今回は、コモディティ投資信託とはなにか、またメリット・デメリットを解説していきます。
コモディティ(商品)とは、投資の世界では金やプラチナなどの貴金属、原油やガソリンなどのエネルギー、トウモロコシや大豆などの穀物などを指します。債券や株といった「伝統的な金融資産」に対し、不動産やコモディティは現物に価値がある「実物資産」とも言われます。
伝統的な金融資産と違う動きをすることから、分散投資効果が期待されるため、オルタナティブ資産(代替資産)の投資対象のひとつとしても市場が拡大しています。このあたりは記事の後半でくわしく説明します。
その代表が原油です。原油の指標として代表的なWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の先物価格は、2020年初に61ドル台でしたが、新型コロナの感染拡大による世界景気の下落懸念で、2020年4月には一時▲37ドル台と史上初のマイナスまで売られました。
マイナスというのは、原油を実際に保有するとなると、輸送代、保管代などがかかるため、お金をもらっても欲しくないということです。しかし、原油価格も2021年2月には60ドル台まで戻してコロナ前の水準に回復しています。
動意があったのは原油だけではありません。代表的なコモディティである金もその1つです。金の価格はコロナ後の2020年8月に2,000ドルを超えて史上最高値をつけました。
金が買われたのは、コロナ禍で世界的な金融緩和が進み、世界中の金利が低下し多くの国で金利がゼロ以下になったため、実物資産に投資マネーがシフトしたのが原因だと見られています。
また、銀の上昇も顕著なほか、銅価格は2021年2月に約9年ぶりの高値まで買われました。銅は実際の産業活動に使われることが多いので景気回復期に需要が拡大し、その市況は経済回復の先行指標とも言われます。
コロナ後の世界景気の回復、中国景気の拡大、そして、環境問題の緩和に世界が舵を大きく切ったことで、銅など金属の需給が逼迫するとの見方が広まったためです。
コモディティは21年に入り、原油、銅や銀やリチウムなどの金属に加え、小麦や大豆などの穀物まで堅調です。コモディティを代表する指数であるロイター・コア・コモディティCRB指数は、米国の主要株価指数を上回る上昇を見せています。コモディティの上昇は、「スーパーサイクルの上げ相場に入った」という強気の見方も一部にはでてきました。
スーパーサイクルとはコモディティの大きなサイクルのことで、前回は1996年から2008年までの12年間がスーパーサイクルでの上昇相場、2008年から2020年までが下落のサイクルでした。そのサイクルが2020年に底打ちし、大きな上昇サイクルに入ったという見方です。
コモディティ投資には「実物資産」「オルタナティブ資産」としての価値が高まっていると話しました。債券と株は「伝統的資産」であり景気拡大期に株は買われ、債券は売られるなど債券と株は基本的に逆相関するので分散投資にふさわしいと考えられています。
しかし、リーマンショックやコロナショックのような大きな急落局面では、伝統的資産でも同じよう急落し長期の運用資産が大きく損失を抱えました。大きな損失を避けるためには、伝統的な資産と相関関係が低く、別の動きをするオルタナティブ投資の比率を増やす長期の投資家が増えてきているのです。
オルタナティブ資産として代表的なのが、不動産、コモディティ、プライベート・エクイティ(未上場株投資)などです。とくに、コロナ禍での金融緩和で世界中の金利がなくなるような状態が、金などの実物資産への資金シフトを加速させることになったのです。
コモディティの値上がりは、過去最高水準の金融緩和、過去最高水準の経済対策でインフレが高まることへの対策だとも言えます。インフレ時に強い資産は実物資産であり、コモディティがそのなかの1つだからです。
コモディティ投資のメリットとデメリットは、次のようにまとめることができます。
【コモディティ投資のメリット】
コモディティは、「現物投資」「先物投資」が中心だと説明しましたが、貴金属では現物投資もありえますが、それ以外の金属や資源では現物投資は考えにくいでしょう。
また、直接商品先物取引を行う場合は、少額の資金で大きな取引ができるようになっているため、レバレッジ(*)を大きくするほどハイリスクになる点には注意が必要です。
*てこの原理を意味する言葉。投資や経済において、手元の資金に「レバレッジ」をかけることで、何倍もの金額を取引できます
さらに、先物には限月という決められた期間があり、長期投資する場合は、それなりのコストと手間がかかります。したがって先物取引はリスクが高く、初心者向けとは言えません。
金やプラチナなど貴金属に投資する場合は現物の購入もひとつの選択肢です。金価格が上昇したことで、金の買取ショップが繁盛したという話は聞いたことがあるのではないでしょうか?金やプラチナには積立投資もあります。
株式市場で、コモディティ関連の銘柄を買うという投資方法もあります。原油、資源、金、非鉄金属、穀物を扱う会社、コモディティの扱いが多い商社、コモディティを運ぶ需要が高まる海運株などのさまざまな関連銘柄があります。コモディティ価格上昇で業績が拡大し、株価が上がるような会社への投資です。
ただ、あくまでも株式投資なので、コモディティよりも株としての動きが優先され、代替資産としての効果はコモディティそのものよりは期待できないかも知れません。コモディティ関連株を組み入れた投資信託も存在します。
商品の種類が多く、初心者でも比較的安心して手軽に投資できる金融商品が投資信託だと言ってもいいでしょう。コモディティに投資する公募投信は数多く存在します。
最近はETF(上場投資信託)やETN(上場投資証券)も増えてきています。ETFやETNは株と同じようにトレードできますので、公募の投資信託よりもさらに簡単です。日本で上場しているETFやETNだけでも、原油、天然ガス、金、銀、銅、プラチナ、ニッケル、小麦、大豆などがトレードできます。
また、海外では日本を上回るラインアップのコモディティETFが上場されています。エネルギー、金属、農産物のETFだけでなく、CRB指数などの商品指数連動のETF、コモディティ関連銘柄に投資するETFなどもあります。
コモディティ投資信託への投資は、銀行や証券会社に口座があれば、あらたに口座開設の必要もなく、すぐにスタートできるはずです。投資信託であれば数千円程度から小口でも始めることができ、確定申告が不要の特定口座(源泉あり)であれば税金計算なども不要です。
投資信託なら、ファンダメンタルズやタイミングはプロのファンドマネージャーに任せられるので初心者でも投資で悩むことも少ないでしょう。コモディティ投資を投資信託ではじめるメリットとデメリットは、次の通りです。
【コモディティ投資を投資信託で始めるメリット】
【コモディティ投資を投資信託で始めるデメリット】
長期の分散投資として、日本株だけでなく、米国株などにも投資するのが一般的になってきています。分散投資の一環としてコモディティ投資の注目度はさらに増していくことでしょう。
コモディティ投資は、投資信託を使えば意外と簡単に始められます。コモディティに興味を持つと、世界景気や世界経済に対する興味が高まり、投資リテラシーの向上に役立つはずです。
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