政策判断の基礎となる、経済・金融情勢に関する基本的見解も決定されます。
金融政策決定会合が終了すると、まずは以下のような形式で会合の結果が公表されます。
出典)日本銀行「金融市場調節方針の変更および長期国債買入れの減額計画の決定について(2024年7月31日)」
会合での決定内容と日銀の基本的見解が示されており、速報性もあることから、市場関係者からの注目度が高い資料といえます。
年4回(通常1月、4月、7月、10月)の会合では、「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」という資料が公表されます。
出典)日本銀行「経済・物価情勢の展望(2024年7月)」
経済・物価情勢の現状や今後の見通し、上振れ・下振れ要因、金融政策運営の考え方などがまとめられています。
また、原則として会合の6営業日後には「主な意見」が公表されます。
出典)日本銀行「金融政策決定会合における主な意見(2024年7月30、31日開催分)」
会合において、政策委員からどのような意見が出たのかを確認できます。
経済ニュースとあわせてこれらの資料を確認すれば、経済・物価の現状や見通し、日銀の金融政策の方針への理解が深まるでしょう。
ここでは、金融政策決定会合と株価・為替の関係性を説明します。
一般的に、日銀(中央銀行)は景気が良いときには政策金利を引き上げ、景気が悪いときには政策金利を引き下げます。
出典)三菱UFJ銀行「利上げとはどのような政策?為替・株価・物価に与える影響とは?」
利上げは企業の支払利息が増えて減収につながり、新規の借り入れを控えるようになります。企業業績に悪影響が出るため、株価は下落しやすくなります。
ただし、経済・物価の安定を図るために、利上げが適切に実施されれば株価への影響は少なく済むでしょう。*8
反対に、利下げは企業が借り入れをしやすくなるため、事業拡大につながり、株価が上昇しやすくなります。
政策金利と株価にはこのような関係があるため、日銀の金融政策決定会合の結果を受けて株価が動くことがあります。
お金は、金利が低いほうから高いほうへ流れる性質があります。低金利の通貨より高金利の通貨で運用するほうが、利益が見込めるからです。*9
そのため、日銀が利上げを実施し、米国との金利差が縮小すると円高ドル安に振れやすくなります。
反対に利下げをして米国との金利差が拡大すると、円安ドル高が進みやすくなります。
このような関係性から、金融政策決定会合での利上げ・利下げの決定は、米ドル円をはじめとする為替レートに影響を与えます。
日銀の金融政策決定会合では、経済・物価の安定のために政策金利の上げ下げなどの金融政策運営の方針を決定しています。
会合の結果を受けて、株価や為替が大きく動くことも珍しくありません。株式投資や投資信託で資産形成に取り組むなら、金融政策決定会合の決定内容を確認しておきましょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。
出典
*1 三菱UFJモルガン・スタンレー証券「日銀金融政策決定会合」
*2 日本銀行「金融政策の概要」
*3 日本銀行「金融政策決定会合とは何ですか? いつ開催されるのですか?」
*4 日本銀行「金融市場調節方針とは何ですか?」
*5 日本経済新聞「中央銀行の役割を知る(2.金融政策に公開市場操作など3つの手段)」
*6 知るぽると「基準割引率および基準貸付利率(公定歩合)とは」基準割引率、基準貸付利率
*7 日本銀行「準備預金制度とは何ですか? 超過準備とは何ですか?」
*8 三菱UFJ銀行「利上げとはどのような政策?為替・株価・物価に与える影響とは?」
*9 日本経済新聞「日米金利差」