早いもので、一年が終わろうとしています。
お正月を迎えるには、なにかとお金がかかるものです。
子どもたちへの「お年玉」はそのひとつでしょう。
なかでも、それぞれにいくら渡せばよいのか?というのは、周囲の大人の行動も気になるものです。
お年玉の相場は?何歳まであげればいい?
ここではいくつかのデータをご紹介していきます。
お年玉の習慣が始まったのは室町時代だという説があります。*1*2
わたしたちはお正月が近づくと鏡餅を供えますが、新しい年になると「歳神様」が訪れ鏡餅に「魂」を込めて帰ることから、一年の最初に賜るものとして「年の賜物(たまもの)」と呼んだことが由来とされています。
この餅をお雑煮としてみんなで食べることで「賜物」を分かち合っていましたが、お餅ではなく品物や金品を渡すこともあり、武士ならば太刀、商人ならば扇子など、年始の贈り物を「お年玉」と称するようになったそうです。
現金を贈る文化が浸透したのは昭和の高度経済成長期頃からで、餅をついたりするよりも手間をかけずに調達できる現金に変わっていったためと見られています。お年玉の「玉」は、もともと「魂」からきているともいえます。
それはさておきお年玉は、自分の子どもであれ親戚の子であれ、「いくらあげればいいんだろう」と不安になるものです。
他の大人から自分の子どもにもらったのに、こちらは同じ金額を包めていなかった。
誰がいくらくれたか比べた時に、恥ずかしい思いをしたくない。
今の歳でこれだけ包んでしまったら、先々どうなるんだろう。
そう迷う人は多いことでしょう。
そこで、大人があげているお年玉の金額を一気にご紹介します。
学研の調査によれば、子どもの年代ごとにあげているお年玉の金額はこのようになっています。
出典)Gakkenキッズネット「【令和のお年玉事情】お年玉の相場は?誰が管理してる?全額貯金?」
年齢によって金額は徐々に上がり、未就学児には1,000円台、小学校低学年では3,000円台、これが小学校高学年から中学生にかけて5,000円台に増やす、というのが多いようです。
1,000円、3,000円、5,000円、1万円というのが年齢に応じた区切りになっています。
面白いことに、子ども自身の目線に立ったアンケート調査もあります。
ネットワークやWebサービス大手のニフティは、「自分がお年玉をあげる側になったら、自分と同い年くらいの人にお年玉をいくらあげたい?」という質問をしたところ、下のような回答を得ています。
出典)ニフティキッズ「みんなのホンネ 調査レポート 小中学生がおじいちゃん・おばあちゃんからお年玉をもらったわり合は89%でトップ」
小学生ならば3,000円〜5,000円、中学生になると5,000円〜1万円。
最初に紹介した「実際に大人があげている金額」と意外と一致しているのが興味深いところです。これは大きな目安になることでしょう。
続いて高校生についてみていきましょう。
高校生に渡すお年玉の金額
出典)Gakkenキッズネット「【令和のお年玉事情】お年玉の相場は?誰が管理してる?全額貯金?」
高校生となると、一万円札の出番のようです。
未就学〜中学生と数字を見てくると、不自然なことではないでしょう。
では、大学生になったら?
ここはみなさん悩みどころなのではないかと思います。
「高校生まで」となんとなく感じている家庭は多いように筆者は感じますが、リクナビの調査によれば、大学生のお年玉事情はこのようになっています。
相場というよりは、これは個々の家庭や親族の構成事情によるのかもしれません。
大学生のお年玉事情
出典)リクナビ 就職ジャーナル「大学1年生に聞きました。お年玉、いくらもらった?」
「もらった」と答えている大学生が多いようです。ただ、これは「祖父母から」というのが多いのではないかと筆者は考えます。
一方で経済的な自立に近づいていく年頃でもあります。生活状況に応じて判断するのが良いでしょう。
また、大学生の場合お年玉を「あげる」方に回ることもあります。
そのような場合は大学生にとってはそれなりの負担になりますから、親から何かあげた方が良いでしょう。「お年玉ってなんだか恥ずかしい」と感じるようであれば「年に一度のちょっとしたお小遣い」という、お年玉という縛りや相場とはあまり関係のない、励ましのようなものでも良いかと思います。
ただ「もらって当たり前」という意識を少しずつ改善していきたい年頃です。
いまは何かと厳しい時代ですが、お年玉目当てで帰省する、というのが良いマインドかどうかは考えてみる必要があります。
では、子どもたちがもらったお年玉の使い道を見ていきましょう。
先ほどのニフティの調査によれば、小中学生の回答は下のようになっています。
出典)ニフティキッズ「みんなのホンネ 調査レポート 小中学生がおじいちゃん・おばあちゃんからお年玉をもらったわり合は89%でトップ」
また、学研の調査では下のような結果が出ています。
出典)Gakkenキッズネット「【令和のお年玉事情】お年玉の相場は?誰が管理してる?全額貯金?」
両者の調査結果を合わせて考えると、「貯金」「ある程度は子どもが欲しいものを買い、残りは貯金」が多数派のようです。
いずれにせよ、全額をそのまま一気に使うケースはそれほど多くはない、ということになりそうです。
お年玉は、親同士にとっては「交換」のような意味合いも持つことでしょうから、その金額には神経質になりがちです。
ただ、いくらあげればいいのかということを悩むのはあなただけではありませんから、親戚内であれば事前に金額を打ち合わせておくのが良いでしょう。
もちろん、そうはいかないケースもあります。
筆者は子どもの頃、父親の同僚で子を持たない大人たちからもよくお年玉をもらったものです。ひとつには若い独身の後輩、もうひとつには父と似たような歳でありながらも、体質的に子どもをもうけられなかったご夫妻でした。
そういった立場の大人の方が、相場より多い金額のお年玉を子どもにあげがちでした。
これらは、親からすれば「同じ形で返せない」類のものです。
やはりいくらもらったのかを子どもから聞いておき、別の返し方を考えるのが良いでしょう。外食や自宅に招きご馳走をするなど、いわゆる「消え物」でさりげなく返すというのが最も身近な方法でしょう。
また、お年玉は、子どもにお金をもらうというのはどういうことか、どう使うか、といったことを考えさせる良いきっかけでもあります。
例えばお年玉を入れておく子ども名義の口座を作り、子どもが「持っているお金(=収入)」に対して「欲しいものを買うとどうなるか(=支出)」といったことを親子間の話題にするのも良いことです。
誰からもらったお金かなども通帳に記載していけば、思い出にもなりますしお金に色をつける着想もできることでしょう。
なお、お年玉を貯めるために子ども名義の預金口座を作る場合には注意が必要です。
純粋にもらったものだけを貯めていく分にはトラブルは起きにくいのですが、例えば親がそこに積み立て預金のような入金を同時に行ってしまうと、税務署に子どもの所有と認められないことがあり贈与税が発生することがあります。*3
ただ、自分で自分のお財布や口座を持ち、その収支に関心を持つのは良いことです。
また、もらったお年玉をどのように使っているかを、機会があればもらった相手に伝えるのも良いかと思います。
「年」の「魂」という由来どおり、子どもの成長に役立てることができているならば、あげるほうにも甲斐があり、ひとつの文化として素晴らしいものと感じることができるでしょう。
本コラムは執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典
*1 パナソニック EW友の会「お年玉の始まりは?」
*2 Gakkenキッズネット「【令和のお年玉事情】お年玉の相場は?誰が管理してる?全額貯金?」
*3 日本経済新聞「子ども名義の口座を作ろう ネット銀行で親も確認」