
アサヒグループホールディングス(以下、アサヒGHD)が2025年9月にサイバー攻撃を受けたことを発表しました。幅広い業務に今もなお支障を来たしています。
さらに翌10月にはアスクルがサイバー攻撃を受け、受注や出荷業務を停止する事態に追い込まれました。近年、大企業が次々とサイバー攻撃に遭い、被害を受けています。
年々巧妙化するサイバー攻撃ですが、両社に共通するのは「ランサムウェア」と呼ばれる攻撃手法であることです。
2024年に大きな話題になったKADOKAWAへのサイバー攻撃も、同様にランサムウェアによるものでした。
近年のサイバー攻撃の傾向と事例、そして株価などへの影響を解説していきます。
アサヒGHDがサイバー攻撃によるシステム障害を発表したのは、2025年9月29日のことです。
出典)アサヒGHD「サイバー攻撃によるシステム障害発生について」
国内グループ各社の受注・出荷業務が停止し、それにともなって国内の主要工場の生産を一時的にストップせざるを得なくなってしまいました。*1
影響はアサヒGHDだけにとどまりません。
アサヒGHDで生産が減ってしまったビールの需要に応えるために、飲食店では酒類を他社製品に切り替える動きが出始めました。これによってキリンやサントリーがビールの出荷制限や出荷調整をかけることになります。
本来の想定を超える受注に対応できなくなったためです。さらに百貨店ではお歳暮用のアサヒビールの販売を休止しただけでなく、供給が追いつかなくなったキリン、サッポロもお歳暮用ギフトの販売を停止する事態に陥っています。
ビールが全体的に品薄になり、プロ野球パ・リーグでクライマックスシリーズを制覇したソフトバンクがビールかけをやめ、シャンパンに切り替えたという話題もあります。*2
その後、ロシアが拠点とみられるサイバー攻撃集団「Qilin」が、10月8日までに闇サイトで犯行声明を出していたことが明らかになります。*3
アサヒGHDの財務情報や事業計画書、従業員の個人情報など少なくとも27ギガバイトの情報を盗んだと主張したほか、2025年8月に判明した日産自動車子会社へのサイバー攻撃にも関与したと声明を出しています。さらに製造や建設、医療施設など幅広い国内組織を攻撃したとも主張しています。
なお、アサヒGHDのシステム復旧は2026年2月になる見通しで、攻撃から4ヵ月以上かかることになります。*4
翌10月には、アスクルがサイバー攻撃に遭い、長期にわたってオンラインショップで商品の出荷ができない状態に追い込まれました。
出典)アスクル(2025年11月24日閲覧)
その後、今度は「RansomHouse(ランサムハウス)」と名乗るハッカー集団が犯行声明を出し、1.1テラバイトの情報を盗んだと主張、一部を公開していることが明らかになりました。
RansomHouseはさらに、過去には米半導体大手や他の日本企業も攻撃したと主張しています。*5
こちらでも同様に、同業である大塚商会の「たのめーる」で注文が急増し法人会員の登録が数週間ほどかかる状態になり、コールセンターへの問い合わせも増加、電話がつながりにくい状況に陥りました。*6
実はアサヒGHDとアスクルに攻撃を仕掛けた集団には共通点があります。
「ランサム攻撃」という手法を用いていることです。
サイバー攻撃には色々な形がありますが、ここ10年にわたって最大の脅威とされているのが、アサヒGHDやアスクルを襲った「ランサム攻撃」という手法です。情報セキュリティ上の脅威として、10年連続で10位以内にランク入りしています。

2025年の情報セキュリティ10大脅威
出所)情報処理推進機構「情報セキュリティ10大脅威 2025 組織編」
「ランサム」は英語でRansom=身代金、という意味を持ちます。
文字通り、「ランサムウェア」と呼ばれるウイルスを使ったサーバーの暗号化や盗んだ情報を「人質」に取って金銭を要求するものです。
2024年に大きな話題になったKADOKAWAへのサイバー攻撃にもランサムウェアが使われています。「BlackSuit(ブラックスーツ)」という集団が犯行声明を出し、個人情報の流出も確認されました。*7
サイバー攻撃によって企業は、業務停止にともなう売り上げ減少だけでなく、さまざまな経済的損失を負うことになります。
過去にはこのような事例があります。
出典)トレンドマイクロ「サイバー攻撃の被害額から考えるセキュリティ」
まずはシステム復旧費用、業界によっては契約履行が不可能になる損害賠償という直接的な損害もそうですが、対応に追われている間に新規ビジネスの機会損失、顧客の同業他社への顧客流出など、挙げればキリがありません。
また、株価も、アサヒGHD、アスクルともにサイバー攻撃被害の発表後、株価は下落したままです。*8*9
いずれも完全復旧が見込まれるようになれば株価は上昇する可能性はありますが、今のところ、値動きは不安定といえます。
また、アサヒGHDの生産・出荷停止の影響を受けたサッポロホールディングスは値上がりしています。*10
サイバー攻撃の被害は当該企業だけでなく、同業他社やサプライチェーン企業の株価にも影響を与えます。周辺の関連銘柄にも注目してみましょう。
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本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
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出典
*1 日本経済新聞「アサヒGHD、サイバー攻撃の影響続く 動向まとめ読み」
*2 読売新聞「ソフトバンクのCS突破祝勝会、「ビールかけ」はシャンパンに変更…アサヒのシステム障害で品薄に配慮」
*3 日本経済新聞「ロシア系集団、日本も標的 「Qilin」アサヒ障害関与か」
*4 日本経済新聞「アサヒGHD、26年2月にシステム復旧へ 経営陣が27日会見」
*5 日本経済新聞「アスクルのサイバー攻撃、ハッカー集団が犯行声明 盗んだデータを公開」
*6 日本経済新聞「アスクル、佐川急便に配送委託 サイバー攻撃で自社物流の復旧見通し立たず」
*7 朝日新聞「新たなデータ流出か サイバー攻撃を受けたKADOKAWAが発表」
*8 *9 *10 日本経済新聞チャート
