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日本国債の格付けの動向は?過去の推移や世界主要国との比較を紹介
日本国債の格付けの動向は?過去の推移や世界主要国との比較を紹介

日本国債の格付けの動向は?過去の推移や世界主要国との比較を紹介

2024/09/15に公開
提供元:大西勝士

国債の格付けは、その国の財務健全性を表す指標の1つです。日本国債の格付けに変更があると、経済ニュースで大きく取り上げられるほど注目を集めます。
日本国債の格付けはどこが行っていて、過去の推移はどうなっているのでしょうか。

本コラムでは、日本国債の格付けの動向や過去の推移、世界主要国との比較を紹介します。


そもそも「格付け」とは?

格付けとは、債券の元利金の支払いの確実性をアルファベッドや数字などで示した指標です。
格付会社がそれぞれの調査に基づいて評価します。最も評価が高いのがAクラスで、Bクラス、Cクラスと下がっていき、デフォルト(債務不履行)が発生するとDが付与されます。*1

デフォルトとは、国の財政難などを理由に債券の利払いや償還が約束通りに行われないことです。*2

国が発行する国債についても、民間評価機関である格付会社が元利金支払いの確実性を調査・評価し、格付けを付与しています。
格付会社によって評価基準に違いがあるため、同じ債券でも異なる格付けが付与されることがあります。*3


国内外の主要格付会社

海外の主要な格付会社は次の3つです。*4


  • Moody’s(ムーディーズ)
  • S&P(スタンダード・アンド・プアーズ)
  • Fitch Ratings(フィッチ・レーティングス)

国内の主要格付会社には、R&I(格付投資情報センター)やJCR(日本格付研究所)があります。


格付けの表示例

以下は、JCRの定義をもとに作成した格付けの表示例です。


格付けの表示例

引用)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「債券投資のはじめ方」


最上級はAAA(トリプルエー)で、一般的にはBBB(トリプルビー)が信用力の分岐点とされています。
BBB以上はデフォルトリスクが比較的低い投資適格債券、BB(ダブルビー)以下は投機的格付け債券と呼ばれます。*5

AAからBまでは格付記号に「+」「-」を付け、同じ等級内での相対位置を区分します。たとえば、「AA+」「AA-」といった具合です。


日本国債の格付けの推移

主要格付会社による日本国債の格付けの推移は以下のとおりです。


日本国債の格付けの推移

引用)財務省「債券管理リポート2024-国の債務管理と公的債務の現状」p122


日本国債の格付けは、海外と国内の格付会社で推移に違いが見られます。

海外格付会社は、平成10年(1998年)11月17日にムーディーズがAaa(AAA相当)からAa1(AA+相当)に引き下げて以降、日本国債の格付けを複数回見直しています。*6

一方、国内格付会社は、平成23年(2011年)12月21日にR&IがAAAからAA+に引き下げました。
この格下げは国内機関としては初めてのことで、以降は日本国債の格付けに動きは見られません。
*7

2024年5月22日現在、主要格付会社による日本国債の格付けと見通しは以下のようになっています。

<日本国債の格付け状況(2024年5月22日現在)>


日本国債の格付け状況

出所)財務省「債券管理リポート2024-国の債務管理と公的債務の現状」p122をもとに筆者作成


世界主要国との比較

ムーディーズによる世界主要国の国債格付けの推移は以下のとおりです。


世界主要国の国債格付けの推移

引用)財務省「国債市場動向と日本国の信用とのかかわり 」p6


米国国債とドイツ国債は最上位のAaaをキープしています。英国国債はたびたび格下げされている一方で、韓国国債は格上げされていることがわかります。

なお、米国国債の格付けについて、最上位のAaaを維持しているのはムーディーズのみです。
2011年以降、S&PはAA+の格付けを付与しています。2023年8月には、フィッチが最上位のAAAからAA+に1段階引き下げています。
*8

ムーディーズも、2023年11月に米国国債の見通しを安定的からネガティブに引き下げました。米財政赤字の高止まりと債務支払い能力の低下を理由としています。


日本国債に対する海外主要格付会社の評価ポイント

主要格付会社は、日本国債についてどのような点に注目しているのでしょうか。ここでは、海外格付会社による評価のポイントを紹介します。


日本国債の強み・格上げの基準

日本国債について、海外格付会社は以下のような点を強みとして評価しています。


  • 安定的な成長、制度とガバナンスの有効性の強さが経済成長を支える
  • 非常に強力な対外決済ポジション

日本が海外に保有する資産から負債を差し引いた対外純資産は、2023年末時点で471兆3,061億円です。
2022年比で51.3兆円(12.2%)増加し、33年連続で世界最大となっています。*9

経済や社会の安定性に加えて、強力な対外決済ポジション(海外への支払いに充てられる資産)があることから、日本国債は「安定的」との見通しを得ていると考えられます。

日本国債の格付けを引き上げる基準としては、「財政健全化と債務削減の継続的進展」「成長促進と高齢化社会の問題緩和」などを挙げています。


日本国債の弱み・格下げの基準

一方で、海外格付会社は以下の点を日本の弱みと見ています。


  • 巨額な政府債務、低い潜在成長率
  • 日本の人口動態、高齢者依存率

2023年時点における普通国債の累積残高は対GDP比258.2%で、G7では最悪の水準となっています。*10
普通国債とは、さまざまな歳出をまかなうために発行される国債です。公共事業の財源となる「建設国債」、国債の償還資金を調達する「借換債」なども含まれます。*11

また、人口動態が現状のまま推移した場合、高齢化率(65歳以上)は2014年の26.0%から、2060年には39.9%まで上昇すると予測されています。*12

日本国債の格付けをさらに引き下げる基準としては、「大幅な財政赤字の継続」「経済成長率が持続的に他国対比で改善しない」などが挙げられています。


まとめ

日本国債の格付けは国内と海外の格付会社で差はあるものの、いずれもAクラスを維持しており、見通しも「安定的」となっています。
ただし、巨額な政府債務や潜在成長率の低さ、人口動態など、格付けが引き下げられるリスクもあります。

日本国債の格付けの変更は、国債利回りや株価などに影響を与える可能性があるため、今後の動向を注視しておきましょう。




本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。

*1出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「用語解説 格付(かくづけ)」
*2出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「用語解説 デフォルト」
*3出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「用語解説 格付会社」
*4引用)財務省「国債市場動向と日本国の信用とのかかわり」p7
*5出所)三菱UFJモルガン・スタンレー証券「債券投資のはじめ方」
*6出所)財務省「債券管理リポート2024-国の債務管理と公的債務の現状」p122
*7出所)Bloomberg「R&I:日本国債AA+に、国内機関初の下げ-財政調整力欠く(訂正)」
*8出所)ロイター「米国債格付け見通し「ネガティブ」に引き下げ=ムーディーズ」
*9出所)日本経済新聞「日本の対外純資産、33年連続で世界最大 23年末471兆円」
*10出所)三菱UFJリサーチ&コンサルティング「歳出削減による政府債務へのアプローチ~膨張する地方への財政移転と地方制度の課題~」
*11出所)日本銀行「国債にはどのような種類がありますか?」
*12出所)内閣府「選択する未来-人口推計から見えてくる未来像- 第2章 人口・経済・地域社会の将来像 (2)人口構成」


大西 勝士
おおにし かつし

金融ライター(日本FP協会 AFP認定者)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで記事を執筆中。得意領域は投資信託、不動産、税務。

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