今年12月2日から、現行の健康保険証が廃止されます。
この決定を受けて、今持っている保険証はどうなる?マイナンバーカードがないと保険診療を受けられない?資格確認書を受け取るには手続きが必要?
など、さまざまな疑問があることかと思います。
ここでは、健康保険証の廃止までのスケジュールやマイナンバーカードとの関係などを解説していきます。
まず健康保険証が「廃止される」という響きから、12月2日になると今ある健康保険証が全て使えなくなる、というイメージが先行しているかもしれませんが、そうではありません。
12月2日から廃止されるのは健康保険証の「新規の発行」であり、退職や転職・転居などで 有効期限が切れない限り、今の健康保険証は令和7年12月1日まで引き続き使えます。*1
健康保険証の新規発行停止のスケジュール
出所:「健康保険証とマイナンバーカードの一体化(マイナ保険証)に関する制度説明資料 令和6年5月」全国健康保険協会
マイナンバーカードの保険証利用の登録をしていない人に対しては健康保険証の新規発行が廃止される代わりに、今年12月2日から「資格確認書」の発行が始まります。 資格確認書は無償で交付される予定です。*2
ではこの「資格確認書」を受け取るには、どのような手続きが必要なのでしょうか。
基本的には、健康保険証の新規発行が廃止される今年12月2日以降、
など、 マイナ保険証を持っていない人に対しては、当面の間は申請をしなくても資格確認書が交付されることになっています。
令和6年の健康保険証廃止以降の資格確認書の取り扱い
出所:「マイナンバーカードと健康保険証の一体化について」全国健康保険協会資料
そして上の図にあるように、 資格確認書の有効期限は5年以内の範囲で、保険者ごとに設定することになっています。
これは今後の動向によって変化すること、保険者によって異なることに注意が必要です。
全国健康保険協会の場合、「資格情報のお知らせ」などの案内を会社宛に送付し、会社から健康保険加入者に渡されるという仕組みになる予定です。
資格情報の通知の流れ
出所:「健康保険証とマイナンバーカードの一体化(マイナ保険証)に関する制度説明資料」全国健康保険協会資料
マイナンバーを会社に提出していない人の場合には、マイナンバー提出も合わせて行うような通知が届く予定です。
なお、自営業など 国民健康保険の加入者の場合は、各自治体が12月2日以降の資格確認書の発行についてそれぞれのWebサイトなどで公表していますので、早めに確認しておきましょう。
さて、今マイナンバーカードを持ってはいるものの保険証としての利用登録をしていない人の中には、これを機にマイナ保険証に切り替えようと思っても、役所などへ行く手続きが面倒だと思うケースもあることでしょう。
実は、 マイナンバーカードを持っている人がカードを保険証として利用できるようにするための手続きは簡易化されています。
ひとつはカードリーダーを備えている医療機関や薬局で手続きをするというものです。ここで、顔認証やお薬情報の医療機関による取得に同意すれば、その場でマイナンバーの保険証利用の登録ができます。*3
このほか、セブン銀行のATMでも、カードと証明パスワードを利用してマイナンバーカードの保険証利用の登録ができるようになっています。*4
あるいは、スマートフォンでマイナポータルアプリの利用登録をしている場合は、アプリからマイナンバーカードの保険証利用を登録できます。
「健康保険証がすぐに使えなくなるわけではない」という経過措置が取られているため、そう慌てる必要はないというのは事実ですが、 一方で、マイナ保険証に関してはまだ未整理、あるいは混乱している部分もあります。
ひとつには医療機関や薬局がマイナ保険証で被保険者の資格の有無を確認するカードリーダーなどの機器はだいぶ普及してきていますが、まだ100%ではないということです。*5
そのため、 オンラインでの資格確認のシステムを持ち合わせていない医療機関などでは、引き続き従来の健康保険証等が必要になります。*6
マイナ保険証に対応している医療機関や薬局は、いくつかの医療機関検索サイトで探すことができます。*7
マイナ保険証の運用は、医療機関のパソコンなどの端末を介したオンラインシステムによって行われます。
それだけに、何らかのトラブルが起きることは避けられません。
全国保険医団体連合会が公表した2023年6月の統計によると、マイナ保険証のシステムを運用している医療の現場では、64.8%がトラブルを経験しています。*8
また、マイナ保険証だけを持参した患者さんで「資格無効」とシステムに表示されてしまったため、一旦10割負担を徴収した医療機関の事例もあります。
全国保険医団体連合会は、災害や停電などでシステムに障害が起きた時、マイナ保険証では被保険者情報が確認できず、保険診療そのものが行えなくなるともしています。
さらに、 就職や扶養の情報が反映されるまでに一定期間の日数が必要になります。*9
上記のような可能性を考えれば、 健康保険証を持っている人は、マイナ保険証に切り替えたとしても有効期限までは両方を持参する方が良いでしょう。
医療機関や薬局でマイナンバーカードを使うことで、 個人情報はどうなるのかについて懸念している人も多いことと思います。
厚生労働省のサイトと、デジタル庁のサイトに掲載されているQ&Aの一部をご紹介します。*10*11
<厚生労働省>
Q. 顔認証付きカードリーダーで写真は撮られますか。また、その写真は保存されますか。
A. 顔認証で資格確認を行う場合、顔認証付きカードリーダーがご本人様の顔を撮影します。ただし、マイナンバーカードのICチップ内に保存されている顔画像と、顔認証付きカードリーダーが撮影した顔画像が同一人であるかどうかを確認した後に撮影画像のデータは即時削除され、顔画像のデータが保存されることはありません。
Q. 医療機関・薬局がマイナンバー(12桁の番号)を取り扱うのですか。
A. 医療機関・薬局がマイナンバー(12桁の番号)を取り扱うことはありません。マイナンバー(12桁の番号)ではなく、マイナンバーカードのICチップ内の利用者証明用電子証明書を利用します。
<デジタル庁>
Q. マイナンバーカードを落とすと、ICチップに入っている税や年金、医療などのさまざまな情報が流出するので怖いです。
A. マイナンバーカードのICチップには、そもそも、税や年金、医療などに関する情報は記録されていません。
マイナンバーカードのICチップに記録されているのは、券面に記載されている氏名・住所・生年月日・性別の四情報と顔写真、マイナンバー、それに、電子証明書と住民票コードです。
落としたマイナンバーカードを取得した人がいても、ご本人以外は、税や年金、医療などの個人情報を引き出すことはできませんし、ICチップから不正に情報を読み出そうとすると、ICチップが壊れて、読み出せなくなる仕組みとなっていますので、ご安心ください。
Q. マイナンバーカードを紛失したときにどのように再発行したらよいですか。また、再発行の期間中に通院した際に保険証はどうすればよいですか。
A. 紛失等により速やかにマイナンバーカードを再発行する必要がある場合において、現在お受け取りいただくまでに1から2か月かかっている期間を、大幅に短縮してまいります。
このような場合に、市町村の窓口で申請をすれば、長くても10日間程度でカードを取得することが出来るように検討を進めてまいりますので、しばらくお待ちください。
それでもなお、マイナンバーカードの再交付が終了するまでの間など、例外的な事情により手元にマイナンバーカードがない状態で保険診療等を受ける必要がある場合の手順については、今後、関係府省と連携しながら、丁寧に対応してまいります。
なお、政府は マイナンバーカードを持つかどうかは任意であるという路線は変更しないとしています。*11
今の健康保険証の有効期限である令和7年12月1日までにトラブルを防ぐための対策がどこまで施されるのか、様子をチェックしながら自分にとって最善になる方法を見極めていきたいものです。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
*1「マイナンバーカードの健康保険証利用について」厚生労働省
*2「マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問」厚生労働省
*3「マイナンバーカードの保険証利用の申込みは医療機関・薬局の受付でもOK!」厚生労働省リーフレット
*4「マイナンバーカードの健康保険証利用について」
*5「オンライン資格確認の都道府県別導入状況について」厚生労働省
*6「マイナンバーカードを持参すれば、健康保険証等がなくても医療機関等を受診できますか。」マイナポータル
*7「マイナンバーカードの健康保険証利用対応の医療機関・薬局等についてのお知らせ」厚生労働省
*8「7200 医療機関から回答 マイナ保険証のトラブルが止まらない 6月9日 記者会見」全国保険医団体連合会
*9「今から使おう!マイナ保険証」全国健康保険協会
*10「マイナンバーカードの健康保険証利用についてよくある質問」厚生労働省
*11「よくある質問:マイナンバーカードの健康保険証利用について」デジタル庁