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米長期金利の動向は?チャートを含め詳しく解説
米長期金利の動向は?チャートを含め詳しく解説

米長期金利の動向は?チャートを含め詳しく解説

2025/04/03に公開
提供元:大西勝士

米国の長期金利(以下、米長期金利)は、今後の経済動向を判断するうえで重要な経済指標の一つです。
米長期金利は米国だけでなく、日本の株価や為替にも影響を与えます。トランプ新政権の政策がインフレの再加速を招くとの見方もあり、今後の金利動向への注目度が高まっています。

そこで本コラムでは、米長期金利の概要や政策金利との違い、過去の推移、今後の見通しなどについて解説します。


米長期金利の概要

まずは、米長期金利の意味や決定要因、政策金利との違いについてみていきましょう。


米長期金利とは

長期金利とは、期間1年超のお金の貸し借りに使われる金利です。10年物国債の金利が、長期金利の代表的な指標とされています。米長期金利といえば、米国債10年物利回りを指すのが一般的です。*1

長期金利は中央銀行(FRB、日銀など)の金融政策ではなく、景気の先行きや物価上昇の予測を反映して変動することから「経済の体温計」と呼ばれることがあります。*2

米国は世界最大の経済大国であり、日本を含む世界の国々は米国経済の影響を受けます。日本人にとっても、米長期金利は景気の先行きを判断するうえで重要な経済指標といえるでしょう。


長期金利の決定要因

長期金利は、さまざまな要因によって決定されます。主な要因としては、次のようなものが考えられます。


  • 景気の先行き
  • インフレ率(物価)
  • 中央銀行の金融政策
  • 国の財政政策

一般的に、景気がよいときは企業や個人からの資金需要が増加するため、金利は上がります。反対に、景気が悪いときは資金需要が低下するため、金利は下がります。*3

インフレ率とは、物価上昇の度合いを表す指標のことです。*4
景気拡大によりインフレ(物価上昇)が続くと、経済の過熱を抑えるために、中央銀行は政策金利を引き上げます。逆に、景気後退によってデフレ(物価下落)傾向になると、政策金利を引き下げます。*5
長期金利は景気の動きを反映しやすいことから、インフレ率や金融政策も長期金利に影響を与えるといえます。*1

また、国の財政収支が悪化して国債を増発すると、国債の需給が緩み、国債の価格が下落する可能性があります。国債は価格が下がると金利が上がる関係にあるため、国の財政政策も長期金利の決定要因の一つです。*6


長期金利と政策金利の違い

政策金利とは、中央銀行が行う金融政策の誘導目標金利(短期金利)のことです。米国の場合、FF金利(フェデラル・ファンド金利)と呼ばれます。*7

政策金利は中央銀行の金融政策で決まりますが、長期金利は景気の先行きや物価上昇の予測などを反映し、市場で決定されるのが大きな違いです。*2

なお、長期金利が政策金利(短期金利)を下回ると、景気後退のサインといわれています。*1


米長期金利の過去の推移

以下は、米長期金利(米10年国債利回り)の推移を示したチャートです。


11

出典)三菱UFJアセットマネジメント「投資戦略マンスリー2025年2月 P6」


このチャートからわかるように、長期金利は常に変動しており、過去には大きく上昇・下落しています。また、乖離している時期はあるものの、政策金利とおおむね似た動きをしていることも読み取れます。


米長期金利の動向と今後の見通し

米国では、2025年に入りトランプ新政権がスタートしました。トランプ新政権では、関税引き上げや移民規制強化、減税延長・拡大などを政策として掲げています。*8
関税引き上げは輸入品価格の上昇、移民規制強化は労働力の減少による賃金の上昇の要因となるため、インフレ再加速への懸念が広がっています。*9

FRBはインフレ率に低下傾向がみられるとして、2024年9月には4年半ぶりに利下げを決定し、その後も追加利下げを実施してきました。*10

しかし、2025年1月の会合では、インフレ再加速への警戒感から4会合ぶりに利下げを見送りました。FRB議長は「利下げを急ぐ必要はない」と述べており、インフレ率や経済指標の結果によっては利下げペースが鈍化するかもしれません。そうなれば、米長期金利も高止まりする可能性があるでしょう。 *11

また、減税延長・拡大は景気を下支えする効果がある一方で、財政悪化により長期金利への上昇圧力が高まる可能性があります。*8


米長期金利が与える影響は?

米長期金利の動向は、為替や株価に次のような影響を与える可能性があります。


為替への影響

為替に与える要因の一つに日米金利差があります。日米金利差とは、日本と米国の金利差のことです。政策金利のほかに、長期金利の差も用いられます。*12

先述のとおり、米国はインフレ懸念や財政悪化懸念から長期金利に上昇圧力が強まり、高止まりの状態が続くとの見方があります。一方、日本は日銀による利上げと国債買い入れの段階的な減額により、長期金利は緩やかに上昇すると予想されます。日米金利差の縮小が進めば、ドル円相場は円高が進むかもしれません。*8

為替相場の変動は、外貨建て資産の価値に影響を与えます。外国株式や外国債券を組み入れた投資信託で運用している場合は、保有資産の価値が増減する要因となるので注意が必要です。


〇日米金利差についてくわしく知りたい方はこちら

株価への影響

一般的には、金利が上がると株価は下落しやすく、金利が下がると株価は上昇しやすい傾向にあります。この仕組みは米国も日本も同じです。*13

米長期金利が上昇したり、高い状態が続いたりすると、米国の株価下落につながる可能性があります。
米国と日本の株価は連動する傾向にあるため、米国の株式市場の動向は日本の株価にも影響を与えるでしょう。
また、為替相場の動向も日本の株価に影響を与える要因となります。基本的に、円安になると輸出企業は売上高が増加し、円高になると輸入企業は製品や原材料を安く輸入できます。そのため、円安は輸出企業、円高は輸入企業の株価を押し上げる効果が期待できます。*13

米長期金利の動向によって為替相場が大きく動くことがあれば、日本の株式市場も大きく反応する可能性があるでしょう。


まとめ

米長期金利は、今後の景気動向を判断するうえで重要な経済指標です。その動向は米国だけでなく、日本を含む世界経済に大きな影響を与えます。株式や投資信託で資産形成に取り組むなら、米長期金利の動向を注視しておきましょう。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客さまご自身の判断でお取り組みをお願いいたします。

出典
*1 日本経済新聞「長期金利とは 10年物国債が指標、景気映しやすく」
*2 三菱UFJモルガン・スタンレー証券「長期金利(ちょうききんり)」
*3 全国銀行協会「景気・物価・為替と金利の関係」
*4 auじぶん銀行「インフレ率とは?資産運用における重要な指標を解説」
*5 三菱UFJ銀行「政策金利」
*6 内閣府「世界の潮流2003年秋(第1章 長期金利上昇の要因と物価連動債の役割)」
*7 三菱UFJモルガン・スタンレー証券「FF金利(フェデラル・ファンドきんり)」
*8 三菱UFJ銀行「内外経済の見通し(2024年11月)」
*9 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「トランプの経済政策はインフレのリスクあり」
*10 Money Canvas「FOMCはいつ開催?日程や株価・為替に与える影響をわかりやすく解説」
*11 NHK「米FRB 利下げ見送り発表 去年7月以来 インフレ再加速を警戒か」
*12 Money Canvas「日米金利差はなぜ注目される?為替や株価との関連性をわかりやすく解説」
*13 Money Canvas「アメリカFRBの利上げ・利下げは日本にどう影響する?」


大西 勝士
おおにし かつし

金融ライター(日本FP協会 AFP認定者)。早稲田大学卒業後、会計事務所、一般企業の経理職、学習塾経営などを経て2017年10月より現職。大手金融機関を含む複数の金融・不動産メディアで記事を執筆中。得意領域は投資信託、不動産、税務。

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