
株式関連のニュースで、海外投資家が日本株を「買い越した」「売り越した」といった記事を目にしたことがあるかもしれません。
実は、日本の株式市場では海外投資家が売買の中心的な役割を担っています。株式投資に取り組むなら、海外投資家の動向を注視することが大切です。
本コラムでは、日本の株式市場に占める海外投資家の割合や日経平均に与える影響、日本株を売買する理由などの基礎知識を解説します。
海外投資家とは、海外に住んでいる個人の投資家や海外のヘッジファンド、機関投資家のことをいいます。*1
ヘッジファンドは、デリバティブ(金融派生商品)などを組み合わせて、株価の下落局面でもプラスの運用成績を目指す私募形式の投資信託です。*2
機関投資家は、顧客から拠出された資金を運用する法人や団体を意味します。生命保険会社、損害保険会社、投資顧問会社、信託銀行、年金基金などが代表的で、運用資金量が多く、株式市場への影響力が大きいのが特徴です。*3
このように、さまざまな海外投資家が日本の株式市場に参加しています。
日本の株式市場における売買金額は、日本の投資家よりも海外投資家のほうが多いのが現状です。
詳細は後述しますが、売買金額の6~7割を海外投資家が占めています。*1
たとえば、海外投資家の多くが日本株を売却することがあれば、日経平均などの下落につながるかもしれません。
このように、海外投資家は日本の株式市場に強い影響力を持っており、株価が左右されやすいことから、その動向は経済ニュースでよく取り上げられます。
海外投資家に関するニュースでは、「買い越し」「売り越し」という言葉がよく出てきます。それぞれの意味は以下のとおりです。*1
先述のとおり、日本の株式市場では、売買金額の6~7割程度を海外投資家が占めています。そのため、海外投資家が買い越しなら株価は上昇傾向に、売り越しなら下落傾向になります。
仮に日本の個人投資家が買いに転じても、海外投資家が売り越しであれば日本株は下がるのが一般的です。逆に日本の個人投資家が売っていても、海外投資家が買い越しなら日本株は上がることが多くなります。
日経平均についてもおさらいしておきましょう。
日経平均(日経平均株価)とは、日本経済新聞社が選定した東証プライム市場の主要225銘柄で構成された株価指数です。「日経225」と呼ばれることもあります。*4
日本の株式市場の代表的な株価指数の1つであり、日本経済の動向や投資家の心理を示す重要な役割を果たしています。
また、インデックスファンド(投資信託)やETF(上場投資信託)など、多くの指数連動型金融商品に利用されています。
日経平均は「株価平均型」の指数であり、対象225銘柄の株価を足し合わせ、一定数で除して算出しています。そのため、株価が高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすい特徴があります。
日経平均に与える影響を判断するために、海外投資家が実際にどれほど日本株を売り買いし、どれくらい保有しているのかをみていきましょう。
日本取引所グループの調査によると、2025年10月第3週(10月14日~10月17日)の東証プライム市場の株式売買状況は以下のとおりです。
出典)日本取引所グループ「株式週間売買状況 2025年10月第3週(10月14日~10月17日) P1」をもとに筆者作成
海外投資家が67.4%を占めており、次いで個人(日本の個人投資家)の27.0%となっています。
日経平均は東証プライム市場の主要225銘柄で構成されているため、海外投資家の動向が株価に大きな影響を与えるといえます。
差し引きは買い金額から売り金額を差し引いたもので、プラスは買い越し、マイナスは売り越しを意味します。*5
海外投資家は日本株の売買だけでなく、保有についても存在感が大きくなっています。
日本取引所グループの調査によると、日本株の投資部門別株式保有比率の推移は以下のとおりです。
出典:日本取引所グループ「2024年度株式分布状況調査結果の概要 P9」
2024年度における外国法人等の日本株保有比率は32.4%です。投資部門の中で最も高く、その比率は増加傾向にあります。
このように海外投資家は日本株を多く保有しているため、その動向は日経平均に大きな影響を与えるといえるでしょう。
海外投資家はなぜ日本株を売買するのでしょうか。ここでは、考えられる主な理由を紹介します。
2023年4月に米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が来日し、日本株について「追加投資を検討したい」と発言しました。*6
実際にバフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイは、同年6月に日本の商社株を買い増したことを明らかにします。*7
この出来事はメディアで大きく取り上げられたため、海外投資家の日本株に対する注目度を高めたと考えられます。
2023年6月16日には、日経平均が33,706.08円と33年3ヵ月ぶりの高値をつけました。
2022年4月、東京証券取引所は市場区分を従来の1部・2部などの4市場から、「プライム」「グロース」「スタンダード」の3市場への再編を行いました。
2023年には株価純資産倍率(PBR)が1倍割れの企業を念頭に「資本コストや株価を意識した経営」を要請するなど、企業価値を高めるための施策も実行しています。*8
2024年5月時点でPBR1倍割れの企業はプライム市場で43%となり、2022年7月から7ポイント減少しました。*9
このような取り組みを受けて、海外投資家の日本市場に対する期待感が高まっていると考えられます。
2025年に入り米国のトランプ政権が関税措置を発表し、米中貿易摩擦への懸念が高まるなど、世界経済の先行きは不透明な状況にあります。
リスク分散の観点から、米国への投資だけに偏らないよう、比較的割安感のある日本株を買う海外投資家もいるとの見方があります。*10
日本の株式市場では、売買金額の6~7割を海外投資家が占めており、保有比率も上昇傾向にあります。そのため、海外投資家の動向は、日経平均の値動きを判断する際の重要な材料となります。
ニュースで「海外投資家が買い越し(売り越し)」と聞いたときは、「なぜ日本株が買われて(売られて)いるのか」「どんな背景があるか」に注目すると、自身の株式投資に役立つでしょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。
出典
*1 三菱UFJeスマート証券「株取引の参考になる?外国人投資家とは」
*2 三菱UFJモルガン・スタンレー証券「ヘッジファンド」
*3 三菱UFJモルガン・スタンレー証券「機関投資家(きかんとうしか)」
*4 三菱UFJ銀行「日経平均株価」
*5 日本取引所グループ「株式週間売買状況 2025年10月第3週(10月14日~10月17日) P1」
*6 三菱UFJアセットマネジメント「世界のファンド投資家の日本株投資(2023年6月19日)P1-2」
*7 日本経済新聞「バフェット氏の米投資会社、商社株の保有比率8%超え」
*8 日本経済新聞「東証改革とは 市場再編が契機、企業に価値向上求める」
*9 東京証券取引所「上場会社の対応状況(2024年8月30日)P5」
*10 NHK「日本株 海外投資家が13週連続で買い越し」
