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近年、大きなトレンドとなっている「ESG投資」。ESGがまったく関係ないという企業は存在せず、ESG投資についての理解はすべての企業にとって必須とも言えます。
ESGとは何なのか、ESG投資とはどういったものを指すのか、なぜ注目されているのか、順を追って解説していきます。
ESG投資とはどんなものなのか見ていきましょう。まず、ESGとはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の単語の頭文字をつなげたものです。
これは、環境問題、労働問題、人権問題、ガバナンス上の問題など、社会が抱えている課題をクリアしていく企業こそがサステナビリティ(持続可能性)があり、中長期的に成長していく企業だという考え方にもとづいています。
従って、こういった企業に中長期的に投資することでリターンを期待できるというわけです。
ESG投資が注目を集めることになったきっかけの1つが「PRI(国連責任投資原則)」です。PRIは2006年に国連で提唱されたもので、内容としてはESGの視点を取り入れることを機関投資家の投資原則とすることなどが含まれています。
【PRIの6つの原則】
機関投資家は国の年金の運用を行っている機関のほか、保険会社や信託銀行など個人投資家とは桁違いの大金を動かす投資のプロ集団ですから、市場における影響力は甚大です。
2018年5月時点で世界各国の約2,000の機関投資家がPRIに賛同していて、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も2015年に署名しています。この原則に署名している機関投資家の数は年々ふえ続けている状況です。
ESG投資を重視する流れが世界的に広がってくると、ESGを無視した経営をしている企業は今後の資金調達が難しくなってくることが予想されます。多額の資金を必要としている企業の側からすれば、大口の機関投資家に投資対象として選んでもらえないというのは一大事です。
そのためここ数年は、各社がとくにESGを意識した事業に取り組み、その状況を積極的に情報公開するといった動きが続いています。
ESG投資を強化することが、中長期的に見たときに投資のリターンを上げることにつながるという考え方は世界中で広まりつつあり、とくに日本は2016年からの伸びが大きくなっています。
日本国内を見てみると、直近では約36兆円を運用している第一生命保険が2020年度中に外国株式での運用(約4,000億円)を全面的にESG投資に切り替えるという報道がありました。海外でも日本でも、今後もESGを重視する流れは継続しそうです。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)では次の5つを「ESG指数」として選定しています。
「こうした指数に含まれる銘柄を見れば、ESGに積極的に取り組んでいるとされている会社がわかります。例えば、「MSCI ジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」には2020年06月時点で次のような銘柄が含まれています。
ちなみにGPIFが採用している5つの指数すべてが、直近3年間の運用成果において市場平均を上回っています。これについてGPIFでは、ESG投資は長期にわたるほど有効と考えているため、3年という短期間の成果だけで判断せず、さらに長期間の検証が必要というスタンスを取っています。
また、SDGs(エス・ディー・ジーズ)債のように、ESG投資の投資先には、企業の株式だけでなく債券もあります。SDGs債とは、調達した資金の使い道を環境や社会をよくする活動に限った債券のことで、環境に特化した「グリーンボンド」のほか「ソーシャルボンド」「サステナビリティボンド」などがあります。企業(社債)や自治体(地方債)などが発行しています。
最近では、ESGに配慮した個人向けの投資商品も少しずつふえてきています。ESGの項目にある環境、医療、水資源などのテーマにフォーカスした商品や、前出のGPIFの指数である「MSCI ジャパンESGセレクト・リーダーズ指数」をベンチマークとし、採用銘柄を主要投資対象とする商品など、種類もさまざまです。興味がある方は、調べてみてはいかがでしょうか。
これまで長い期間にわたって市場で生き残ってきた優良企業は、ESGが盛んに言われるようになるずっと前から取り組んできています。江戸時代に活躍した近江商人に伝わる心得として「三方よし」(売り手も買い手も社会も、3者ともが満足できる商売がよい商売である)という言葉がありますが、これもESGの考え方に近いものと言えるでしょう。
長期的に企業が存続するために欠かせないESG。この点に積極的に取り組んでいるかどうかは、自身の投資先の選定のみならず、就職先や取引先として企業を見る際にも今後重要になってくるかもしれません。引き続き要チェックです。
執筆者:株式会社ZUU
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