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介護美容とは?仕事内容や受けるメリットを網羅的に解説
介護美容とは?仕事内容や受けるメリットを網羅的に解説

介護美容とは?仕事内容や受けるメリットを網羅的に解説

19時間前に公開
提供元:Money Canvas

介護や高齢化に関心が高まる中、「介護美容」という言葉を耳にする機会が増えています。介護美容は単なるおしゃれや贅沢ではなく、高齢者の心と体の健康を支える新しいアプローチです。

本記事では、具体的な仕事内容から得られるメリット、そして背景にある社会的なニーズまで、介護美容について網羅的に解説します。
介護を受ける方だけでなく支えるご家族にとっても、介護美容がもたらす明るい変化を見ていきましょう。


介護美容とは?

介護美容とは、高齢者や身体に不自由を抱える方に対して美容サービスを提供し、心身のケアを行うことを指します。
メイク、ネイル、エステなどの美容技術に介護の知識を組み合わせ、見た目のケアだけでなく精神面や身体面の健康サポートも目的とする福祉的な分野です。*1

要介護高齢者のADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)の向上に寄与し、利用者の自尊心や意欲を高める効果が期待されています。
美容室に行けない方には訪問理美容(出張美容)という形で、カットやカラーなどのサービスを自宅や施設で提供することも含まれます。*1

つまり介護美容は、美容を通じて高齢者が心身ともに生き生きと過ごせるよう支援する取り組みなのです。


介護美容と仕事内容

介護美容の仕事内容は多岐にわたり、利用者の身だしなみを整えるとともにリラクゼーション効果ももたらします。
通常の美容サービスと似た面もありますが、介護現場ならではの配慮や専門技術が必要です。

ここでは介護美容の現場で提供される主なサービス内容について、分野ごとに説明します。


ヘアケア


高齢者の髪を整えるヘアケアは、清潔感を保ち本人の自尊心を高める大切な仕事です。
シャンプー、カット、ブローから白髪染め、ヘッドマッサージ、場合によっては髭剃りまで行います。*1

寝たきりで座位が難しい方の場合、ベッド上での洗髪やカットなど特別な技術と工夫が求められます。
髪型が整うと見た目の印象が良くなり、衛生面が保たれるだけでなく、ご本人の安心感や自信にもつながるでしょう。
髪を整える習慣は、高齢者が前向きな気持ちで過ごすための助けとなります。


ネイルケア

手足の爪をお手入れするネイルケアも介護美容の大切な仕事です。
爪切りや爪の形を整えるケアに加え、ハンドマッサージや保湿ケアを行うことで衛生面の向上と血行促進が期待できます。

爪を清潔に保つことは、感染症の予防にも重要です。
また、ネイル施術時に行うハンドマッサージは手先の血流を良くし、冷えやむくみの改善に効果があります。

さらに、指先がきれいになることで気分が明るくなり、「自分にもオシャレができる」という自信にもつながるのです。
実際、介護施設でもネイルサービスを導入すると「綺麗な色ですね」「次は何色にしましょうか」といった会話が生まれ、利用者同士やスタッフとのコミュニケーションが増えるケースが多く報告されています。


メイク

高齢者向けのメイクサービスは、スキンケアや簡単な化粧を施すものです。
口紅や頬紅で血色を足したり、薄くおしろいをつけたりするだけでも表情が明るくなり、「まだ自分はこんなに綺麗になれる」といった前向きな気持ちを引き出します。

特に誕生日やイベント時には、普段以上のおめかしをすることで特別感を演出し、思い出づくりにもなるでしょう。

大手化粧品メーカーの研究では、高齢者にスキンケアやメイクのプログラムを継続して行ったところ、参加者の握力が向上しADL(日常生活動作)の自立度も改善したと報告されています。
これは、メイクなどの整容行為が心を前向きにするだけでなく、細かな手の動きがリハビリの一助となり身体機能の維持にも寄与したことを示しています。*2


アロマセラピー

アロマセラピーは、植物から抽出したアロマオイル(精油)の香りやオイルマッサージによって、高齢者の心身を癒やすケアです。
心地よい香りを焚いたり、精油で手足などを優しくマッサージしたりすることで、リラックス効果や不安の軽減が期待できるでしょう。
香りによる刺激は自律神経を整え、睡眠の質改善や認知症予防につながる可能性も指摘されています。*3

実際に、鳥取大学の研究では、介護施設の認知症高齢者に28日間アロマ療法を実施したところ、アルツハイマー型認知症の利用者で、自己に関する見当識(自分が誰か・今どこにいるか等)の改善がみられたとの報告もあがっています。*4

副作用が少なく、薬に頼らないケア手段としてアロマセラピーは注目されており、香りをかぐだけでなく触れ合いのマッサージを通じて、高齢者の安心感や信頼関係の構築にも貢献します。


介護美容を受けることによるメリット

介護美容を利用することで得られるメリットは、大きく分けてメンタル面、身体面、そして社会的な交流面の3つがあります。

美容ケアは高齢者に「美しくありたい」という前向きな気持ちを呼び起こし、生活の質を向上させる効果が報告されています。

ここでは主なメリットを3つの側面から解説します。


メンタルケア

美容サービスを受けることで自分らしさを取り戻し、精神的な安定や前向きな気持ちを得られるのは大きなメリットです。

身だしなみが整うと、高齢者は自分に自信を持てるようになります。
実際に、美容ケアをきっかけに表情が明るくなったり、他者との会話が増えたりするケースは多く報告されています。
外見を整えることは自尊心の向上につながり、「おしゃれをしてもいいんだ」「自分はまだ輝ける」というポジティブな意欲を引き出すのです。

こうした日々の張り合いが、抑うつ状態の予防にも役立つと考えられています。


身体機能の維持・改善

介護美容は、身体機能の維持や改善にも良い影響を与えます。
例えば、マッサージを伴う美容ケアは血行を促進し、筋肉のこわばりを和らげ、冷えやむくみの軽減にもつながります。
また、定期的なフットケアは足の健康を保ち、歩行機能の低下や転倒の予防にもつながるといわれています。

さらに、外見が整うことで「少し散歩してみよう」と外出意欲が湧き、結果的に活動量が増えるケースも少なくありません。こうした日々の小さな活動の積み重ねが、筋力低下の防止にも寄与します。


コミュニケーション機会の増加

美容を通じて人との会話や交流が生まれる効果も見逃せません。
ネイルやメイクがきっかけで、他の利用者やスタッフとの会話が弾むケースや、美容イベントなどを通じて、参加者同士の交流が活発になったというケースもあります。

こうしたコミュニケーションの増加は、脳を活性化させ、認知症予防やうつの軽減にも良い影響を与えるとされているのです。
会話や交流が、高齢者の社会的孤立感を和らげ、生き生きとした日々を送る手助けとなるでしょう。*5


介護美容の需要が増している背景

日本では高齢化が急速に進んでおり、介護美容の需要は年々高まっています。
その背景には、高齢者人口の増加と、「身体の世話」だけでなく「心のケア」まで含めて支援しようという意識の高まりがあるのです。

2024年10月時点で日本の65歳以上人口は約3,624万人にのぼり、総人口の29.3%に達しています。*6

こうした中、美容特化型のデイサービスが登場するなど、美容と介護を融合させたサービスへのニーズが顕在化しています。
美容ケアは利用者の自尊心を高め、生活の質を向上させる新しいアプローチとして評価されているのです。*7

また、在宅介護が増える中で、外出が難しい方でも美容サービスを受けられる訪問美容の需要も伸びています。
自治体が訪問美容の補助券を配布したり、介護施設が外部の美容師と契約したりするケースも増えてきました。
これは高齢者の「いつまでも綺麗でいたい」という気持ちに応えるだけでなく、施設のサービス差別化にもつながります。*1 *8


介護美容についてよくある質問

最後に、介護美容に関して多くの人が疑問に思うポイントをQ&A形式で解説します。
資格の必要性や将来性など、介護美容を始める・利用する上で押さえておきたい点を確認しましょう。


介護美容にはどんな資格が必要?

提供するサービスによって必要な資格は異なります。

まず、ヘアカットやパーマなど、髪に刃物や薬剤を使用する施術には、美容師または理容師の国家資格が法律で義務付けられています。*9

その一方で、ネイルケアやアロマセラピーには、法律で定められた必須の国家資格はありません。

ただし、メイクについては注意が必要です。お客様から料金をいただいてメイクを施す行為は、美容師法で定められた「美容」にあたるため、原則として美容師免許が必要になります。*10

重要なのは、いずれのサービスであっても、高齢者の安全に配慮するための介護知識です。
福祉理美容士や介護職員初任者研修といった資格があると、介護現場への理解が深まり、利用者やご家族からの信頼も格段に高まります。
特に、認知症の方や皮膚がデリケートな高齢者への施術には、専門的な知識と細心の注意が求められます。
そのため、これらの資格を持つことは他にはない大きな強みとなるでしょう。

施術内容にかかわらず、「美容の専門性+介護の知識」を併せ持つことが、質の高い介護美容を提供する上で重要といえます。


介護美容の需要は今後も増える?

今後さらに高まると予想されます。
日本はこれからも高齢化が進み、高齢者の割合は2040年には約35%に達すると見込まれています。*11

日本の高齢化と在宅介護の増加に伴い、自宅で美容ケアを受けたいというニーズは拡大を続けており、訪問理美容サービスの市場規模も拡大傾向にあります。

また、介護施設でも入居者の満足度向上やサービスの付加価値として美容ケアの導入が進んでいます。

介護美容は、高齢者の心身を支える重要な分野として、今後ますます発展していくでしょう。


介護美容で笑顔あふれる生活を

介護美容は、高齢者に「美しくあること」「おしゃれを楽しむこと」を諦めさせない取り組みです。
髪を整え、爪を磨き、香りに包まれる時間は、高齢者にとって生きる喜びや自信を取り戻す貴重なひとときとなります。
美容を受けた後の利用者の笑顔や、「またお願いね」といった言葉から、その効果の大きさが伝わってきます。
心身の健康維持、機能回復、そして人とのつながり――介護美容がもたらすメリットは計り知れません。
日本の高齢化が進むこれからの時代、介護美容は単なる付加サービスではなく、高齢者の生活を豊かに彩るために欠かせない存在になっていくでしょう。
介護を必要とする方も支える方も、美容の力を活用して笑顔あふれる毎日を送れるよう、介護美容の輪が広がっていくことが望まれます。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。

出典
*1 介護美容マガジン「介護美容に資格は必要?公的資格ゼロでも安全に始める方法、仕事内容を解説」
*2 資生堂「継続的な化粧行為が高齢者の日常生活動作を向上させることを実証」
*3 公益財団法人長寿科学振興財団「認知症のアロマ療法」
*4 鳥取大学医学部「香りの力で認知症予防」
*5 Frontiers in Robotics and AI「Cognitive Intervention Through Photo-Integrated Conversation Moderated by Robots (PICMOR) Program: A Randomized Controlled Trial」
*6 内閣府「令和7年版高齢社会白書」
*7 医療法人 丸岡医院「美容特化型デイサービスが人気の理由 – 高齢者も輝く時代へ」
*8 株式会社Distinct「訪問美容の完全ガイド:サービス内容からキャリア、未来の展望まで」
*9 厚生労働省「理容師・美容師制度の概要等について」
*10 e-Gov法令検索「美容師法」
*11 厚生労働省「我が国の人口について」

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