2022年10月より始まった、産後パパ育休と育休の分割制度。日本でも、男性が育休を取れる環境が徐々に整ってきました。
育休中は、「育児休業給付金」の支給を受けることが可能です。支給額は賃金月額の約67%または50%となっており、給与分を満額受け取ることはできません。
育休が男女関係なく取得できるようになってきたことは非常に喜ばしいことですが、育休取得にあたっては金銭面の課題についても慎重に考える必要があるでしょう。
そこで本稿では、産後パパ育休や育休分割制度の解説や、注意点などについて解説します。
安心して子育てをするためのお金の知識について、ぜひ参考にしてください。
「育児休業制度」とは、原則1歳未満の子どもを養育するための休業制度です。
「育児・介護休業法」という法律に定められており、例え会社に育児休業の規定がなくても法律に基づき育児休業を取得することができます。*1
これまで、育児休業は女性が取得するものだというのが一般的でした。実際に男女別の取得状況を見てみると、令和3年で女性は85.1%に対し、男性は13.97%とかなり開きがあります。*2
引用)厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査 事業所調査 図4 育児休業取得率の推移」p22
上記の図を見ると年々男性の取得率は急増しているものの、未だ女性が取得するものというイメージが強いのが現状です。
このような現状の中、令和4年10月1日から男女とも仕事と育児を両立できるよう、「育児・介護休業法」が改正されました。
大きな改正内容は、
「男性が育休とは別に産後パパ育休が取れるようになったこと」「男女共に育児休業を分割で取れるようになったこと」の2つです。*3
また、これまで契約社員などの有期雇用労働者に対しては、雇用期間が1年以上であることが育休取得の要件でしたが、こちらも改正されました。
令和4年4月1日からは、子どもが1歳6か月までの間に契約が満了することが決まっていなければ、有期雇用労働者でも育休が取得できるようになっています。*4
また令和5年4月1日からは、従業員1,000人以上の企業に対し、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」を公表することが義務付けられました。*5
男女ともに、育児休業をより取得しやすくなるよう様々な支援が始まっています。
「産後パパ育休」とは令和4年10月1日から新設された制度です。
引用)厚生労働省「漫画で分かる!育児休業制度」p2
育児休業とは別に「子の出生後8週間以内に4週間まで」、2回まで分割して取得可能な育休です。
労使協定と個別合意が必要になりますが、産後パパ育休中には、一部就業することもできます。
引用)厚生労働省「育児休業取得がパパの最初の仕事 男女とも育児休業をとるのがあたりまえの時代に」p2
上記の図のように、産後の慌ただしい時期に、男性もフレキシブルに育休を取得することができるようになりました。
男性が育休を取得しやすい環境が少しずつ整ってきていると言ってよいでしょう。
「産後パパ育休」取得中は「出生時育児休業給付金」を、育休取得中は「育児休業給付金」をそれぞれ、受け取ることができます。
「出生時育児給付金」は令和4年10月1日から、「産後パパ育休」と共に新設された給付金です。
産後パパ育休を取得した男性が、一定の要件を満たした場合に受け取ることができます。
それぞれの給付金支給額は下記の通りです。
休業開始時賃金日額 × 休業期間の日数(28日が上限)× 67%
例えば、休業開始時の賃金日額は7,000円で、14日間の出生時育児休業を取得したとします。
休業中に給与の支払いがなければ、支給額は65,660円です。
(7,000円×14日×67%=65,660円 )*6
休業開始時賃金日額×支給日数×67%(育児休業開始から181日目以降は50%)
休業中に給与の支払いがなく、育休開始から181日以降だった場合の支給額は105,000円です。
(7,000円×30日×50%=105,000円)*7
育休取得中は社会保険料(健康保険、厚生年金)の支払いは免除となります。 *8
とはいえ、給与と比較すると給付金の支給額は少なく、育休開始から181日目以降は更に減額されるため、注意が必要です。
仮に夫婦で同じ時期に育休を取得した場合は、181日目以降から家計の収入が半減します。
また、給付金はすぐに受け取れるわけではありません。
特に育児休業給付金については、育休が開始されてから受給資格をハローワーク側が確認後に支給されます。
事業主が初回の支給申請を行う際の書類の提出期限は、「育児休業開始日から4か月を経過する日の属する月の末日まで」とされており、出産から起算するとかなりタイムラグがあります。
例えば、育児休業開始日が7月10日の場合、4か月を経過する日は11月9日なので、提出期限は11月30日までです。*9
事業主の書類提出時期や出生日によっては、最大4か月以上の期間にわたり給付金を受け取れない可能性があります。
産後はミルク代やおむつ代など、これまでよりも支出が増えるため、金銭的な問題に直面することもあるでしょう。
夫婦で育休を取得する場合は、タイミングをずらすなどの対策が必要になるかもしれません。
給与と比較して給付金の支給額が少ないこと、給付までにはタイムラグがあることを念頭におきながら、夫婦間で取得時期等について相談することが必要です。
夫婦で育休を取得する際には、金銭面での調整が必要になることは否めません。
「取得時期をずらす」「取得時期を複数に分ける」などの対策も、必要になるでしょう。
ぜひ、夫婦二人の働き方とうまく調整をしながら、検討してみてください。
本稿がその助けになりましたら幸いです。
本稿執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出所)*1-9 厚生労働省HP