2024年6月に「改正子ども・子育て支援法」が成立し、2026年度から子ども・子育て支援金制度が創設されることになりました。*1
少子化対策の財源に充てるため、新たに支援金の徴収がスタートします。子ども・子育て支援金は誰がいくら負担するのでしょうか。
本コラムでは、子ども・子育て支援金制度の概要や徴収開始時期、負担額の目安、対象となる支援内容について解説します。
子ども・子育て支援金制度とは、子育て世帯を支える新しい分かち合い・連帯の仕組みです。*2
こども未来戦略(令和5年12月22日閣議決定)の「加速化プラン」に盛り込まれた少子化対策の財源に充てるため、医療保険(健康保険、国民健康保険など)の保険料とあわせて支援納付金が徴収されます。徴収された支援納付金は、さまざまな少子化対策に使われます。
こども未来戦略とは、国のこども・子育て政策の基本的な考え方や課題、今後の取り組みなどをまとめたものです。児童手当の抜本的拡充などの具体的施策は、加速化プランとしてできる限り前倒しで実施します。*3
こども未来戦略には、少子化対策として子育て支援の拡充が盛り込まれています。ただし、少子化対策を充実させるには、給付などを支える経済的基盤を確保しなくてはなりません。
加速化プランの実施に必要な財源を確保するため、社会全体で子育て世帯を支える仕組みとして子ども・子育て支援金制度が創設されました。*2
こども未来戦略では、「少子化は日本が直面する最大の危機」と位置づけています。若年人口が急減する2030年代に入るまでが少子化トレンドを反転させるラストチャンスとして、さまざまな具体的施策が盛り込まれています。*3
子ども・子育て支援金はいつから徴収が始まるのでしょうか。導入スケジュールや負担額の目安についてみていきましょう。
子ども・子育て支援金は2026年度(令和8年度)から徴収が開始されます。2028年度まで段階的に導入され、支援納付金の総額は2026年度0.6兆円、2027年度0.8兆円、2028年度1兆円となる見込みです。*2
なお、2024~2028年度の各年度については、制度が段階的に構築されるまでのつなぎの財源として子ども・子育て支援特例公債が発行されます。
子ども・子育て支援金は、医療保険(健康保険など)の被保険者が医療保険料とあわせて納付する仕組みになっています。加入者一人当たりの支援金額(平均月額)は以下のとおりです。
出典)厚生労働省「子ども・子育て支援金制度の概要についてP9」
全制度平均は月額250円~450円です。会社員や公務員が加入する「被用者保険」、自営業者が加入する「国民健康保険」、75歳以上の高齢者が加入する「後期高齢者医療制度」があり、それぞれ金額は異なります。
ただし、加入者には保険料負担のない扶養親族なども含まれています。被用者保険の場合、保険料負担のない加入者を除いた被保険者一人当たりの金額は月額450円~800円で、年間5,400円~9,600円の負担増となります。
また、被用者保険は加入する医療保険によっても負担額は異なります。中小企業が加入する協会けんぽに比べると、大企業が加入する保険組合、公務員が加入する共済組合は金額が高い傾向にあります。
なお、実際の負担額は年収によって変わります。子ども家庭庁の試算によれば、2028年度の年収別の支援額(月額)の目安は以下のとおりです。
※夫婦子1人の3人世帯(夫の給与収入のみ)のケース
出典)厚生労働省「子ども・子育て支援金制度の概要についてP9」をもとに筆者作成
支援金が使われる事業は子ども・子育て支援法で定められており、その他の事業・目的で使用されることはありません。*4
ここでは、子ども・子育て支援金の対象となる支援制度について説明します。
児童手当は2024年10月分から拡充されました。従来からの主な変更点は以下4つです。*5
これまでは中学生まででしたが、高校生年代(18歳の誕生日以後最初の3月31日まで)も支給対象になり、第3子以降の支給額も増額されました。
主たる生計者の所得制限が撤廃されたため、所得にかかわらず全額支給されます。また、支払回数が年3回から年6回に変更されて活用しやすくなったのもポイントです。*5
妊婦のための支援給付は、妊娠している人を対象とした給付制度です。令和4年度補正予算から始まった「出産・子育て応援交付金事業」が制度化され、2025年度(令和7年度)から実施されます。*6
市区町村が妊婦であることを認定すると5万円が支給されます。その後、妊娠している子どもの人数の届出を行うと、さらに「子どもの人数×5万円」が支給される仕組みです。
妊娠がわかったら、まずは市区町村の窓口で申請を行いましょう。
出生後休業支援給付とは、子の出生直後の一定期間において、夫婦ともに14日以上の育児休業を取得した場合に最大28日間支給される給付金です。
2025年4月に制度が創設されました。父親は産後8週間まで、母親は産後16週間までの期間が対象です。
出生時育児休業給付金または育児休業給付金とあわせて、手取り額の10割相当が支給されます。*7
なお、配偶者が自営業者(雇用される労働者ではない)などの一定の要件を満たす場合、配偶者の育児休業は要件となりません。*7
育児時短就業給付とは、2歳未満の子を養育するために時短勤務をした場合に、時短勤務前に比べて賃金が低下するなどの要件を満たすと支給される給付金です。2025年4月に制度が創設されました。
原則として、時短勤務中に支払われた賃金の10%相当額が支給されます。
支給対象期間は、基本的に時短勤務を開始した月から終了した月までとなります。*8
こども誰でも通園制度は、保護者の就労状況に関係なく保育所などに通園できる制度です。2025年度から地域子ども・子育て支援事業として制度化されました。2026年度からは、法律に基づく新たな給付として全国の自治体で実施されます。*9
保育所などに通っていない0歳6ヵ月~満3歳未満の子が対象です。月10時間の枠内で時間単位で利用できます。
子どもにとっては、家庭とは異なる経験ができる機会となります。保護者にとっては、育児に関する負担感の軽減などが期待できるでしょう。*10
子を養育する自営業者・フリーランスなど(国民年金第1号被保険者)について、その子が1歳になるまで国民年金保険料が免除される措置が創設されます。2026年10月1日から施行される予定です。*11
子を養育する国民年金第1号被保険者であれば、父母ともに措置の対象となります。対象期間は最大12ヵ月ですが、産前産後免除が適用される母親については最大9ヵ月です。所得要件や休業要件はなく、幅広い被保険者が支援対象となります。
子ども・子育て支援金は、2026年度から徴収が開始されます。医療保険料とあわせて納付することになり、全制度平均で加入者一人あたり月額250円~450円(年間3,000円~4,500円)の負担増となる見込みです。
今回の法改正は子育て世帯だけでなく、高齢者も含めて幅広い世代に影響を与えるため、本制度の内容を理解しておきましょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典
*1 NHK「「支援金制度」 子ども・子育て支援法などの改正法 成立」
*2 厚生労働省「子ども・子育て支援金制度について」
*3 内閣官房「こども未来戦略」
*4 こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度のQ&A(Q2.子ども・子育て支援金は何に使われるのですか?)」
*5 政府広報オンライン「児童手当が大幅拡充!対象となるかたは必ず申請を」
*6 こども家庭庁「妊産婦への伴走型相談支援と経済的支援の一体的実施(妊婦等包括相談支援事業・妊婦のための支援給付)」
*7 厚生労働省「2025年4月から「出生後休業支援給付金 」を創設します」
*8 厚生労働省「2025年4月から「育児時短就業給付金」を創設します」
*9 こども家庭庁「こども誰でも通園制度について」
*10 こども家庭庁「こども誰でも通園制度(利用者向けリーフレット)」
*11 こども家庭庁「国民年金第1号被保険者の育児期間における保険料免除措置について」