結婚式を控えた高校時代の友人が、ダイエットに成功した。
高校のとき彼女とわたしは同じくらいの体重だったが、彼女は社会人になってから、仕事のストレスで25キロ太ってしまった。
が、結婚式のために30万円も払って某ダイエットプログラムを契約。10キロ以上の減量に成功し、結婚式ではかなりスッキリしていた。
そんな彼女にダイエットの秘訣を聞いてみたところ、節約に通ずるものが多かったので、今日はそれを紹介したい。
まず最初に、具体的にどんな方法でダイエットしたのかを聞いてみた。
彼女はダイエットプログラムのコーチから送られた「食べていいもの・食べてはいけないものリスト」をプリントアウトし、リビングの一番目立つところに貼り付け、そのルールをとにかく守ったとのこと。
食べたものはチョコレートの1粒ですら欠かさずトレーナーに報告し、カロリーや糖質を考慮して今日はあと何を食べるべきかを指示される。スクワットやウォーキングなどの運動系ルーティーンも逐一報告し、アドバイスを受ける。
目標体重に対しての達成度もグラフにし、ダイエットに関わるすべての情報を可視化。もちろん、すべてトレーナーと共有。トレーナーはアドバイザーであり、監視者でもあるのだ。
それを聞いたわたしは、「えぇ……。さすがにそれ、しんどすぎない?」と率直な感想を伝えた。
「めっちゃ大変だったよ! 外食しても、夫のパスタを一口もらうだけでわたしはサラダとかさ~」
「よく続けられたね」
「自分を追い込むために、ドレスは痩せることを前提にサイズを調節してもらったんだ。お菓子を食べたくなったら、ウェディングドレスの写真見て気合い入れてた」
「おぉ、すごい……」
そこまでやるの!?と思ったが、それだけ本気だったからこそ、ダイエットを成功できたのだろう。ウェディングドレスの力、恐るべし。
改めて考えると、ダイエットの思考回路は、節約と同じだ。
毎日体重計に乗って体重管理するのは、収支を把握して家計簿をつけるのと同じ。
目標体重に対する達成度把握は、通帳を見て貯蓄額を眺めるのと同じ。
食べるべきもの・食べるべきではないものの判断は、買うべきもの・買うべきではないものの判断と同じ。
痩せてウェディングドレスを着るぞ!というのは、500万円貯めてマイホームを買うぞ!と同じ。
目標を立て、我慢強くそれを実行するという意味で、ダイエットと節約は同じマインドセットだといえる。
それはつまり、ダイエットの失敗から学び、ダイエットの成功へ至った秘訣を知れば、節約も同じようにうまくいくんじゃないだろか。
というわけで、節約に活かすため、さっそく自分のダイエット失敗経験を思い返してみた。
わたしは今まで、本気でダイエットに取り組んだことはない。が、年頃になって「痩せたいなー」と思ったことくらいはある。
しかし間食を減らすと決めても、「今日は体育祭の準備で疲れたから特別に」「生理中はどうしてもお腹が空いちゃうからしかたない」と、なんやかんや理由をつけてそのルールを破ってしまい、長続きしなかった。
いや、長続きしなかったというより、そもそもダイエット自体始まっていなかったというほうが正しいかもしれない。
「今回だけは」と都合のいい理由をつけて自分を納得させ、すぐに目の前の誘惑に負けてしまう。だから、「ダイエットした」と胸を張って言えるほど頑張ってはいないのだ。
ドイツに移住してから約5キロ太り、コロナ禍でさらに5キロ太ってしまったので、数日間野菜を積極的に食べたり、少し運動をしたことはある。しかし結果が出る前に、すぐにやめてしまった。
どうにもうまくいかない。わたしは意思が弱いのだろうか。
ダイエットに成功した女友だちにこの話をしたうえで、「〇〇ちゃんみたいに本気でやらないとダメなんだろうね」と言ったところ、こう言われた。
「デブは自分を甘やかすのが得意だから、これくらいやらないとダメなの!」
この言葉は、自分を甘やかし続けてきたわたしの心にクリティカルヒットした。
もちろん、病気や体質で太りやすい・太りづらいはある。体重が重い=怠惰、ということは決してない。
しかしわたしの場合、そういった事情を抜きに、ただただ好きなだけ食べてゴロゴロしていた結果の脂肪である。これは言い訳できない。
ダイエットノウハウがいくらあったところで、成功するかどうかは結局のところ、目標のために自分を律することができるかで決まるのだ。
ではなぜ、わたしは自分を律することができず、なぜ彼女はダイエットをやり遂げたのか?
答えは単純で、「誘惑に打ち勝つほど達成したい目標があるかどうか」だ。
みんながやっているからなんとなくダイエットしよう。そんな気持ちであれば、なんとなくチョコレートを食べてしまうのも当たり前。しかしウェディングドレスを着るという譲れない目標があれば、チョコレート1粒の誘惑なんかにも負けずにいられるだろう。
これは、節約でも同じだ。
「老後のためにお金が必要だから」とぼんやりした気持ちで節約を始めても、「今日は仕事を頑張ったから夜ご飯は贅沢しよう」「お気に入りのセーターの色違いが出たのか、買っちゃおう」と自分を甘やかしてしまう。
でもそれがもし、夏に引っ越すための資金だったら?
「引っ越したら大きいテレビを買うんだ。ムダなことにお金を使っていられない」とブレーキをかけやすいんじゃないだろうか。
「お金はたくさんあったほうがいい」「無駄遣いには気をつけよう」なんて気持ちより、「今我慢して大好きなアイドルのコンサートに行く」「このお金で来年こそは海外旅行」という確かで具体的な目標があったほうが、頑張れる。
「目標設定が大事」なんて言わずもがな、目標は「このためになら頑張れる」という、モチベーションのトリガーなのだ。
それを達成することで自分が幸せになれると確信できる目標があれば、ちょっとやそっとの誘惑にも負けないはずだから。
今までわたしがダイエットも節約もうまくいかなかったのは、明確で具体的な目標がなかったからなのだろう。なんとなくで始めるから、なんとなくやめてしまったのだ。
……が、この記事の結論は、「ダイエットも節約も目標設定が大事」ではない。一番大事なのは、実は別のことだと思っている。
というのも、実は彼女はそのあとにリバウンドをして、現在は結婚式前よりさらに太ってしまったのだ。
彼女の場合、「結婚式」という明確で具体的な目標があったぶん、それが終わりタガが外れて爆食いしてしまったらしい。
だからわたしは、「目標設定は大事。でもなにより大事なのは、いかに楽しく続けられるか」だと思うわけだ。
一時的でも、目標を達成さえできれば何でもいい、という場合であれば話は別だが、せっかく痩せたならそれをキープしたいし、せっかくお金を貯める生活サイクルができあがったなら、それを維持したいと思うもの。
でもあまりに厳しい方法でダイエットや節約をした場合、目標達成までは頑張れても、その後に反動がくる可能性が高い。
だからまず、何としてでも達成したい目標を設定する。その目標に向かって努力する過程で、自分に合っているやり方を見つける。目標達成後は努力値を少し下げて、緩やかにストレスなく続けていく。これが理想じゃないだろうか。
節約に例えれば、まず夏の引っ越しのために50万円貯めることを目標にする。具体的に何を買うかもイメージする。そのために自炊に力を入れ、副業をし、趣味の推し活も控える。
そこで自炊の楽しさに目覚めるも、副業は体力的に負担が大きく、趣味を我慢するのもストレスだったとしよう。
それならば目標達成後、副業は辞め、推し活は限度額を決めたうえで行い、自炊による節約はしっかりと続けていけばいい。それならば、目標達成前よりも、貯蓄金額としては小さいものだが、その後も緩やかに節約を続けられるはずだ。
ダイエットでも節約でも、目標設定が大事。でもなにより、目標達成後リバウンドしないよう、目標達成までに「ストレスなく続ける方法」を見つけることが大切なのだと思う。