資産運用の重要性が広く認識されつつあるなか、「高配当株投資」が注目を集めています。
高配当株投資は、安定的に配当収入を得られる点が魅力的です。その一方で、減配(配当の減少)やそれに伴う株価下落などのリスクがある点に注意する必要があります。
本記事では、これから高配当株投資を始めようとする方に向けて、そのメリットやデメリットなどを解説します。
「高配当株」とは、配当利回りが高い株式のことを指します。
株式を保有していると、株価に対して年数%の配当金を受け取れることがあります。この場合、配当利回りは以下の式によって求められます。
配当利回り=1株当たりの年間配当金額÷株価
(例)
1株1000円、年間配当金額30円の場合
→配当利回りは3%
高配当株とされる配当利回りの水準は一概に言えませんが、おおむね年4%以上の配当が見込まれる銘柄は、高配当株に分類されるケースが多いようです。
配当金の仕組みとは?注意事項も併せて別記事で解説しています。
→株主優待とは?配当金とは?株式購入の注意事項を解説
高配当株投資には、主に以下のメリットがあるとされています。
高配当株を保有していると、定期的に安定した配当収入を得られやすいです。
配当金の支払いは、日本株の場合は年2回(半年ごと)、米国株の場合は年4回(3か月ごと)の銘柄が多くなっています。
配当利回りもおおむね年4%以上と、金融投資としては十分な水準といえそうです。
高配当株投資は、株式を保有しているだけでよいので、ほとんど手間がかかりません。
たとえば不動産投資を行う場合は、物件の管理や賃借人の募集などが必要になります。
これに対して高配当株投資は、証券会社に口座を開設して株式を購入すれば、そのまま放っておくだけで配当金が出れば振り込まれる仕組みとなっています。
本業などが忙しい方にとって、高配当株は魅力的な選択肢になり得るでしょう。
高配当株は、株式市場で必要な時にいつでも売却できます。高配当株の売却後、現金を受けとれるのは3営業日または4営業日後が一般的です。
たとえば不動産は、買い手が見つからなければ売却できません。売却価格も、買い手との交渉次第で変わります。
現金が必要となるケースに備えたい方にとっても、高配当株投資は魅力的な選択肢の一つになり得るでしょう。
高配当株投資にはメリットがある一方で、以下のようなデメリットがある点にご注意ください。
高配当株の配当利回りは、将来にわたって約束されたものではありません。あくまでも直近の実績値または予測値に基づくもので、将来的には減配(配当減少)のリスクがあります。
高配当株は、配当利回りの高さに注目して買われているケースが多いといえるでしょう。
そのため減配されれば、株価が大幅に下落する可能性があります。
高配当株を買った後で予期せぬ減配がなされた結果、大きな損失を被ってしまうおそれもある点に注意が必要です。
高配当株を含む上場株式の配当金には、合計20.315%の税金が課されます(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)。
所得税・復興特別所得税と住民税は、配当金が支払われる時点で源泉徴収されます。そのため、実際に受け取れる配当金額は、配当利回りの水準よりも少なくなる点にご注意ください。
なお、外国株式には本国でも課税されるため、さらに多額の源泉徴収が行われることがあります。
日本の税率に比べて多めに徴収された税額については、確定申告で「外国税額控除」*1の適用を受けることにより、還付を受けられる場合があります。
NISA口座を利用すれば、配当金を非課税で受け取ることができます。
高配当株の株価は、配当利回りの低い株式に比べて上がりにくい傾向にあります。配当金を支払うたびに会社から金銭が流出し、それが株価を押し下げる要因となるからです。
高配当株投資では、株価の値上がり益だけでなく、配当金による収入もトータルして得失を判断することが大切です。
買った時より株価が下落しても、慌てて売却するのではなく、中長期的な視点で保有し続ける姿勢が重要になります。
高配当株投資を行うに当たっては、基本的なポイントとして以下の各点にご留意ください。
株式の配当金は、「権利確定日」において株主名簿に記載された株主に支払われます。
権利確定日において株主名簿に記載されるのは、その2営業日前の「権利付き最終日」が終了した時点で株式を保有している人です。
権利付き最終日の翌日は「権利落ち日」と呼ばれます。
権利落ち日に株式を購入しても、その翌日の権利確定日にはまだ株主名簿に記載されないので、その期の配当金は受け取れません。
(例)
6月28日:権利付き最終日
→この日までに株式を購入すれば、配当金を受け取れる
6月29日:権利落ち日
→この日に株式を購入しても、配当金は受け取れない
6月30日:権利確定日
高配当株の特徴として、権利落ち日に大幅な株価下落が見られる傾向にあります。配当金を狙って高配当株を購入した人が、権利確定後一斉に売却するからです。
高配当株投資をするにあたっては、権利落ち日の株価下落は当然のものとして、あらかじめ織り込んでおくべきです。
権利落ち日に株価が下落しても動揺することなく、中長期的な視点で保有し続ける姿勢が求められます。
高配当株と呼ばれる銘柄の中には、長期間にわたって高配当を維持しているものと、一時的に配当金を引き上げたに過ぎないものが両方含まれています。
安定的な配当収入を得るためには、長期間にわたって高配当を維持している銘柄を選択することが望ましいでしょう。
そのため、高配当株投資の銘柄を選定する際には、現在の配当利回りだけでなく、過去の配当金推移も確認しましょう。
増配を続けている銘柄や、過去にほとんど減配がない銘柄であれば、安定した配当収入が期待できそうです。
高配当株投資を行うに当たっては、「配当性向」も注目すべき指標の一つです。
「配当性向」とは、税引後当期純利益のうち、どれだけの割合の配当金を支払ったかを示す割合です。
(例)
税引後当期純利益100億円、配当総額50億円の場合
→配当性向は50%
配当性向が低い会社は、配当金を支払う余力を残しているため、将来的な減配のリスクは比較的低いと考えられます。
これに対して配当性向が高い会社は、無理して配当金を支払っている可能性があり、将来的な減配リスクがあります。
配当性向は、一概には言えませんが、おおむね30%から60%程度であれば安定的な水準と考えても良いでしょう。
一方、配当性向が100%を超えている場合は、利益を上回る配当金を支払っていることになるので、警戒すべき水準となり得るでしょう。
高配当株投資は、中長期的な資産形成を図るに当たって有力な選択肢です。直近の配当利回りだけでなく、過去の配当金推移や配当性向などの指標もチェックして、安定した配当収入が見込まれる銘柄に投資してみましょう。
本稿執筆時点における情報に基づいて作成しておりますので、最新情報との乖離にご注意ください。
最終的な投資判断、金融商品のご選択に際しては、お客様自身の判断でお取り組みをお願いいたします。
出典
*1国税庁「No.1240 居住者に係る外国税額控除」