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米国雇用統計とは?注目される理由と為替相場の動きについてわかりやすく解説
米国雇用統計とは?注目される理由と為替相場の動きについてわかりやすく解説

米国雇用統計とは?注目される理由と為替相場の動きについてわかりやすく解説

2024/09/24に公開
提供元:Money Canvas

ニュースなどで耳にする「米国雇用統計」というキーワード。
アメリカ国内の雇用情勢を表す経済指標のひとつで、特に株式投資や外国為替の影響を受ける投資信託に興味がある方は正確に理解しておく必要があります。

本記事では、米国雇用統計の概要や結果が発表されるタイミング、米国雇用統計が世界中から注目されている理由、結果が発表された際の為替相場の動きなどについて、わかりやすく解説します。
投資における米国雇用統計の見方を理解したい方は、ぜひ参考にしてください。


米国雇用統計とは

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(出典:じぶん銀行「米国雇用統計の概要」をもとに筆者作成)


米国雇用統計は、アメリカ国内の雇用情勢を調査する統計であり、世界的に最も重要な経済指標のひとつです。
米国雇用統計には週労働時間、建設業就業者数、製造業就業者数、金融業就業者数などの項目が含まれますが、 特に「失業率」「非農業部門雇用者」「平均時給」の3つが重要視されているので、それぞれ詳しく解説します。


失業率

失業率は、労働力人口に対する完全失業者の割合から算出されます。
具体的には、アメリカ国内における「働く意思のある16歳以上の失業者数」を、労働人口(失業者数+就業者数)で割った数値です。
ここでいう失業者数は、過去4週間以内に求職活動をしていることが条件となります。また、軍隊従事者や刑務所の服役者などは含まれません。

失業率は、経済の健全性を評価するための重要な指標であり、失業者の増減により個人消費や物価の動向が予測されます。
失業者が多い場合、個人消費が減少しデフレ圧力が高まる一方、失業者が少ない場合、個人消費が増加しインフレ圧力が強まることが予想されるからです。*1

失業率の動向は投資家や政策立案者にとって重要な情報であり、経済政策の策定や市場予測に活用されます。
例えば、失業率が高い場合、政府や中央銀行は景気刺激策を講じる可能性があり、逆に失業率が低い場合、インフレ抑制のための対策が取られることが一般的です。


非農業部門雇用者数

非農業部門雇用者数(Nonfarm Payrolls)は、農業従事者と自営業を除く各産業分野における政府や民間企業の雇用者数を示す指標です。
給与支払帳簿に基づいて集計されるため、家計サンプル調査ベースのデータに比べて正確です。
雇用が前月比で増加すれば賃金が増え、賃金の増加は個人消費の拡大につながります。

この指標はアメリカの中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)も重要視しており、毎月10~15万人程度の増加があれば「安定した雇用の伸び」と判断します。
そして、金利操作や資産買入れなどでインフレを抑制し、失業率改善などを目指します。


平均時給

平均時給は、農業従事者を除く主要産業の1時間当たりの平均賃金とその増減を示す指標です。
平均賃金が上がると個人消費が拡大し、インフレ傾向を示すと捉えられます。
これにより、人件費の推移を把握し、インフレや景気の状況判断に役立ちます。

一般的に失業率や非農業部門雇用者数に注目が集まりますが、平均時給も無視できません。
例えば、2023年1月6日の米国雇用統計発表後、ドル円は134.50円から133.30円に変動しました。*2
この時、失業率や非農業部門雇用者数は良好な結果でしたが、平均時給が予想を下回ったため、市場に影響を与えたのです。


米国雇用統計はいつ発表される?

米国雇用統計は基本的に毎月第1金曜日に発表されますが、「12日を含む週の翌週から数えて3週目の金曜日」という条件があるため、場合によってずれることがあります。*3
発表はニューヨーク時間の8:30(日本時間ではサマータイム中は21:30、冬時間は22:30)です。調査対象期間は毎月12日を含む1週間です。
発表直後には相場が大きく動くため、本格的に投資をするのであれば発表日と発表時間を必ず把握しておくようにしましょう。


米国雇用統計を世界が注目する理由

米国の雇用情勢は個人消費に直結し、FRBが注目する重要な指標です。
米国のGDPの約70%を個人消費が占めており、経済の向上や悪化は個人消費の増減に大きく依存しています。*4
雇用統計のデータが改善すれば賃金が上昇し、個人消費が増加する一方で、データが悪化すれば賃金が低下し、個人消費が減少することが如実に現れます。
そのため、米国雇用統計は国内外から注目されているのです。


統計発表前には予想値を発表

米国雇用統計は、結果発表前に各社より予想値が発表されます。
予想値は雇用統計が発表される前に項目ごとに発表される予想のことで、各社の予想値の平均が「市場予想」です。
発表された結果が市場予想を上回る場合、投資家は米国経済の先行きが良好と判断し、株価が上昇します。
また、ドルの売買が活発化し、金利も上昇するという流れが生じます。

このため、雇用統計の予想値と実際の結果は投資家の判断材料として重要です。


「雇用情勢が改善される」はいいことばかり?

FRBは、米国雇用統計を重要視しています。FRBの主な役割は雇用最大化と物価安定であり、雇用統計は金融政策の指標となるからです。

雇用情勢が改善しインフレ率が上昇すると、FRBは政策金利の引き上げを検討し、株式市場に影響を与えます。
金利上昇により企業の借入コストが増加した場合、収益性が低下するため、株価は下落傾向になります。
また、債券利回りが上昇し、相対的に株式の魅力が低下します。

さらに、政策金利の引き上げは市場金利の上昇を招き、ドル買いが進みドル高になります。高金利が海外からの投資を呼び込みドルの需要を高めるためです。
逆に政策金利の引き下げはドル売り・ドル安が進みます。
このように、FRBの金融政策は投資家の動向に影響を及ぼし、結果として為替レートにも大きな影響を与えます。


米国雇用統計が投資を行う人に与える影響

米国雇用統計は、投資を行う人にとって重要な指標となります。雇用統計は、米国経済の健康状態を示す主要な経済指標のひとつであり、その結果は株式市場に大きな影響を与えます。

例えば、 雇用統計が予想を上回る結果を示した場合、米国経済が好調であると判断され、S&P500を含む米国株式の価格が上昇する傾向にあります。

S&P500とは、米国の主要500社の株価を反映する代表的な株価指数で、米国株式市場全体のパフォーマンスを示す指標として広く使用されています。
大型株から中型株まで幅広い業種を網羅しているので、投資家にとって重要な株価指数です。*5

このような状況では、米国株式ファンドに投資することで、リターンの可能性があります。

一方、 雇用統計が予想を下回る結果を示した場合、経済の先行きに不透明感が生じ、株式市場が下落することがあります。

この場合、投資は慎重に行う必要があります。
特に市場のボラティリティ(変動率)が高まる中での投資はリスクを伴うため、分散投資や長期的な視点での資産運用が求められます。

ボラティリティとは、金融市場における価格変動の度合いを示す指標です。株価や為替レートなどの変動の激しさを表し、高ボラティリティは大きな価格変動を意味し、リスクが高いとされます。一方、低ボラティリティは価格が安定していることを示します。


米国雇用統計発表時の為替相場の動き

米国雇用統計発表時には、為替相場が大きく動くことがよくあります。
例えば、雇用統計が予想を上回ると、ドルが強くなりやすく、逆に予想を下回るとドルが弱くなる傾向があるからです。
これにより、円やユーロなど他の通貨とドルの交換レートも変動しやすくなります。

予想値と実際の発表結果に大きな差がなければ、相場に大きな変動は起きにくいものの、差が大きい場合、変動は避けられません。
ただ、発表前の週になると、投資家は「様子見ムード」となり、米ドル円の為替レートは動かなくなります。
「予想と実際の結果がどの程度違うかわからないため、一旦様子見をしよう」というムードになるためです。

発表後は、円安ドル高予想やドル安円高予想に基づく投資家の動きにより、為替相場が乱高下しますが、一定時間が経過すると相場は落ち着きます。


取引はいつも以上に慎重に

米国雇用統計の発表時には、通常よりも為替相場の値動きが大きくなり、投資家にとっては利益を狙いやすくなりますが、同時に慎重さも求められます。*6
投資家による注文が殺到し、為替相場が大きく変動することもあるため、このタイミングでの取引に対しては、いつも以上に慎重になりましょう。


米国雇用統計は最も重要な経済指標の1つ

米国雇用統計の概要や発表されるタイミング、世界中で注目されている理由について解説しました。
米国雇用統計は世界で最も重要な経済指標の1つで、投資家にとっては、アメリカ経済の先行きを見極めるためにも理解しておかなければならないものです。
雇用統計の結果により、大幅に為替相場が変動する可能性も大いにあります。発表日時や予想値を常に把握しておくようにしましょう。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。

*1 アセットマネジメントOne わらしべ瓦版「【ゼロから解説】米国雇用統計とは?株価への影響は?」
*2 ブルームバーグ「NY外為】ドル軟調、米雇用統計受けロング解消-133円台後半」
*3 インヴァスト証券「米国雇用統計はいつ発表される?重要な項目や為替相場との関係性を解説」
*4 東証マネ部「米雇用統計とはどのような指標?注目を集める理由を解説」
*5 マネックス証券「S&P500とは?NYダウとの違いやチャート比較でわかりやすく解説!」
*6 DMM FX「FXにおける重要な経済指標!雇用統計やFOMC等を参考にするポイントと活用方法」

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