
2025年の年末年始は最大9連休が可能であり、久しぶりに家族や親戚が集まれるチャンスです。帰省や自宅でゆっくり過ごす人がふえることが予想されます。
そして、お正月の最大の楽しみは、なんといってもおせち料理でしょう。
重箱に色とりどりの料理が美しく詰められたおせちは、新年の食卓を華やかに彩り、家族団らんを演出します。
この記事では、お正月に欠かせない、おせち料理の歴史や意味、種類、予算相場などについて解説します。
おせち料理とは、新年に家族の幸せや健康を願って食べる日本の伝統的な祝い膳です。
重箱に詰められた料理一つひとつに、縁起の良い意味が込められています。
はじめに、おせち料理の歴史や意味について解説します。
おせち料理は日本の正月に欠かせない伝統料理として親しまれていますが、その起源は弥生時代にまでさかのぼるといわれています。*1
現在のように形式が整ったおせち料理の原型が現れたのは平安時代であり、宮中で季節の変わり目に「節会(せちえ)」という儀式と宴会がありました。これが由来となり、おせち料理の習慣ができています。
おせち料理を重箱に詰める習慣は、江戸時代後期から明治時代にかけて定着しましたが、「おせち」という名称が一般に広く知られるようになったのは戦後になってからです。
特に正月は一年で最も重要な節目とされ、豊作や家族の健康を祈る特別な料理が作られました。
料理は歳神様への供物であり、神と人がともに食す「神人供食(しんじんきょうしょく)」の儀式に由来します。
江戸時代後期には、料理一つひとつに意味を込める風習が広まり、現在のようなお祝い料理へと発展しました。
新年を祝い、家族の健康や繁栄を祈る料理として知られています。
おせち料理を重箱に詰めるのは、「福が重なる」といった願いを込めた縁起の良い習わしがあるからです。
以下、四段構成の場合を例にご説明します。
一の重には祝い肴(黒豆・数の子など)、二の重には焼き物(ブリや海老など)、三の重は煮締め(根菜中心の筑前煮など)、与(忌み数字の四ではない)の重には酢の物(紅白ナマスなどの日持ちするもの)を詰めます。*2
これらの料理はすべてに意味があり、新年の幸福・健康・繁栄を願うものです。
普段の食事ではなかなか食べられない料理が並ぶため、正月ならではの特別な味わいを楽しめるのも魅力の一つです。
おせち料理には、それぞれの料理の内容に意味があり、家族の幸せなど新年の願いが込められています。
以下はおせち料理の意味をまとめた表です。
図1)出典)おせちは一年の幸を願う料理。おせちを知って作ってみよう!|農林水産省
たとえば、栗きんとんは金色であることから金運上昇を願う気持ちが込められています。
里芋は親芋からたくさんの子芋が採れることから子宝に恵まれ、子孫が代々栄えるという意味です。
金運上昇・子孫繁栄・健康長寿など、人間が幸せに生きていくための要素がたくさん詰まっています。
おせち料理はどれも美味しいものですが、特に人気のある種類について見ていきます。
下図2は民間企業の調査を参考にして経済産業省が作成したグラフです。
図2)出典)おせちから考える食品流通-第3部 数の子を通して見る数字
参照すると、2016年〜2023年でトップを維持しているお雑煮、栗きんとん・栗甘露煮、黒豆は依然として安定した人気を誇ります。
2018年以降に海老がランクインしたことは、豪華さや写真映えを意識する層がいる可能性があります。SNSの影響で、「映える」見た目を重視する人が増加していることも考えられるでしょう。
お雑煮、栗きんとん、黒豆などの定番食材が長年人気であることから、現代でもおせち料理における伝統の味への支持は根強いことがわかります。
特に黒豆や栗きんとんは、健康運や金運などで縁起が良く、世代を超えて親しまれている食材です。
洋風や中華など、新しい形のおせちが浸透する現代において、かまぼこや伊達巻きなど昔ながらの食材は安定的ながら目立った上昇は見られず、やや選ばれにくくなっていることも考えられます。
伝統的な意味合いと、新しい楽しみ方の両方が現代のおせちには求められており、SNSでの写真映えや豪華さなど個人の好みに応じた多様性が、近年の人気傾向を左右しているといえます。
ここでは、おせち料理の平均予算を見ていきましょう。
下図3は、民間企業の調査を参考にして経済産業省が作成したグラフです。
おせちの購入予定価格帯の推移をまとめています。
図3)出典)おせちから考える食品流通-第2部 賃上げでメリハリ消費も過熱するか!?|経済産業省
参照すると2023年における、おせち料理の購入予定価格帯は「2万円以上〜3万円未満」が最も多く40.6%となりました。
次は、「1万円以上〜2万円未満(31.4%)」が続いています。「2万円以上3万円未満」「3万円以上5万円未満」の価格帯は、年ごとに増減を繰り返しながらも、全体的な傾向としては緩やかに増加しています。
2023年にはどちらも過去最高水準に達していますが、背景には物価上昇や、消費者の高品質志向への高まりが考えられます。
一方、節約意識に関する調査では、「おせちは節約しない」と答えた人が71.6%にのぼり、年に一度の特別な料理として価値を重視している傾向が見られます。
おせちは依然として贅沢を楽しむ行事として支持されており、ハレの日に食される縁起の良い料理です。
おせち料理は品数が多いため、いざ作ろうとなると大変手間がかかるものです。
下図4は民間企業の調査を参考にして経済産業省が作成した資料です。
おせちを用意する方法についてグラフ化しています。
図4)出典)おせちから考える食品流通-第2部 賃上げでメリハリ消費も過熱するか!?
参照すると、おせちを用意する方法に変化が生じていることがわかります。
2020年度は実家が用意するケースが突き抜けて多い状況でしたが、年々少なくなっており、家族の集まり方も変わりつつあると考えられます。
一昔前は、年末になると家族そろって実家に帰省して、皆で協力しながら正月料理を作るケースが多く見受けられました。
しかし、時代は変わり、核家族化が進んでいることから、帰省せずに自宅でゆっくり過ごす家庭も多いでしょう。
一方、近年ではネット通販で購入するケースが年々増えている状況です。全国の有名店・ホテルのおせちを手軽にネットで買えるため、通販での利用が急増しています。
そのため、スーパーで購入する層は2020年〜2021年において、やや横ばい気味です。
自分で作る人も一定数おり、家庭の味を重視する層が存在します。
多忙な現代生活においては手間を省いておせちを用意する方法が主流であり、ネット通販など利便性を重視した購入スタイルが定着しています。
おせち料理は昔からの伝統を受け継ぎ、家族の健康や繁栄への願いが込められた最も縁起の良い祝い膳です。
近年はおせちの購入価格が上昇傾向にありますが、料理の価値を重視し、節約よりもお祝いの気持ちを大切にする消費者がふえています。
ライフスタイルに合わせた方法でおせち料理を用意し、新しい一年を楽しく迎えましょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典
*1 湊 敏文(みなと としふみ)羽衣国際大学「社会背景から考える,これからのおせち料理の在り方」
*2 伊勢原市「年初を彩る和食を愛でる」
