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銀行への死亡届はいつ出せば良い?葬儀後に必要な手続きを含め弁護士が解説
銀行への死亡届はいつ出せば良い?葬儀後に必要な手続きを含め弁護士が解説

銀行への死亡届はいつ出せば良い?葬儀後に必要な手続きを含め弁護士が解説

2025/05/04に公開
提供元:阿部由羅

銀行口座の名義人が亡くなったときは、銀行に死亡の届出を行う必要があります。相続財産を保全する観点からは、早めに届け出ることが望ましいです。

銀行に対して死亡を届け出ると、亡くなった人の口座は凍結されます。凍結前に葬儀費用などの必要な資金を引き出すことも考えられますが、引き出したお金が使い込まれるリスクには十分ご注意ください。

本記事では、銀行に名義人死亡の届出を行うべきタイミングや手続き、届出後の口座凍結、届出前にお金を引き出すことのリスクなどについて弁護士が解説します。


家族が亡くなった場合、死亡届を銀行に出すのはいつ?

家族が亡くなった場合には、その家族が保有していた口座のある銀行に対して、死亡の旨を届け出る必要があります。

銀行に対する死亡届の提出期限は、特に決まっていません。しかし、死亡届を提出していない段階では、従前どおり入出金ができるため、一部の相続人が預金を使い込んでしまうリスクがあります。

預金が使い込まれると、その預金を取り戻すことが必要になるなど、深刻な相続トラブルに発展しかねません。
そうならないように、早い段階で銀行に死亡の届出を行うことが望ましいです。葬儀などの対応が一段落したら、遺産分割協議が終わっていなくても、早めに銀行へ死亡の届出を行いましょう。


銀行に死亡届を出すと、口座が凍結される

銀行に対して口座名義人が死亡した旨を届け出ると、その口座は凍結されて入出金ができなくなります。
死亡届によって口座が凍結されるのは、一部の相続人が預金を使い込んでしまうような事態を防ぎ、相続財産を保全するためです。

銀行口座が凍結されると、後述する払戻し制度を利用する場合を除き、相続手続きが終わるまでは口座からお金を引き出せなくなります。
葬儀費用を捻出する必要がある場合などには、銀行に死亡の届出を行う前の段階で、口座からお金を引き出しておきましょう。

ただし、亡くなった家族の口座から引き出したお金を、一部の相続人が使い込んでしまうケースも見られます。
出金するなら明確に用途を決めて、それ以外の用途に使われないようにきちんと監視を行いましょう。
相続手続きの対応を専門家(弁護士や司法書士など)に依頼している場合は、預り金口座で預かってもらうことも選択肢の一つです。


死亡届の提出後、凍結された口座からお金を引き出す方法

銀行に対して家族の死亡を届け出た後、凍結された口座からお金を引き出す方法には、以下の2通りがあります。


  • 預金を相続する人が決まってから、相続手続きを申請する
  • 遺産分割前の払戻し制度を利用する

預金を相続する人が決まってから、相続手続きを申請する

亡くなった家族の預金を相続する人は、以下の方法によって決まります。


  • 遺言書
  • 遺産分割協議
  • 遺産分割調停、審判*1

預金を相続する人が決まってから、銀行に対して相続手続きを申請すると、凍結された口座から預金の払戻しを受けることができます。


遺産分割前の払戻し制度*2を利用する

預金を相続する人がまだ決まっていない段階でも、「遺産分割前の払戻し制度」を利用すれば、相続人が凍結された口座から預金の払戻しを受けられることがあります。

各相続人は、以下のいずれか低い金額を上限として、単独で預金の払戻しを受けることができます。


  • 相続開始時の預金額×1/3×払い戻しを受ける相続人の法定相続分
  • 150万円

また、 家庭裁判所の審判によって認められた場合は、上記の上限を超える額についても預金の払戻しを受けられます。

遺産分割前の払戻し制度は、遺産分割が完了していない段階で、生活費などの資金が必要となった場合に便利です。
三菱UFJ銀行では、以下のフリーダイヤルにて遺産分割前の払戻し制度に関する相談を受け付けています。
相続オフィス 0120-39-1034(月~金曜日 9:00~16:00(土・日・祝日・12/31~1/3を除く))


預金口座の相続手続きの流れ

口座名義人が死亡した旨を銀行に届け出た後、相続手続きが完了すると、相続人が預金の払戻しを受けられます。

預金口座の相続手続きの流れは、以下のとおりです。三菱UFJ銀行を例に解説します*3。


  • 銀行への連絡(死亡届の提出)
  • 相続手続きの必要書類の提出
  • 相続人口座への払い出し

銀行への連絡(死亡届の提出)

まずは、銀行に対して口座名義人が死亡した旨を連絡しましょう。銀行が連絡を受けた時点で、口座が凍結されます。

銀行への連絡方法は、来店・電話・Webフォームなどが挙げられます。三菱UFJ銀行では、本支店や以下の電話・Webフォームにて連絡を受け付けています。

<電話>
相続オフィス 0120-39-1034(月~金曜日 9:00~16:00(土・日・祝日・12/31~1/3を除く))

<Webフォーム>
https://sozoku.bk.mufg.jp/uketsuke/A010


相続手続きの必要書類の提出

銀行の案内に従い、相続手続きの必要書類を準備して提出します。
銀行に提出すべき書類は、預金を相続する人が決まった方法(遺言書、遺産分割協議など)や、遺言執行者の有無などによって異なります。

三菱UFJ銀行の場合は、銀行側から郵送された案内に従って必要書類を準備し、返信用封筒によって「相続オフィス」宛に返送します。
具体的な必要書類については、三菱UFJ銀行のウェブサイト*4をご参照ください。


相続人口座への払い出し

銀行は、提出を受けた相続手続きの必要書類を審査します。
預金を相続する人が適切に決められていることが確認できた場合は、凍結された口座の残高が相続人口座へ払い出されます。

三菱UFJ銀行の場合は、原則としてすべての必要書類が届いてから約2週間で相続人口座への払い出しが行われます。
ただし、ローン・運用性商品・貸金庫など、預金以外の取引がある場合は、さらに長い期間を要することがあります。


まとめ

家族が亡くなった場合は、その家族の口座がある銀行に死亡の届出を行わなければなりません。
銀行への死亡届の提出期限は決まっていませんが、一部の相続人による預金の使い込みなどを防ぐため、早めに死亡の届出を行うことが望ましいです。

死亡の届出によって、亡くなった家族の口座は凍結されます。凍結された口座からお金を引き出すには、原則として相続手続きを完了する必要があります。
ただし例外的に、遺産分割前の払戻し制度を利用すれば、一定の限度額までは各相続人が単独で預金を引き出せます。

死亡届による口座凍結後の相続手続きには、遺産分割協議などを含めると、それなりの期間を要することが多いです。
銀行に死亡の届出を行う前に必要なお金を引き出すことも考えられますが、その場合は他の相続人に預金を使い込まれないよう十分ご注意ください。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。

出典
*1 裁判所「遺産分割調停」
*2 一般社団法人全国銀行協会「ご存知ですか?遺産分割前の相続預金の払戻し制度」
*3 三菱UFJ銀行「三菱UFJ銀行での相続手続のご案内」
*4 三菱UFJ銀行「ご用意いただく書類」


阿部 由羅
あべ ゆら

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

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