新生活を始めるには新居の初期費用や引越し費用、家具・家電の購入など高額な費用がかかります。
特に負担が重いのが新居の初期費用で、敷金・礼金その他の費用を合わせると数十万円単位になることもあり、新社会人にとっては大きな負担となります。
本記事では新居の初期費用を抑えるための方法を解説します。
賃貸物件を借りるときには、主に以下のような費用がかかります。
ここでは、賃貸物件でかかる初期費用の目安について解説します。
敷金とは、賃貸借契約を結ぶ際に賃料や貸室の原状回復費用等の支払いを担保する目的で、貸主が借主から預かるお金です。
一般的に、家賃の1~2ヵ月分を貸主に支払います。
賃料の滞納や原状回復費用が発生しない場合は退去時に返還されます。
ただ、地域によっては敷金の一部を返還しないケースもあるので、契約時にはよく確認しましょう。
近年では家賃保証に加入することで敷金が発生しない物件も、多く提供されています。*1
礼金とは、貸主に部屋を貸してもらう「お礼」として支払うお金です。
したがって、敷金のように返還される費用ではありません。礼金の相場は賃料の1ヵ分、あるいは2ヵ分が一般的で、正式に賃貸借契約を結んでから支払います。
昨今では敷金と同様に礼金なしの物件も多く存在するので、初期費用を抑えたいときにはチェックしたいポイントです。*1
仲介手数料とは、物件の仲介を依頼した不動産会社に支払うお金です。
貸主と正式に賃貸借契約が成立した際に月額賃料の0.55ヵ月分(消費税込み)の範囲内を仲介手数料として支払います。*2
ただ、不動産会社は借主が承諾した場合、1ヵ月を上限に受け取ることも可能です。
仲介手数料の額は不動産会社によって違いがあるため、同じ物件でもA社では0.5ヵ月分、B社では1ヵ月分など金額が異なる場合があります。
近年では連帯保証人を立てる代わりに、家賃保証会社への加入を求める貸主が多くみられます。
家賃保証料とは家賃保証会社に支払う保証料で、初回は家賃の0.5~1ヵ月分が相場です。
その後、年間1万円程度の保証料がかかります。*3
賃貸借契約の際には前家賃として、あらかじめ翌月分の家賃を支払うのが一般的です。
そのため、 契約した月中に入居する場合は、契約時に次回の賃料支払日まで日割り計算した賃料を支払うことになります。
例えば7月の半ばに賃貸契約を締結した際には、7月の残り日数の家賃と、翌月である8月分の家賃を合わせて支払います。*1
部屋を借りるときに借主が加入するのが入居者用の火災保険です。
貸主の目的は借家⼈賠償責任補償で、万が一、借主の故意・過失により貸室に損害を与えた場合、賠償してもらうために加入を条件として部屋を貸します。
火災、自然災害、盗難や、日常生活の思いがけない事故により、入居者の家財が壊れた場合も補償します。
保険商品により保険料には違いがありますが、年間1~2万円が一般的です。*5
以前の入居者が使用していた鍵を交換するために費用がかかることがあります。
万が一、合鍵などで侵入されるリスクを防ぐためです。
国土交通省が作成した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば、「鍵交換は入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり、賃貸人(貸主)の負担とすることが妥当」と定義されています。
しかし、賃貸借契約書の特約などで「賃借人(借主)の負担とする」と記載されており、その内容で契約した場合は入居者の負担となります。*6
鍵交換費用の目安は1〜2万円です。*4
引越し費用は「基準運賃+料金+実費+附帯サービス」で構成されており、荷物の量や移動距離、引越しシーズンによって料金が異なります。
例えば、大阪から東京に引越しする場合、4トン車1台で作業員3人に依頼した場合は、以下の費用が目安となります。
参考)
国土交通省 近畿運輸局「引越料金のしくみ」
:筆者作成
上記の引越し費用は、あくまで一つの目安であり、引越し会社により料金は異なります。
3月は引越しシーズンなので月末になるほど料金が高くなりますが、4月になると安くなっていきます。
それでは実際に一人暮らしの初期費用をシミュレーションしてみましょう。
家賃7万円の物件で一人暮らしを始めた場合、以下の条件で計算すると、概算で以下のようになります。(※あくまでも概算です)
家賃7万円の物件で上記の条件を設定して一人暮らしを始めると、52万円となります。
家具・家電を合わせるとさらに費用はかさむので、いずれかの項目で抑えておきたいところです。
新しく部屋を借りるときには、数十万円もの初期費用が必要な物件もあります。
何かとお金がかかる新生活シーズンでは、できるだけ出費を抑えたいものです。
ここでは、新居の初期費用を抑える方法について解説しましょう。
賃貸物件を借りるときに大きな割合を占めるのが、敷金・礼金です。
近年では敷金・礼金ゼロの物件が多く提供されているので、注目したいポイントです。
特に、礼金は返還されないので、礼金ゼロの物件を選ぶと初期費用を大幅に節約できます。
フリーレント物件とは、一定期間の家賃が無料になる物件のことです。
フリーレント期間は物件により違いがあり、数週間のこともあれば1ヵ月、2ヵ月のケースもあります。*7
前家賃を支払わずに済む場合もあるので、初期費用を安くしたい人に適しています。ただ、短期での解約ではペナルティとして違約金が発生するので注意しましょう。*7
仲介手数料は不動産会社により違いがあり、家賃0.5ヵ月分の会社もあれば上限いっぱいの1ヵ月分を請求する会社も存在します。
そのため、仲介手数料の安い不動産会社で契約するのも良い方法です。
また、不動産会社が貸主の場合で借主と直接契約する場合は、仲介手続きが発生しないため、仲介手数料が無料になります。*8
貸主が賃貸物件を貸し出す条件として借主に求めるのが「火災保険の加入」です。
通常、貸主が指定する火災保険に加入します。
借主は貸主が指定した火災保険に必ずしも入る義務はないので、自分で安い保険を見つけて加入しても、原則問題ありません。ただ、貸主が求めている補償内容を満たす保険に入ることが必要です。*9
新生活を始めるときは、物件を借りるときに発生する初期費用の他に、家具・家電などの購入費用もかかります。
一人暮らしを始めるときは、家具・家電は最低限のものを購入して、少しずつ揃えていくのもよいでしょう。
引越し費用は新生活シーズンになると通常より高くなるので、荷物が少ない場合は自分で運ぶのも一つの方法です。
例えば、レンタカーでアルミコンテナ付きのトラックを借りれば、1日2万円程度で借りられます。*10大型の家具・家電が少ない場合は、家族や友人に協力してもらって運ぶと大幅に節約できます。
新生活を始めるにはまとまった資金が必要ですが、物件の選び方によっては初期費用を抑えることが可能です。
不動産会社に物件を探してもらう場合、仲介手数料を安くするのは難しいですが、「敷金・礼金ゼロ」「フリーレント1ヵ月付き」などの物件を選べば全体的な費用を圧縮できます。
初期費用を上手く削減して、金銭的に余裕のある状況で新生活を始めましょう。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意下さい。
出典
*1 不動産ジャパン「不動産基礎知識:借りるときに知っておきたいこと」
*2 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(第四 貸借の媒介に関する報酬の額)p2
*3 積水ハウス不動産パートナーズ「その他の保証委託サービス」」
*4 UR賃貸住宅「賃貸物件にかかる費用。初期費用・更新費用の内訳と安く抑える方法」
*5 損保ジャパン「賃貸住宅⼊居者専⽤⽕災保険『THE 家財の保険』ご契約プラン」
*6 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」p.21
*7 UR賃貸住宅「フリーレントの基礎知識。メリットや賃貸物件の探し方、注意点を解説」
*8 UR賃貸住宅「仲介手数料と礼金の違いは?新居を探す前に確認しておきたい基礎知識」
*9 チューリッヒ保険会社「家財保険とは。火災保険との違いは?賃貸の家財保険は必須?」
*10 ニッポンレンタカー「バン・トラック」