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地価とは?種類や上昇の原因を解説
地価とは?種類や上昇の原因を解説

地価とは?種類や上昇の原因を解説

2025/11/27に公開
提供元:Money Canvas

地価は、その土地がいま市場でどれくらいの価値を持つかを示す“ものさし”です。
売買価格の目安になるだけでなく、税金・相続の評価、担保価値、公共事業や都市計画の前提にも影響を与えます。

近年はインバウンド回復や再開発の進展、金融環境などを背景に都市部を中心に上昇が続き、2025年時点でも注目度は高いといえるでしょう。

本記事では、地価の定義と種類、足元の動向と上昇要因、メリット・デメリット、今後の見通しまでを、詳しく解説していきます。


地価とは?

地価とは、土地の取引価格や資産価値を示す指標の総称です。

実際の売買で成立する「実勢価格」のほか、国や自治体が公表・評価する「公的な価格(公示地価・基準地価・路線価など)」も含まれます。

これらは不動産取引の相場形成、税額計算、公共用地の取得、相続・贈与時の評価など、暮らしと経済の幅広い局面に関わる重要な基礎情報といえるでしょう。

特に日本では、国土交通省(地価公示)や都道府県(基準地価)が毎年網羅的に地点を評価しており、全国の土地価格の“基準点”を提供しています。*1


地価の種類

同じ「地価」でも「誰が」「何のために」「いつの時点で」評価するかによって、目的や価格が異なります。
なぜ複数の種類が存在するのか。その理由は、それぞれの価格が異なる役割を持っているためです。

例えば、国が公平な課税を行うための基準と、個人が今すぐ土地を売買したい時のリアルな価格では、その性質が全く異なります。
それぞれの違いを押さえると、ニュースの理解や税務、相続・売買の判断が格段にしやすくなるでしょう。


公示地価

国土交通省が毎年3月に公表する、1月1日時点の土地価格です。
一般の土地取引における指標となることを目的としており、全国の住宅地・商業地・工業地など約2万6,000地点が対象となっています。
公共用地の取得価格算定の基準にもなるなど、最も信頼性の高い地価指標といえるでしょう。*1


基準地価

都道府県が毎年9月に公表する、7月1日時点の土地価格です。
公示地価を補完する役割を持ち、よりタイムリーな地価動向を把握するために役立ちます。
公示地価ではカバーしきれない林地なども対象に含まれる点が特徴です。*2


相続税路線価

国税庁が毎年7月に公表する、その年の1月1日時点の土地価格です。
主に相続税や贈与税の計算で使われ、道路に面した土地の1平方メートルあたりの価格が示されます。
納税者の負担が過大にならないよう、公示地価の約80%が目安とされています。*3


固定資産税路線価

市区町村が固定資産税・都市計画税の課税のために設定する評価額です。
こちらは、公示地価のおおむね7割を目途に評価され、3年ごとに見直されます(評価替え)。
私たちの納税額に直接関わる、最も身近な地価といえるでしょう。*4


実勢価格

これまで紹介した上記4つの公的な価格とは異なり、実際の市場で売買が成立した価格のことです。
市場の需要と供給を最もリアルに反映しており、国土交通省の「不動産取引価格情報」などで確認できます。
公表される指標とのタイムラグを埋める上で、非常に重要な情報です。*5


【2025年9月時点】地価が4年連続で上昇している

2025年時点で全国平均の地価は4年連続で上昇しています。*6

背景には「インバウンド需要の回復」「都市再開発の進展」、そしてこれまでの「緩和的な金融環境」という3つの大きな要因が複合的に重なっています。

こうした要因は、土地の用途によって異なる形で影響を及ぼしており、その動向を具体的に見ていくと、上昇の傾向がより鮮明になります。

特に上昇が顕著なのは、以下の3つの用途の土地です。


1.商業地

インバウンド需要の回復により、ホテルや店舗が集まる都心部や観光地で収益拡大への期待が高まっており、特に上昇が顕著です。
また、オフィス需要も、環境性能の高い新しいビルへの移転ニーズが強く、都心の一等地を支える要因となっています。*7


2.住宅地

都市部やその周辺で、交通の利便性が高く、住環境の良いエリアを中心に上昇傾向が続いています。
共働き世帯の増加などを背景に「職住近接」のニーズが高まっているほか、リモートワークの普及で郊外の価値が見直されつつも、最終的には利便性の高い都心周辺エリアの人気が根強い状況です。


3.工業地

インターネット通販の拡大を背景に、大規模な物流施設の建設が相次いでいます。
これに加え、国内のサプライチェーン見直しに伴う半導体関連工場の建設ラッシュなども、新たな需要を生み出しています。


もっとも、全国一律で上昇しているわけではありません。
人口減少が進む郊外や地方では横ばい、もしくは下落している地域もあり、都心と地方、また同じ市内でもエリアによる二極化がより鮮明になっています。*2


地価が上がるメリット

地価の上昇は、土地を保有する個人や企業、そして地域経済全体にプラスの影響を及ぼす可能性があります。


資産価値の増加

保有する土地の価値が上がるため、含み益が増加します。
将来的に売却して老後資金に充てたり、それを元手に住み替えたりと、資産活用の選択肢が広がるでしょう。


担保価値の上昇と経済の活性化

土地の担保価値が上がることで、個人や企業は金融機関からの融資を受けやすくなります。
これにより、住宅のリフォームや企業の設備投資が活発化し、個人の消費マインドも改善されるなど、経済全体の活性化につながる効果も期待できます。


都市機能の更新が後押しされる

地価上昇は、再開発や公共投資の採算性を高める効果もあります。
商業施設の建て替えや、防災インフラの整備などが進みやすくなり、結果として街全体の魅力向上や雇用創出につながります。*8


地価が上がるデメリット

一方で、地価上昇は特に土地を持たない人々や、これから不動産を取得しようとする層に負担となる側面があります。


住宅取得のハードルが上がる

土地の価格が上がると、住宅の購入価格も上昇します。これにより頭金や住宅ローンの負担が増え、特に若年層にとってはマイホームの取得がより難しくなります。
また、より広い住環境を求める子育て世帯が、高騰する都心部を避けて郊外へ移らざるを得なくなるなど、ライフステージに応じた住まいの選択を難しくさせる側面もあります。


税金などの保有コストが上昇する

固定資産税や都市計画税は、地価(固定資産税評価額)を基に計算されます。地価が上がるとこれらの税負担も増加し、土地を保有し続けるためのコストが上がってしまいます。
3年ごとの評価替えのタイミングで、想定以上に税額が上がる可能性も考慮しなくてはなりません。*4


事業コストが増加し、地域経済に影響も

店舗やオフィスの賃料上昇は、新規出店のハードルを上げます。特に、古くから地域に根差してきた個人経営の店舗などが、家賃高騰に耐えきれず閉店に追い込まれるケースもあり、街の個性や多様性が失われる一因ともなりえます。


地価の上昇は今後も続く?

今後の地価動向は、短期・中期・長期で分けて考える必要があります。

短期的(~1年)には、主要都市や再開発エリアでやや強含みで推移する公算です。
インバウンド需要などが商業地を下支えする一方、今後の金利動向は最大の不確定要因といえます。資金調達コストの上昇は、不動産投資の勢いを鈍化させる可能性があるでしょう。*9

中期的(1~3年)では、大型再開発の完了がさらなる集客効果を生む一方、人口減少や世帯構成の変化が住宅需要に影響を与え始め、立地による選別が一層進むと考えられます。*10

長期的(3年以上)には、全国レベルでの人口減少が持続的な下押し圧力となりえます。全国一律の上昇は想定しづらく、国際競争力のある都市や、特定の魅力を持つエリアに価値が集中していくでしょう。

投資家や家計ができることは、「指標」「金利」「人口」という3つの要素を定点観測することです。


1.指標

公示地価と基準地価で大まかな方向性を、不動産価格指数などでよりリアルな市況を補完して確認しましょう。*1


2.金利

日本銀行の金融政策や、住宅ローンの金利動向に常に注意を払う必要があります。金利が上昇すれば、不動産の相対的な魅力が低下し、価格の下落圧力となる可能性があります。


3.人口

住んでいる、あるいは投資を検討しているエリアの人口が今後どう推移していくかを把握し、将来的な需要の“量と質”を測りましょう。*10



この3つの視点をクロスチェックすることが、過度な楽観や悲観を避けるための羅針盤になります。


地価から読み解く未来の資産戦略

地価は、単なる土地の価格ではなく、経済の体温や社会の変化を映し出す鏡です。
今後の動向を見通すためには、今回解説した地価の種類や変動要因を理解し、多角的な視点を持つことが欠かせません。


住宅取得を考えるなら

地価だけでなく、金利や税金も含めた総コストで判断しましょう。また、将来的な資産価値を維持するためにも、ハザードマップで災害リスクを確認したり、自治体の都市計画を調べたりすることも重要です。*3 *4


不動産を保有しているなら

地価の動向を踏まえ、賃貸や売却など最適な活用法を検討することが重要です。周辺の賃料相場や、新たな鉄道路線の計画など、地域情報の収集を怠らないようにしましょう。


投資として考えるなら

立地や用途を分散させ、長期的な人口動態も見据えた戦略を立てましょう。直接不動産を所有するだけでなく、REIT(不動産投資信託)を通じて少額から分散投資を行うのも有効な選択肢の一つです。


また、物価が上昇するインフレ局面では、現金や預金の価値が目減りする一方、不動産のような実物資産は価値が下がりにくいため、「インフレヘッジ」としての役割も期待されます。

地価のニュースに触れる際は、その数字の裏側にある経済の大きな流れを読み解き、ご自身の資産形成やライフプランニングに役立てていきましょう。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
本コラムの内容は、特定の金融商品やサービスを推奨あるいは勧誘を目的とするものではありません。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。

出典
*1 国土交通省「地価公示制度の概要」
*2 国土交通省 土地政策審議官部門「令和7年都道府県地価調査の概要」
*3 国税庁「令和6年分の路線価等について」
*4 総務省 自治税務局 資産評価室「固定資産評価のしくみについて(土地評価)」
*5 国土交通省「不動産取引価格情報(不動産情報ライブラリ)」
*6 国土交通省「令和7年版 土地白書(案)概要」
*7 日本政府観光局(JNTO)「2025年1月 訪日外客数(推計値)」
*8 国土交通省「主要都市の地価は4期連続で全地区において上昇~令和6年第4四半期地価LOOK レポート~」
*9 日本銀行「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」
*10 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(全国)」

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