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働くことを諦めない!子育てしながら働きやすい仕事には何がある?
働くことを諦めない!子育てしながら働きやすい仕事には何がある?

働くことを諦めない!子育てしながら働きやすい仕事には何がある?

2025/06/17に公開
提供元:横内美保子

現在は子育てをしながら働く女性が増えています。
しかし一方で、出産を機に正規雇用から非正規雇用へと雇用形態を変える女性が多いこともわかっています。

子育てはそれだけでも大変かつ大切な「しごと」。
子育てをしながら仕事を続ける女性にとって、働きやすい仕事や職場とはどのようなものでしょうか。

子育てしながら働いている女性の状況を明らかにした上で、筆者の経験もシェアしながら、次のライフステージを見据えたポテンシャルを探ります。



子育てをしながら働いている女性の割合

子育てをしながら働いている女性は、現在どのくらいいるのでしょうか。
総務省が2022年に実施した「就業構造基本調査」(2022版)で把握しましょう。
この調査は5年毎に行われています。

育児をしながら仕事をしている人は男女合わせて821.4万人で、その割合は育児をしている人の85.2%と、前回調査の2017年に比べ6.0ポイント上昇しています。*1

男女別にみると、男性は438.6万人で、育児をしている男性の99.0%にあたりますが、もともと高い割合ということもあり、ほぼ横這いです。
一方、女性は382.7万人で、育児をしている女性の73.4%にあたり、この割合は5年前に比べると9.2ポイントも上昇しています。

こうしたデータから、子育てをしながら働いている女性が増えている ことがわかります。
しかもこの調査の「育児」は未就学児を対象にしているため、小学生以上の子どもを育てている人も含めると、その割合はもっと高くなることが推測できます。


子育て中の女性の働き方と勤務先の業種

子育て中の女性はどのような働き方をしているのでしょうか。


正規雇用比率の低下

ここで、働いている女性の割合と雇用形態を年代別にみてみましょう(図1)。*2


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図1 女性の年齢階級別就業率

出典)厚生労働省「女性活躍及び仕事と育児の両立支援について」p.2


この図の赤い実線に注目してみましょう。
アルファベットの「L」字を描いていることから、「L字カーブ」と呼ばれています。

正規の職員・従業員(以下、「正規」)は25~29歳が約6割でピークとなり、その後、年齢が上がるにつれてその割合が減るとともに、「パート・アルバイト」などの非正規職員・従業員(以下、「非正規」)の割合が増加しています。

こうした状況は、出産・育児によるものとみられています。
正規として働いていた女性の多くが、子育てのために非正規へと働き方を変える という状況があるのです。


子育て中の女性の雇用形態

子育て中の女性の働き方について、もう少し詳しくみていきましょう。
次にみるのは、小学校4年生以下の子どもの育児をしながら働いている人を対象にした「仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査」の結果です(図2)。*3


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図2 育児中の非正規社員の就労形態

出典)日本能率協会総合研究所「厚生労働省委託事業 仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書 〈労働者調査〉」p.12


非正規の女性のうちもっとも割合が高いのは、「契約期間の定めのないパートタイム」(50.7%)で、次に割合の高い「契約期間の定めがあるパートタイム」(28.4%)を合わせると、パートタイマーとして働いている女性が約8割を占めています。

このことから、子育てをしながら非正規として働いている女性はその大半がパートタイマー であることがわかります。

ただし、フルタイムで働きたい場合には、勤務時間を1日6時間とする「育児のための短時間勤務制度」の利用が可能なので、検討するといいでしょう。*2


勤務先の業種

次に、育児中の女性はどのような業種の会社で働いているのでしょうか(図3)。*3


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図3 勤務先の業種

出典) 日本能率協会総合研究所「厚生労働省委託事業 仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書 〈労働者調査〉」p.16


この図をみると、正規の女性は「医療、福祉」(33.9%)がもっとも割合が高く、次いで「製造業」、「その他サービス業(宿泊業、飲食サービス業以外のサービス業)」となっています。
一方、非正規の場合も、もっとも割合が高いのは「医療、福祉」(28.6%)で、「その他サービス業」と「小売業、卸売業」がそれに続いています。

子育て中の多くの女性が働いている職場では、両立支援の制度を導入するなど、働きやすい職場環境を整えている可能性も あります。
職場を選ぶ際には確認してみるといいでしょう。


仕事を続けるために利用したかった支援・サービス

次に、離職した女性はどのような支援やサービスがあれば仕事を続けられたと思っているのでしょうか(図4)。*3


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図4 育児中の仕事を続けるために利用したかった支援・サービス

出典)日本能率協会総合研究所「厚生労働省委託事業 仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書 〈労働者調査〉」p.260


正規・非正規にかかわらず、「気兼ねなく休める休業、休暇制度」がもっとも割合が高く、どちらも半数を超えています。

また、「子育てに合わせて柔軟に働ける勤務制度」と「安心して子どもを預けられる預け先」も40%以上の割合を占めています。
このうち、「子育てに合わせて柔軟に働ける勤務制度」とは、フレックスタイム制度、始業・終業時間の繰上げ・繰下げなどを指します。

これらを総合すると、勤務先の企業に「気兼ねなく休める休業、休暇制度」「子育てに合わせて柔軟に働ける勤務制度」が整っていれば、子育てをしながら働き続けられる可能性が高い ということになります。
また、「安心して子どもを預けられる預け先」を確保することもポイント になりそうです。

幼稚園・保育園や小学校に通う子どもは、感染症をもらってくることが多く、急に熱を出したりするのも珍しいことではありません。
また、保護者会や運動会、文化祭など、保護者としてぜひ参加したい行事もあるでしょう。

そんなときに、気兼ねなく遅刻したり休んだりできる制度や預け先があれば、安心して働きつづけることができます。


キャリア形成・両立支援の活用

現在は子育てをしながら働く人のための、さまざまな両立支援があります。
また、女性はライフステージによって生活が大きく変化するため、将来を見すえたキャリア形成も視野に入れることが大切です。


キャリア形成とリスキリング

国は主体的な能力開発やキャリア形成を支援 しています。

たとえば、今後のキャリアについて不安を抱えていたり、キャリア形成についてじっくり考えたいときに利用できる制度があります。

キャリア形成・リスキリング支援センターや全国のハローワークに設置されている相談コーナーでは、キャリアコンサルティングを無料で行っています。

厚生労働省「キャリア形成 リスキリング 相談コーナー」

また、厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了したときに、教育訓練経費の一部が支給される「教育訓練給付制度」もあります。

この給付金の対象は多くの分野にまたがり、専門性によって受講料の20%〜80%、上限10万円~64万円が支給されます。
必要に応じて、キャリア形成とも抱き合わせて検討してみてはいかがでしょうか。

厚生労働省「教育訓練給付制度」


正社員化・待遇改善

非正規として働いている企業内でキャリアアップを図るための支援制度も あります。*2
「正社員化コース」は有期雇用労働者などを正社員化する制度で、勤務地限定・職務限定・短時間正社員など、多様な正社員になることが可能です。

また、有期雇用で短時間働いている人の週所定労働時間を3時間以上延長して、社会保険を適用する「短時間労働者労働時間延長コース」などの待遇改善支援もあります。

これらの取り組みをした企業には「キャリアアップ助成金」が支給されます。
現在働いている企業でキャリアアップを図ったり、待遇改善を望んだりする場合には、企業の担当部署に問い合わせてみてはいかがでしょうか。


次のライフステージを見据えて

最後に筆者の体験をシェアし、次のライフステージを見据えた取り組みの重要性をお伝えしたいと思います。

筆者は結婚してから夫が経営する会社の経理を担当していましたが、下の子どもが3歳で幼稚園に入園するのと同時に仕事を変え、日本語学校の非常勤講師になりました。
子どもたちが親元を離れ大学の常勤の仕事を得るまでには、それから15年もの時間が必要でした。

その間、周囲のサポートや運にも恵まれましたが、それでもなお乗り越えなければならない障壁がいくつもありました。
そうした経験から、子育て中の女性が十分に働ける環境が整っているとはいえないことを、身をもって知っています。

しかし、筆者がそうであったように、女性はライフステージによって生活が大きく変化します。
子どもはいずれ大きくなりますし、社会も変わっていきます。
そのときのために、次のステージを見据えた取り組みを視野に入れるのも有益 ではないでしょうか。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。


出典 
*1 総務省「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」(2022年7月21日)p.23, 68
*2 厚生労働省「女性活躍及び仕事と育児の両立支援について」(2023年6月27日)p.2, 6, 8
*3 日本能率協会総合研究所「厚生労働省委託事業 令和4年度 仕事と育児の両立等に関する実態把握のための調査研究事業 仕事と育児等の両立支援に関するアンケート調査報告書 〈労働者調査〉」(2023年3月)p.5, 12, 16, 260



横内 美保子
よこうち みほこ

博士(文学)。総合政策学部などで准教授、教授を歴任。専門は日本語学、日本語教育。高等教育の他、文部科学省、外務省、厚生労働省などのプログラムに関わり、日本語教師育成、教材開発、リカレント教育、外国人就労支援、ボランティアのサポートなどに携わる。パラレルワーカーでもあり、ウェブライター、編集者、ディレクターとして分野横断的な取り組みを続けている。

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