
「転職後は住宅ローン審査が通りにくくなる」というのは本当なのでしょうか。
せっかく転職して年収が上がっても、住宅ローン審査が通らなければ自宅購入を諦めることになるかもしれません。
このようなことが起きないようにするためには、転職と住宅ローンの関係をよく理解しておく必要があります。
そこで本稿では、「なぜ転職すると住宅ローンが通りにくくなるのか」「転職後に住宅ローンを組みたい場合はどうしたらよいのか」「住宅ローンが組めなかった場合はどうするか」を解説します。
住宅ローンを検討している方、転職を考えている方は、ぜひご一読ください。
国土交通省が行っている「民間住宅ローンの実態に関する調査」によれば、9割以上の機関が以下項目を重視していることが分かります。
令和6年度調査では、「完済時年齢」(98.4%)、「健康状態」(95.1%)、「借入時年 齢」(96.0%)、「年収」(93.4%)、「勤続年数」(93.2%)、「返済負担率」(90.3%)、 「担保評価」(90.5%)等について、引き続き9割以上の機関が融資を行う際の審査項目 としている。
出典)国土交通省「令和6年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」p.19
このうち、最も多くの機関が審査項目に入れているのが「完済時年齢(98.4%)」です。
次いで「健康状態(95.1%)」「借入時年齢(96.0%)」「年収(93.4%)」「勤続年数(93.2%)」「返済負担率(90.3%)」 「担保評価(90.5%)」と続きます。
上記の審査項目を見ると、各機関が「住宅ローン返済の安定性」を重視していると判断できるでしょう。
そのため、転職したばかりで住宅ローン審査を申し込んだ場合、「収入が安定するか見通せず、継続してローンを返済できるかは不透明」とみなされ、審査が通りにくくなる可能性があるのです。
なお、住宅ローンの審査に落ちてしまった場合、一定期間、金融機関が共有する信用情報に、住宅ローンの審査に落ちたという記録が残ります。
住宅ローンに限らず、金融機関のすべてのローン審査に通りづらくなる可能性があることも念頭に置いておきましょう。*1
転職後、絶対に住宅ローンを借りられないとは限りません。ここでは、比較的審査に通りやすいケースをご紹介します。 *2
関連会社やグループ会社への転籍は、自己都合退職とはみなさず、転籍前と合算して勤続年数を評価してもらえる場合があります。
この場合、勤続年数の短さによって厳しく審査される可能性が低くなるため、審査時に関連会社またはグループ会社への転職であることを伝えましょう。
ただし、年収が著しく下がってしまう場合には、年収関連の審査によって厳しく審査されることがある点に注意してください。
同業種内での転職によって年収が上がった場合も、審査が通りやすくなることがあります。
スキルアップ・キャリアアップによる転職とみなされるからです。
「中小企業に勤めていたけれど転職によって大手企業に転職した」「職位が上がった状態で転職できた」などの場合は、優位になることもあります。
ただし、短いスパンでの転職は、年収が上がっていたとしても収入の安定性が見通せないとして、厳しく審査される可能性があるので注意しましょう。
弁護士資格や税理士資格等を活かした転職は、住宅ローン審査が通りやすくなる場合があります。
ただし、独立開業する場合は、収入の安定性が低いと判断される可能性があり、審査に不利に働くことがあるので、覚えておきましょう。
「住宅ローンに通りやすいケースには該当しなかったけれど、住宅ローンを組みたい」
そんな場合は、転職後すぐに申し込むのではなく、少し落ち着いてから住宅ローンを申し込みましょう。
国土交通省の「民間住宅ローンの実態に関する調査」では、長期・固定金利の住宅ローンにおいて、勤続年数に関する調査に回答した908社のうち、審査に必要な勤続年数を「3年以上」と回答したのが128社(約14%)、「2年以上」と回答したのが53社(約6%)、「1年以上」と回答したのが612社(約67%)でした。*3
上記を鑑みると、少なくとも1年以上転職先に勤務すれば、住宅ローンの審査に通る可能性が高くなります。
「転職後に住宅ローンの審査を受けたけれど、そもそも申し込みできなかった」という場合も同様なので、ある程度の勤続年数をこなしてから、再度住宅ローンに申し込んでみましょう。
なお、住宅ローンの審査中に転職すると、収入や勤続年数に変更がでるため、再審査となる場合があります。希望する金額を借入できない可能性もあるため、審査中の転職は避けてください。*1
上記でも解説した通り、転職後に住宅ローンを組む場合は厳しく審査される可能性が高まります。
それでも住宅ローンに申し込みたい場合、以下3つの点に注意しながら検討を進めましょう。
金融機関によっては、「同じ勤務先に満1年以上勤務していること」を住宅ローンの利用条件に挙げている場合があり、そもそも転職1年未満の場合は住宅ローン自体を申し込めないことがあります。
住宅ローンを申し込む前に、各金融機関のホームページ等で利用条件を確認するようにしましょう。
転職後に住宅ローンを申し込む際、勤続年数が短い場合は審査で低い評価を受け、希望金額を借りられない可能性があるため、注意が必要です。
ただし、先述のように中小企業から大手企業に転職し収入が大きくアップする等、安定性やリスクの低減が認められた場合は、転職が有利に働くこともあります。
まずは金融機関に相談してみてください。
転職直後に住宅ローンを申し込む場合は、通常よりも提出書類が増えることがあります。
提出する書類は金融機関によって異なるため、必ず事前に確認するようにしましょう。
提出するべき主な書類には、以下のようなものがあります。
なお、住宅ローン申し込み時点で転職する予定がある場合も、必ず金融機関に申告してください。
融資を受ける前までに転職をしてしまうと、審査を受け直さなくてはいけない可能性があります。
転職したばかりで住宅ローンを申し込めない、希望の金額が通らない等の不利益があるとして、申し込み時に虚偽の申告をするのは絶対にやめましょう。
審査の際に発覚する可能性が高いうえ、審査に通らなくなる、新規申し込みができなくなることがあります。
また、万が一虚偽申告が通ってしまった場合でも、発覚時点で大きなリスクを負います。
たとえば、三菱UFJ銀行の住宅ローンの場合、内容や書類に故意による虚偽があると認められた時点で、直ちに債務全額を返済しなくてはなりません。*4
虚偽申告にメリットは一切ありません。虚偽申告は絶対に行わないようにしましょう。
今回は、転職と住宅ローンの関係性について解説しました。
勤続年数が少なければ少ないほど、住宅ローン審査が厳しくなってしまうため、住宅ローンを申し込む際には転職するかどうかも視野に入れながら検討しましょう。
できれば転職直後は住宅ローン申し込みを控えたほうが無難です。
転職後どのくらい期間を開けたらいいのかは金融機関によって異なるため、具体的なタイミングは金融機関に相談し、アドバイスを受けてみてください。
本コラム執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
出典
*1 三菱UFJ銀行「転職は住宅ローンの審査に影響するのか?転職前後で注意すべきポイントを解説します」
*2 三菱UFJ銀行「住宅ローンの審査に勤続年数はどう影響するのか?転職後でも申し込みができるのか解説します!」
*3 国土交通省「令和6年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」p.32
*4 三菱UFJ銀行「消費者ローン契約規定(令和 7 年 1 月版)第6条(期限前の全額返済義務)2 ⑥」p.3
