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【弁護士が解説】こんなにもある年収の壁一覧 控除額の見直しで生活はどう変わる?
【弁護士が解説】こんなにもある年収の壁一覧 控除額の見直しで生活はどう変わる?

【弁護士が解説】こんなにもある年収の壁一覧 控除額の見直しで生活はどう変わる?

21時間前に公開
提供元:阿部由羅

所得税・住民税や社会保険の扶養には「年収の壁」が存在し、壁を超えた途端に手取りが減るという現象が起こります。

最近では、物価高や賃上げの流れなどを踏まえて、所得税に関する「年収の壁」が103万円から160万円に引き上げられました。
そのほかにも、手取りに影響を及ぼす重要な改正が行われたので、最新の「年収の壁」について理解を深めましょう。

本記事では、令和7年度税制改正によって大幅に変更された「年収の壁」につき、最新の状況を解説します。


「年収の壁」一覧

世間一般で「年収の壁」と呼ばれているものには、主に以下の種類があります。

  • 住民税に関する「年収の壁」
    • 住民税が課されるライン(100万円→110万円

  • 所得税に関する「年収の壁」
    • 所得税が課されるライン(103万円→160万円)
    • 扶養控除を受けられるライン(103万円→123万円)
    • 配偶者特別控除を満額受けられるライン(150万円→160万円)

  • 社会保険に関する「年収の壁」
    • 社会保険の加入義務が生じるライン(105万6000円)
    • 社会保険の扶養から外れるライン(130万円)

次の項目から、各「年収の壁」について解説します。


住民税に関する「年収の壁」|100万円→110万円に引き上げ

住民税に関する「年収の壁」は、年収が一定の水準を超えると住民税が課されるようになるというものです。

令和6年以前の住民税に関する「年収の壁」は、給与所得控除の最低額55万円と非課税限度額の45万円を足した「100万円」でした。

令和7年以降は、給与所得控除の最低額が65万円に引き上げられたため、住民税に関する「年収の壁」は「110万円」となります。
パートやアルバイトなどの給与所得者は、年間収入金額が110万円を超えると、住民税が課されるようになります。

ただし自治体によっては、独自に住民税の超過課税を行っているケースがあります。その場合、住民税に関する「年収の壁」が110万円ではないこともあり得るのでご注意ください。


所得税に関する「年収の壁」

所得税に関する「年収の壁」は、主に以下の3つがあります。


  • 所得税が課されるライン(103万円→160万円)
  • 扶養控除を受けられるライン(103万円→123万円)
  • 配偶者特別控除を満額受けられるライン(150万円→160万円)

所得税が課されるライン|103万円→160万円に引き上げ

所得税も住民税と同様に、年収が一定の水準を超えると課されるようになります。

パートやアルバイトなどの給与所得者の場合、令和6年以前の所得税が課されるラインは、給与所得控除の最低額55万円と基礎控除の最高額48万円を足した「103万円」でした。

令和7年以降は、給与所得控除の最低額が65万円に引き上げられ、基礎控除の最高額が95万円に引き上げられました。その結果、所得税が課されるラインは「160万円」に引き上げられます。

パートやアルバイトなどの給与所得者は、年間収入金額が160万円を超えると、所得税が課されるようになります。


扶養控除を受けられるライン|103万円→123万円に引き上げ

12月31日現在の年齢が16歳以上で、年間の合計所得金額が一定水準以下の親族(配偶者を除く)を扶養している人は、その年の所得から「扶養控除」を受けることができます。*1

令和6年以前は、扶養親族の年間合計所得金額は48万円以下とされていました。パートやアルバイトなどの給与所得者であれば、55万円の給与所得控除が適用されたため、扶養控除を受けられるラインは「103万円」でした。

令和7年以降は、扶養親族の年間合計所得金額が58万円以下、給与所得控除の最低額が65万円に引き上げられました。
その結果、扶養控除を受けられるラインは「123万円」に引き上げられます。
たとえば、扶養している大学生の子どものアルバイト年収が120万円の場合、令和6年以前は扶養控除が受けられませんが、令和7年以降は扶養控除を受けることができます。


配偶者特別控除を満額受けられるライン|150万円→160万円に引き上げ

年間の合計所得金額が一定水準以下の配偶者を扶養している人は、その年の所得から「配偶者控除」または「配偶者特別控除」を受けることができます(※控除を受ける人の合計所得金額が1000万円以下の場合に限ります)。*2*3

12月31日現在の配偶者の年齢が70歳未満で、自分の合計所得金額が900万円以下の場合、配偶者控除の額は38万円とされています。
配偶者特別控除は満額なら38万円で、配偶者控除と同額です。年間の合計所得金額が増えると配偶者特別控除の額が減っていき、133万円(給与年収201.6万円)を超えるとゼロになります。

配偶者特別控除を満額受けられるラインは、年間の合計所得金額95万円以下とされています。
パートやアルバイトなどの給与所得者の場合、令和6年以前は給与所得控除の最低額が55万円とされていたため、配偶者特別控除を満額受けられるラインは「150万円」でした。

令和7年以降は、給与所得控除の最低額が65万円に引き上げられたため、配偶者特別控除を満額受けられるラインは「160万円」となります。
たとえば、扶養している配偶者のパート年収が155万円の場合、令和6年以前は配偶者特別控除の額が36万円に減りますが、令和7年以降は満額の38万円が適用されます。


社会保険に関する「年収の壁」

所得税や住民税のほか、社会保険(=健康保険・厚生年金保険)に関しても以下の「年収の壁」が存在します。令和7年度税制改正では、社会保険に関する「年収の壁」は変更されず、据え置かれています。


  • 社会保険の加入義務が生じるライン(105万6000円)
  • 社会保険の扶養から外れるライン(130万円)

社会保険の加入義務が生じるライン|105万6000円(≒106万円)で据え置き

従業員数51人以上の企業など、社会保険の適用事業所に勤務する短時間労働者(パート・アルバイトなど)は、以下の要件をすべて満たす場合は社会保険に加入する義務が生じます。*4


  • 週の勤務時間が20時間以上
  • 給与が月額8万8000円以上
  • 2か月を超えて働く予定がある
  • 学生ではない

※週の勤務時間が30時間以上である場合は、(2)~(4)のいずれかを満たしていなくても、社会保険に加入する義務が生じます。

上記(2)の「月額8万8000円以上」は、年収に直すと「105万6000円以上」です。パートやアルバイトなどの年収が105万6000円以上になると、社会保険に加入する義務が生じます。
社会保険の加入義務が生じるラインは、だいたいの数字を用いて「106万円の壁」と呼ばれることがあります。


社会保険の扶養から外れるライン|130万円で据え置き

社会保険に加入している配偶者や親などに扶養されていて、自分の年収が130万円未満であれば、社会保険の被扶養者認定を受けることができます。*5
この場合、自分の分の社会保険料を追加で負担する必要がありません。

年収が130万円以上になると、社会保険の扶養から外れ、自分で国民年金や国民健康保険などに加入する義務が生じます。自ら保険料を支払う必要があるので、手取りが大幅に減ってしまうことになります。


まとめ

令和7年度税制改正により、所得税や住民税の「年収の壁」が大幅に変更されました。特にパートやアルバイトとして働いている方は、手取りに大きな影響が生じる可能性があるので、最新の情報を調べておきましょう。



本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。

出典
*1 国税庁「No.1180 扶養控除」
*2 国税庁「No.1191 配偶者控除」
*3 国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
*4 日本年金機構「Q 私は、パートタイマーとして勤務しています。社会保険に加入する義務はありますか。」
*5 全国健康保険協会「被扶養者とは?」


阿部 由羅
あべ ゆら

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

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