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【弁護士が解説】年収の壁が178万円に引き上げ 私たちの手取りはどう変わる?働きたいだけ働いてもOK?
【弁護士が解説】年収の壁が178万円に引き上げ 私たちの手取りはどう変わる?働きたいだけ働いてもOK?

【弁護士が解説】年収の壁が178万円に引き上げ 私たちの手取りはどう変わる?働きたいだけ働いてもOK?

2026/03/19に公開
提供元:阿部由羅

令和7年度以降、いわゆる「年収の壁」を引き上げる税制改正の動きが活発化しています。

令和8年度の税制改正大綱*1では、所得税に関する年収の壁を178万円に引き上げる旨が明記されました。特にパート勤務などをしている方は、年収の壁の引き上げによって手取りがどのように変わるのかを把握しておきましょう。

本記事では「年収の壁」について、種類や近年の改正動向などを解説します。



「年収の壁」とは?

いわゆる「年収の壁」とは、収入や所得がその水準を超えると税金や社会保険料が課されるようになる額を意味します。

「年収の壁を少しでも超えると損をする」というイメージが影響して、超えないように「働き控え」をする人が多いことが社会的に問題となっています。少子高齢化によって労働力人口が減少している昨今では、このような状況の改善が急務です。

また、近年では物価上昇の傾向も顕著であるため、税負担を軽減して国民の生活を支える必要性が高まっています。

これらの状況を背景として、令和7年度以降、年収の壁を引き上げる税制改正の動きが活発化してきました。


「年収の壁」の主な種類|最近の改正動向も解説

「年収の壁」は税金や社会保険料について問題となるところ、主に以下の3つに分類されます。


  • 住民税に関する「年収の壁」
  • 所得税に関する「年収の壁」
  • 社会保険料に関する「年収の壁」

それぞれいくらが「年収の壁」なのか、超えるとどうなるのかについて、最近の改正動向にも触れながら解説します。


住民税に関する「年収の壁」

年収が一定水準を超えると、住民税が課されるようになります(=住民税に関する「年収の壁」)。

住民税の税率は10%で、年収の壁を超えた部分のみに課されます。したがって、超えたとしても手取りがガクッと減るわけではありません。

住民税に関する年収の壁の金額は、給与所得控除の最低額と、住民税の非課税限度額の合計額です。
令和7年度住民税(令和6年の所得に応じて課税)については100万円でしたが、令和8年度住民税(令和7年の所得に応じて課税)については110万円に引き上げられました。

令和9年度以降の住民税に関する年収の壁がどうなるのかは、現時点で決まっていません。


所得税に関する「年収の壁」

所得税については、主に以下の3つの「年収の壁」が問題になります。


  • 所得税が課されるライン
  • 扶養控除を受けられるライン
  • 配偶者特別控除を満額受けられるライン

所得税が課されるライン

年収が一定水準を超えると、所得税が課されるようになります。超えた部分のみに所得税が課されるので、超えたとしても手取りがガクッと減るわけではありません。

所得税が課されるラインの金額は、給与所得控除の最低額と、基礎控除の最高額の合計額です。
令和6年度までは103万円でしたが、令和7年度については160万円に引き上げられました。さらに令和8年度の税制改正大綱には178万円に引き上げる旨が明記されました。


扶養控除を受けられるライン

「扶養控除」とは、12月31日現在の年齢が16歳以上で、年間の合計所得金額が一定水準以下の扶養親族(配偶者を除く)を扶養している人が受けられる所得控除です。

扶養している親族の年間合計所得が一定水準を超えると、扶養控除を受けられなくなります。38万円~63万円の扶養控除が0円になるため、手取りがガクッと減ります。

扶養控除を受けられるラインの金額は、給与所得控除の最低額と、扶養親族の年間合計所得の上限額の合計額です。
令和6年度までは103万円でしたが、令和7年度については123万円に引き上げられました。

さらに令和8年度の税制改正大綱では、給与所得控除の最低額と扶養親族の年間合計所得の上限額を各4万円引き上げる旨と、令和8年度・令和9年度については給与所得控除の最低額をさらに5万円引き上げる旨が明記されました。
その結果、扶養控除を受けられるラインの金額は136万円となります。


配偶者特別控除を満額受けられるライン

年間の合計所得金額が一定水準以下の配偶者を扶養しており、自分の所得が1000万円以下の人は「配偶者控除」または「配偶者特別控除」を受けられます。

扶養している配偶者の年間合計所得金額が一定以下なら配偶者控除が適用され、それを超えると配偶者特別控除に移行します。配偶者特別控除の額は、扶養している配偶者の所得額が増えるにつれて下がっていきます。

現行法では、配偶者控除の額と配偶者特別控除の最高額は同額です。
配偶者特別控除が満額適用される配偶者の年収の上限額が「年収の壁」と呼ばれています。超えると数万円ずつ控除額が減るため、超えない場合よりも損をするケースが出てきます。

配偶者特別控除に関する「年収の壁」の額は、給与所得控除の最低額と、満額適用される年間合計所得の上限額の合計額です。
令和6年度までは150万円でしたが、令和7年度については160万円に引き上げられました。

さらに令和8年度の税制改正大綱では、給与所得控除の最低額を4万円引き上げる旨と、令和8年度・令和9年度については給与所得控除の最低額をさらに5万円引き上げる旨が明記されました。その結果、配偶者特別控除に関する「年収の壁」の額は169万円となります。



社会保険料に関する「年収の壁」

社会保険料については、主に以下の2つの「年収の壁」が問題になります。


  • 社会保険の加入義務が生じるライン
  • 社会保険の扶養から外れるライン

社会保険の加入義務が生じるライン

社会保険の適用事業所に勤務し、下記の要件をすべて満たす短時間労働者(パート・アルバイトなど)は、社会保険への加入が義務付けられます。


  • 週の勤務時間が20時間以上
  • 給与が月額8万8000円以上
  • 2か月を超えて働く予定がある
  • 学生ではない

※週の勤務時間が30時間以上の場合は、上記の要件にかかわらず社会保険への加入が義務付けられます。

「給与が月額8万8000円以上」という要件は、年収に直すと「105万6000円以上」となります。この近似値を用いて「106万円の壁」と言われています。社会保険への加入義務が生じると、納めるべき社会保険料の額が大幅に増えて、手取りがガクッと下がることがあります。

「106万円の壁」は、令和10年6月までに撤廃されることが決まりました。撤廃の時期は、全国の最低賃金の引き上げの状況を踏まえて判断されます。*2


社会保険の扶養から外れるライン

社会保険加入者である配偶者や親などに扶養されており、自分の年収が130万円未満である場合は、社会保険の被扶養者認定を受けられます。
被扶養者認定を受けた人は、追加での保険料負担なく社会保険に加入することができます。

年収が130万円以上になると、社会保険の扶養から外れます(=130万円の壁)。自ら国民年金や国民健康保険などに加入しなければならないため、手取りがガクッと減ります。

ただし令和7年10月以降、被保険者の配偶者を除く19歳以上23歳未満の者については、被扶養者認定の年収要件が「150万円未満」に緩和されました。
また令和8年4月以降、見込み収入が給与のみの者については残業代を収入額から除外する運用が開始され、実質的に「130万円の壁」が引き上げられます。*3


結局どのくらい働けばいいの?

年収の壁についてさまざまな制度変更がなされていますが、結局のところどのくらい働くのがよいかは、働く目的やライフスタイルなどに応じて個別に判断する必要があります。

「百数十万円程度の収入を効率的に得たい」というなら、年収の壁を正確に把握したうえで、それを超えないように働くことが最適解となるでしょう。
他方で、キャリアや資産の形成を目指すのであれば、年収の壁に拘ることなく積極的に働いた方がよいと思われます。

「どう生きたいか」「他に時間を使いたい大切なことがあるか」「働くことによって何を得たいか」などの観点から、ご自身にとって最適な働き方を考えてみてください。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。

出典
*1 財務省「令和8年度税制改正の大綱」
*2 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
*3 厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いについて」


阿部 由羅
あべ ゆら

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

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