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高騰が続く不動産価格 過去からの推移は?今後どうなる?
高騰が続く不動産価格 過去からの推移は?今後どうなる?

高騰が続く不動産価格 過去からの推移は?今後どうなる?

2025/09/11に公開
提供元:清水 沙矢香

不動産価格の高騰が続いています。
特に都心部へのアクセスが良い 東京23区のシングル向け賃貸マンションの平均家賃は10万円の大台に乗りました。
初任給が上がっているとはいえ家賃の上昇率のほうが大きく、若い世代には大きな負担になっています。
また、ファミリー向け物件の家賃の伸び率も目立っています。

不動産価格の推移や今後の展望を、今回は都心の賃貸物件を中心に解説していきます。


賃貸マンションの家賃は全タイプで値上がり

不動産情報サービスのアットホームが実施している調査によれば、 2025年5月の東京23区の賃貸マンションの平均家賃は全ての面積帯で昨年を大きく上回りました。

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東京23区の賃貸マンション平均家賃(アットホーム調べ)

出典)アットホーム株式会社「全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向(2025年5月)」


どのタイプの物件も前年より大幅に家賃が上がっています。 特にシングル向け物件は12か月連続で2015年1月以降の最高値を更新し、10万円の大台に乗せています。


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東京23区の賃貸マンション平均家賃の推移(アットホーム調べ)

出典)アットホーム株式会社「全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向(2025年5月)」


就職で上京した若者には大きな痛手です。
新卒の初任給は上がり続けていても、23区では家賃の上昇率のほうが大きくなっているからです。*1

別の不動産情報サイト運営会社であるLIFULL(ライフル)によれば家探し中の人が求める23区の家賃は平均9万6646円で、「10万円以下で借りたい」という需要が大きいようです。
23区での社会人ライフは高嶺の花、といったところでしょうか。

物価、特に食料品の値上がりも踏まえると初任給のアップは大きな恩恵になる訳ではなさそうです。


23区の賃貸マンション値上がり、なぜ?

なぜここまで23区で家賃が右肩上がりになっているのでしょう。

いくつかの理由が指摘されています。*1*2

まずひとつは純粋に 物価高騰によって賃貸物件の建築や維持管理にかかる費用が上がっているということです。
他には、 コロナ禍で鈍っていた人の動きが回復し、進学や就職で都内に転入する人が増えたことがあるようです。需要が多く、貸し手は賃料を上げやすいという指摘もあります。

また、マンションの販売価格の高騰も影響していることでしょう。
アットホームの別の調査では、23区の中古マンションの平均価格は大きく上昇しています。


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首都圏の中古マンション平均価格の推移(アットホーム調べ)

出典)アットホーム株式会社「首都圏における「中古マンション」の価格動向(2025年2 月)」


2024年に入っての上昇率は首都圏でも群を抜いていることがわかります。

住み替えを考えた時に購入よりも賃貸の方に割安感が出てしまうと家探しは賃貸に集中し、その分貸し手は強気の家賃設定をしやすくなっている、というわけです。


貸し手にも厳しい事情

ただ、 貸し手にも賃料を上げたいやむを得ない理由があるようです。
共用部の電気代など光熱費の上昇、不具合が出た時の修繕にかかる費用や人件費も高騰
しているからです。

また、もうひとつには 固定資産税の上昇もあることでしょう。固定資産税の算定基準となる路線価は、特に東京では年々上昇しています。つまり固定資産税も上がることになります。

これには、 海外マネーの流入が関係しています。


海外マネーが牽引する都心のマンション価格

東京国税局が7月1日発表した 東京都内の2025年の路線価(1月1日時点)は標準宅地の平均で前年比8.1%上昇しました。
インバウンド人気が高い台東区の浅草や、タワーマンションの建設など再開発が進む地域、交通利便性の高い地域の上昇が目立っています。*3

東京のマンション相場を押し上げているひとつの要因が、外国人による購入です。

三菱UFJ信託銀行がデベロッパーを対象に実施した聞き取り調査によれば、千代田区・港区、渋谷区では、マンションの外国人による取得割合は「20%以上30%未満」「30%以上40%未満」とするデベロッパーがそれぞれ30.8%にのぼっています。

供給するマンションの2~4割は外国人が所有している、というデベロッパーが多いということになります。


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マンションの外国人取得者の割合

出典)三菱UFJ信託銀行「2024年度下期デベロッパー調査(首都圏マンション・戸建)」


東京は国際的な知名度が高いうえ、新築物件が香港やニューヨークといった海外主要都市に比べて割安感がある、というのが海外マネー流入の大きな要因になっているとの指摘があるほか、 コロナ禍に行き先を失った投資マネーが東京の不動産に流れてきたとも考えられています。*4*5

日本人の購入は追いつかないまま、外国人富裕層が都心のマンション価格を牽引しているともいえます。


都内の不動産価格 今後はどう推移する?

では、このトレンドはいつまで続くのでしょうか。

先ほど紹介した三菱UFJ信託銀行の調査によれば 首都圏マンション販売価格の一年後の予想として、調査対象の全デベロッパーが現在より値上がりすると回答しています。


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販売価格の実績と予想

出典)三菱UFJ信託銀行「2024年度下期デベロッパー調査(首都圏マンション・戸建)」


1億から2億という高い物件ほど、上昇率は高いと予測されています。
ただ長期でみた時にどうなるか、見逃せない調査結果もあります。

それは、 マンションを新設しようにも用地自体が高騰しており、これ以上の土地価格の値上がりがデベロッパーの首を絞めそうな水準にまで来ているというものです。


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東京でのデベロッパーの用地仕入れの進捗状況と理由

出典)三菱UFJ信託銀行「2024年度下期デベロッパー調査(首都圏マンション・戸建)」


すでに72%のデベロッパーが用地取得に苦戦しており、その理由は土地の価格高騰という回答が多数派になっています。
用地不足で供給件数が減ると需給バランスが崩れ、より価格が高騰していく可能性はあるでしょう。そして分譲マンションの価格高騰は、中古マンションの価格や賃貸相場にも影響します。

ただ、金利によって事情は変わりそうです。住宅ローンの金利が2025年1月現在より0.5%上昇した場合、マンションの販売価格は下がることを見込むデベロッパーが多くなっているのです。


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金利上昇時のマンション販売価格予測

出典)三菱UFJ信託銀行「2024年度下期デベロッパー調査(首都圏マンション・戸建)」


高すぎて売れなければ意味はありませんから、どこまでの高騰なら許されるのか、その高値のラインを探っている時期に来ている可能性もあります。
いくら人気があって資材や人件費の高騰を売値に転嫁できたとしても、無限に価格を上げ続けるわけにはいきません。


今後の不動産価格を占う項目は?

国土交通省は2025年5月、都心のマンションの外国人購入者について大規模な調査に乗り出すことを明らかにしました。*6

マンション投資に短期売買の投機的な取り引きが拡大すれば相場を押し上げ、住むためのマンションを国内在住の購入者が買えない、といった状況が続いてしまいます。

今後のマンション価格の推移を予測するにあたって、この調査は興味深く、結果を待ちたいところです。結果によってはなんらかの政策が打たれる可能性があります。
新築の購入意欲が上がれば、中古や賃貸への集中はやや緩和されるかもしれません。

また先に述べたとおり、 住宅ローン金利が上がるのかそうでないのかもマンション販売の価格に影響するとのことですから、こちらも見守っていきましょう。

ただ、これらの変化が1~2年という短期間で起きるかというと、筆者にはそうは思えません。住み替えの時期は慎重に計画したいものです。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。

出典
*1 日本経済新聞「都内一人暮らしは高値の花? 賃貸マンション、初任給増えても届かず」
*2 NHKニュース「賃貸物件の家賃値上げ 大学生から不安の声 高騰はなぜ?」
*3 日本経済新聞「東京の路線価8%上昇 浅草は訪日客効果で29%、北千住は26%」
*4 日本経済新聞「地価「東京」1強 全国最高8%上昇、人口や投資増でマンション需要」
*5 東急リバブル「海外投資家から見た日本の不動産市場について」
*6 NHKニュース「マンション高騰 外国人投資の実態初調査へ【経済コラム】」


清水 沙矢香
しみず さやか

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアや経済誌に寄稿中。

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