短期間で楽にお金を増やせるというような甘い話には、必ず落とし穴が潜んでいます。
投資についても同様です。特に大きなレバレッジをかけた高リスク取引や、甘い話を持ち掛けてくる違法業者には十分ご注意ください。
本記事では投資を始めた方が、お金を増やしたい場合にやってはいけないことについて解説します。
投資を始めた方の中には、短期間で大きな財産を築きたいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
たしかにSNSなどでは、瞬く間に大儲けをした投資成功者がたくさんいるように見えますから、そのようになりたいと思うのも無理のないことです。
しかし、短期間でお金を増やそうとすることには、必ず大きなリスクが付きまといます。思惑に反して、多額の損失を被ってしまう例は枚挙に暇がありません。
特に以下の2つについては、致命的な損失を被る可能性が非常に高いため、手を出すべきではない投資といえるでしょう。
(1)大きなレバレッジをかけた高リスク取引(ハイレバ取引)
(2)無登録の違法業者を通じた取引
これら2つの投資に手を出した場合に、どのようなリスクを負うことになるのかを、次の項目から事例に沿って解説します。
<事例1>
Xさんは、働き始めてから5年間で貯めた300万円を元手に、一挙に資産を増やしたいと考えていた。
株式や投資信託を買ったとしても、せいぜい1年に数%の利回りしか期待できない。そこでXさんは、高いレバレッジをかけて外国為替取引(FX)を行うことにした。
Xさんは、300万円全額を証拠金としてFX業者に預け入れ、20倍のレバレッジをかけて6,000万円分の米ドルを空売り(ショート)した。
円安ドル高が過熱しすぎているので、必ず円高に振れるだろうと考えていたからだ。5%程度円高に振れれば、300万円程度の儲けが出て元手が倍になる。
しかし、Xさんの思惑に反して、ドル円相場はさらに円安ドル高が進行した。Xさんはレバレッジをかけ過ぎていたので、あっという間にロスカットに遭い、数十万円の損失を被ってしまった。
損失を取り戻そうと考えたXさんは、海外FX業者を通じて、さらに高いレバレッジでFX取引を行った。しかし、またしてもXさんの思惑どおりとはならず、最終的に300万円全額を失ってしまった。
ハイレバ取引は、短期間で成功すれば大きな利益を得られる可能性があります。その反面、失敗すれば元手の大半を失ってしまうことになりかねません。
短期間で資産を増やそうとする方は、ハイレバ取引によって期待できる利益ばかりに注目する傾向にあります。
実際に利益が出るケースもあり、その際に「このまま大儲けできるのでは」と思い込み、さらにハイレバ取引にのめり込むというのがよく見られるパターンです。
しかし、ハイレバ取引で常に勝ち続けることは不可能で、必ずいつかは損失を被る時が来ます。その際に資金の大半を失ってしまったり、借金まで背負ってしまったりする方が少なくありません。
ハイレバ取引については、利益だけに注目するのは危険です。損失のリスクが大きいことに十分留意した上で、本当にハイレバ取引を行うべきかどうか慎重にご判断ください。
堅実に資産を築いていくためには、お金が減るリスクを最小限に抑えることが大切です。そのためには、仕事をしながら積み立て投資を行うのがよいでしょう。
仕事で稼いだお金から投資用資金を捻出すれば、そのお金は着実に元手として貯まっていきます。その元手をリスクの低い投資信託や株式で運用すれば、利回りは年数%程度であっても、長期的には大きな資産を築ける可能性が高いでしょう。
仕事から得られる収入が少ない場合は、より高い賃金を得られる会社に転職したり、副業をしたりすることも有力な選択肢です。投資に回すことができるお金が増えれば、その分資産の増え方も速くなります。
ハイレバ取引には、こうした努力を飛ばして資産を築ける可能性がある反面、それに見合った非常に大きなリスクが潜んでいます。着実に資産を築きたい方は、ハイレバ取引を避けた方が賢明でしょう。
<事例2>
Yさんは、資産運用を始めたいけれど知識がなく、誰か詳しい人に任せたいと考えていた。そこで、投資で大儲けしていると評判のAにSNSを通じてダイレクトメッセージを送り、資産運用について相談をした。
AはYさんに対して、年20%の利回りが期待できるので、自分が運営している投資会社(B社)に資金を預けてもらいたいと勧誘した。YさんはAの評判を聞いていたので、間違いなく信用できると思い、B社に対して500万円の資金を預けた。
ところがB社は、金融庁の登録を受けていない無登録業者だった。最初の数か月は「配当金」の名目でYさんにお金が振り込まれていたが、ある時期から振り込みがストップした。Aとは連絡がつかなくなり、Yさんは500万円の大半を持ち逃げされた形となってしまった。
後にAは、無登録営業による金融商品取引法違反の疑いで逮捕・起訴され、有罪判決を受けた。Aは持っているお金をすべて浪費してしまっていたので、Yさんは持ち逃げされたお金を回収できなかった。
金融商品取引法に基づき、他人のお金を預かって運用するためには「投資運用業」の登録を受ける必要があります。また、単に投資に関する助言を行う場合には「投資助言・代理業」の登録が必要です。
これらの登録を受けずに他人のお金を預かったり、投資に関する助言を行ったりする行為は、金融商品取引法違反として犯罪となります。
無登録業者は、顧客の資産を安全に運用する体制が全く整っていません。
それどころか、顧客から預かった資産を浪費したり、ハイレバ取引に回してあっという間に失ってしまったりするなど、あまりにも不適切・ずさんな運用が行われています。
無登録業者に資産を預けてしまうと、元本の大半が失われてしまう可能性が高いことを認識しておきましょう。
他人から投資用資金を預けるように求められた場合には、その人(会社)が金融庁の登録を受けているかどうかを必ず確認しましょう。
金融庁の登録の有無は、金融庁のウェブサイト*1で確認できます。投資運用業および投資助言・代理業の登録については、「金融商品取引業者」のPDFファイルまたはExcelファイルにて記載されています。
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何を信じれば?お金の勉強をする前に必要な情報リテラシーとは
短期間で資産を増やそうとすると、大きなリスクを負うことになります。特にハイレバ取引や無登録の違法業者を通じた取引は、損失のリスクがきわめて高いので警戒すべきです。
堅実に資産を増やしていくためには、積み立て投資をはじめとして、比較的安全な資産運用の方法を勉強していきましょう。
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今から考えたい!未来へのお金の増やし方本稿執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客様自身の判断でお取り組みをお願いいたします。
参考
*1金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」