「給料」と「給与」の使い分けについては諸説あるようですが、基本的には同じものと理解すればよいでしょう。
給料(給与)は、法律上は「賃金」の一部とされています。賃金については労働基準法のルールが適用され、会社などの使用者はそのルールを守らなければなりません。
本記事では、給料と給与の違いや、労働基準法における給料(給与)に関するルールなどを解説します。
ウェブサイトなどを見ていると、「給料」と「給与」の違いについてはさまざまな言説が乱立しています。
しかし、給料と給与は基本的に同じものと理解すれば十分です。参考までに、小学館がウェブ上で公表している「デジタル大辞泉」の定義を紹介します。
「給与」は動詞としても使えますが(=給与する)、名詞としての意味については、給料と給与の間に違いはなさそうです。
実際にも、給料と給与はいずれも「会社のために働いた対価としてもらうお金」という意味で用いられるのが一般的です。両者の使い分けを敢えて意識する必要はないでしょう。
給料(給与)については、労働基準法という法律でルールが定められています。ただし労働基準法では、「給料」や「給与」ではなく「賃金」と定義されています。
上記の定義のとおり、労働の対価(対償)として会社などから支払いを受けるものは、「給料」や「給与」などの名称が何であるかを問わず、労働基準法上の「賃金」に該当します。
労働基準法では、賃金の正しい支払いを確保するため、会社などが遵守すべきさまざまなルールが設けられています。その中でも重要なものとして、以下の4点を紹介します。
賃金の支払いについては、以下の5つのルールが設けられています(労働基準法24条)。
会社などの使用者は、労働者に対して最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません(労働基準法28条、最低賃金法)。
最低賃金には「地域別最低賃金*4」と「特定最低賃金*5」の2種類があります。特定最低賃金に該当する労働者については、いずれか高い方が適用されます。
特に近年では、地域別最低賃金が毎年大幅に引き上げられています。
2024年10月の改定では、全都道府県で地域別最低賃金が50円以上引き上げられ、全国加重平均額は1055円(51円増)となりました。
もう少し遡ると、2019年10月の改定時には901円、2014年10月の改定時には749円でした。地域別最低賃金が、近年急速に引き上げられていることが分かります。
労働者が残業をした場合、会社などの使用者は残業代を支払わなければなりません。
一般的に「残業」とは、会社が定める労働時間(=所定労働時間)を超えて働くことをいいます。法的には、残業は「法定内残業」と「時間外労働」の2つに分類されます。
※法定労働時間は原則として、1日当たり8時間・1週当たり40時間
法定内残業については、通常の賃金と同じ時給で計算した残業代を支払えば足ります。
時間外労働については、通常の賃金に対して25%以上(月60時間を超える部分は50%以上)の割増賃金を支払わなければなりません。
また、広義では休日労働や深夜労働を「残業」に含めるケースもあります。
休日労働には通常の賃金に対して35%以上、深夜労働には通常の賃金に対して25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。
なお、時間外労働と深夜労働、休日労働と深夜労働の割増率は重複して適用されます。たとえば休日労働かつ深夜労働なら、通常の賃金に対して60%以上の割増賃金の支払いが必要です。
労働者が就業規則違反を犯した場合、会社などの使用者は懲戒処分を行うことができます。
懲戒処分の一種である「減給」については、過度に重い処分によって労働者が困窮する事態を防ぐため、以下の2つの上限が設けられています(労働基準法91条)。
減給額がいずれか一方でも上限を上回ると、労働基準法違反となります。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典
*1 weblio辞書「給料」
*2 weblio辞書「給与」
*3 e-gov法令検索「労働基準法第11条」
*4 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
*5 厚生労働省「特定最低賃金の一覧」